8月も半ばを過ぎ、試合ごとに結果の重みが加速度的に増している。昇格をめざしながらプレーオフ圏外に置かれているクラブにとってはなおのこと。型枠はしっかりつくられているように見えても、わずかな隙間から水が漏れる守備。そして、シュート数を重ねても効果的に得点に結びつかない攻撃。山形は高い位置で奪ってショートカウンター、札幌は自陣でも簡単に蹴り出さずにつなぐポゼッションと得意のスタイルに違いはあるが、似た課題を抱え、二桁順位の時期が長く続いている両クラブが勝点1差で対戦する。サドンデスの局面はまだ先かもしれないが、位置づけとしては「落とせない一戦」だ。
富山とアウェイで対戦した前節、山形は1-1のドロー。今季初の連勝は9度目の挑戦でもお預けとなった。先制点は開始わずか2分。自陣ゴールライン手前から秋葉勝がフィードし、ロメロ フランク、中島裕希、そして再びロメロ フランクでフィニッシュとたった3本のパスからなる鮮やかなカウンターだった。しかし、「得点してからは流れが悪くなって、攻撃のところでもあまり起点になれなかった」(ロメロ フランク)。16分にコーナーキックから同点とされると、後半はバイタルエリアに起点をつくりながら多くのチャンスをつくったが、最後まで守りきられている。「僕自身のことを言わせてもらうと…」と前置きして、松岡亮輔は現状を分析する。「勝利に対する意欲とか貪欲さとか、重大なところでの力の発揮し具合がまだまだかなと。常勝軍団とか上位に行くチームはそういうポイントを抑えて勝点を稼いでいる」。体と気持ちを高い状態で維持したまま90分間戦うことは容易ではないが、勝利のためにはそこをめざし、実現しなければならない。
山形のプラス材料を挙げれば、攻撃面。「特に後半は前に付けれるようになった」と石崎信弘監督が評価する富山戦後半の攻撃は、チームとしての狙いが形になって表れていた。そこからゴールを奪うまでにはさらにスピードアップや精度、あるいはタイミングを外すなどの落ち着きが必要だが、バイタルの起点に絡む連動性で相手をかなりの程度崩せてはいた。また、後半戦から再確認し取り組んできたカウンター攻撃で得点が生まれたことも好材料。実戦形式の練習や紅白戦でもカウンターからシュートに持ち込むシーンは少しずつ見られてきている。カウンターの成否を分けるものを、石崎信弘監督は「(ボールホルダーが)前を向いてるんだったら追い越していけばいいのに後ろにサポートすることがまだまだ多い。前にサポートすれば前に出るからスピードが上がって相手も帰る時間がなくなるんだけど、後ろだとそれだけ相手が帰る時間ができる」と分析する。出場停止だったディエゴが戻り前線の組み合わせが若干変わるが、そのなかでも攻撃の質をより高めることができるか。
スタイルは確立されているものの、札幌もそれを勝点に結びつける段階で苦心して3連敗。一時は6位まで上げた順位もたちまち12位まで急降下している。前節・京都戦は多くの時間で主導権を握る戦いを続けながら、70分に大黒将志の隙を逃さぬ一撃に沈んでいる。1-1に終わった第22節・大分戦こそ15本のシュートを浴びたが、その後の4試合の被シュート数はすべて一桁。うち3試合は5本以下に抑えている。一方で、無得点に終わったここ3試合のシュート数は9本、20本、16本と本数だけ見れば十分なものだ。しかし実際の結果は多いシュート数で得点が奪えず、少ないシュート数で失点ともどかしさを感じさせる。「ボールは持てていたし、シュートも相手より打てていた。でも、たくさんシュートを打ったとしても、1本1本の精度が高くなければあまり意味はない」と京都戦後に振り返ったのは上原慎也。財前恵一監督も「今日はかなりチャンスも作れていたので、そういう最後のところの集中力とか、相手ゴール前で自信を持ってというか強気でというか、そういうプレーをもう少しやっていかないと、なかなか得点は取れないかなと思います」と今後の方向性示している。
一つ気がかりなのは、前節の前半でピッチを退いた小野伸二。怪我は大事にいたらなかったようだが、その小野の今節の出場如何に関わらず、最近の札幌の試合では小野以上に若い選手たちが存在感を放っている。ボランチの深井一希は質の高い縦のパスを送りながら機を見て飛び出していき、右サイドハーフでプレーする荒野拓馬もボールを失わないドリブルで相手を1枚、2枚とはがしていくスキルがある。そして最終ラインでは奈良竜樹が背後のスペースを含む広い守備範囲を強い責任感で守っている。左サイドハーフではセットプレーでもキッカーを務められる菊岡拓朗が控えているほか、キャプテン・河合竜二も戦列に復帰しそうだ。そもそも札幌の組織は特定の個人が抜けただけで大幅に戦力ダウンするようなものではない。
ロースコアの展開も予想される一戦。札幌の守備は人を見る傾向が強いため、バイタルで起点をつくりたい山形は攻撃でどれだけマークを外してフリーでランニングできるかがカギになる。また、札幌はサイドバックが攻撃的なため、山形はその背後も起点に敵陣に押し込む時間を多くつくりたい。そうした状況をつくるのは、これまでもベースとしてきた高い位置からの連動したプレッシングと攻守の早い切り換えだ。一方の札幌は1トップ・内村圭宏の飛び出しで山形のラインを押し下げながら中盤でのボール支配率を高めたい。パスを回し相手を守備で動かす時間を多くできれば、山形の運動量が落ちる終盤にはサイドチェンジからのクロスが有効になってくる。そして、双方にとってすべてを解決するのはゴール前での決定力。敵陣に進入するとパワーアップする将棋駒のように、相手ゴール前での確変的なプレーが生まれるかどうかにも注目したい。
以上
2014.08.16 Reported by 佐藤円
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