理想と現実に折り合いをつけることはサッカーでなくとも難しい。ともすると、自分が思い描く理想を貫けば最良の結果が得られると思いがちだが、それだけでは結果が出ないことも多い。理想を追求しつつも、周囲の状況や環境にうまく適応させていくに合わせる能力があって、初めてコンスタントな結果を得られる。
いま柴崎岳が絶好調だ。中断明けからの5試合、鹿島は2勝3分というまずまずの成績を残せているが、その中心にいるのは間違いなく柴崎である。その輝きは試合毎に増し、9月に初戦を迎える新生日本代表での活躍さえ期待される。
「信頼感はできあがってきている」。
コンスタントに結果を出せるように変わった現況を、柴崎はそう分析していた。自分が走ればパスが出るようになり、自分自身も周囲に合わせることができるようになってきた。本人の理想とすればワンタッチではたきたいところでも、味方はタメを作って欲しい場面では確実にツータッチでパスを出す。そうした折り合いが進み、相互の理解が進むことでサッカーの質が徐々に高まってきた。
その傾向はチーム全体に及んでいる。遠藤康が負傷でチームを離脱すれば中村充孝がそれを遜色ないレベルで埋め合わせ、遠藤が負傷から戻ってきてもポジションを明け渡さないほどの活躍を見せている。トニーニョ セレーゾ監督が求めるサッカーを選手たちが理解し、実際にピッチで何をすれば良いのかわかりはじめたことが無駄な動きを減らし、夏場でも運動量の維持に繋がっている。その攻撃力はリーグトップの37得点をたたき出す。
しかし、守備の部分では改善の余地が多い。失点数は23。今節の対戦相手であるヴァンフォーレ甲府は19。第19節を終えた時点で平均失点1という堅守を誇る。
両チームは開幕戦で対戦し、鹿島が4-0で勝利をおさめている。大雪の影響でコンディションがまったく整っていなかった甲府にとっては、これ以上不本意な試合はなかったはずだ。あの4失点がなければ甲府の失点数はさらに少なかったはずだ。とはいえ、甲府は得点力に頭を悩ませているチームでもある。ここまで奪ったゴール数はわずかに14。中断明けの5試合も4分1敗3得点5失点という少し寂しい内容であることは否めない。
とはいえ、昨季の鹿島は同じような状況で甲府に痛撃を受けた経験を持つ。上位追撃を狙う第25節、甲府のホームで対戦すると0-3で完敗。「3点取られるとは思わなかった」(遠藤)と肩を落とすしかなかった。
リーグ戦も後半戦に入り、今後は1年の結果を左右する分岐点が何度か現れることだろう。そこでどういう結果を出せるか。まずは第1関門である。
以上
2014.08.15 Reported by 田中滋
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