J1再開後に5試合を戦い、4分1敗の仙台。8月の初勝利を、今節こそホーム・ユアテックスタジアム仙台であげたいところだ。
ただしこの試合で迎える相手・清水は、前節に大榎克己監督が指揮を執るようになってから初めての勝利をあげ、連勝を目指し士気が高い。難敵だ。

仙台は今季に清水と既に公式戦で二度対戦。Jリーグヤマザキナビスコカップ第1節ではシュート数では12対12と同じだったが、ゴールは0対4と大差がついてしまった。渡邉晋監督就任後のJ1第9節で対戦したときには、シュート数は8対3。互いにシュートチャンスをなかなか作れない渋い試合だったが、仙台は8本のシュートを実らせることができず、逆に清水に1/3を決められて0-1で敗戦した。今季の仙台はまだ清水から得点をできていない。前節を無失点で終えたチーム同士の対戦で、ひとつでも多くのゴールを清水から奪いたいところだ。

仙台は前節の甲府戦で第15節以来の無失点を達成。押していた前半には高い位置で、押されていた後半には低い位置でそれぞれ守備組織を機能させ、自信を深めた。そのうえで「もう一度守備を整理し、より手堅い試合をできるように意思統一をしました。そしていい守備で満足せず、点を取るためにしかける意志を点に結びつけなければいけません」という流れで、渡邉監督は今週のトレーニングを進めた。

一方の清水の守備陣は前々節の大量失点から修正し、前節は徳島相手に無失点を達成。今節はおそらくそのメンバーを引き継ぐものと推測される。清水守備陣は個々の守備能力が高い上に、平岡康裕と杉山浩太の両センターバックに本田拓也を加えた三人は、この三人の位置関係だけでシュートコースを多く消せるポジショニングを可能にできる。
仙台は相手陣内までボールを運んだらどうにかしてこの中央をこじ開けなければいけないのだが、攻撃陣に負傷者が重なってしまった。第18節大宮戦でウイルソンが痛んだことに加え、第19節甲府戦では赤嶺真吾も負傷してしまった。ここで期待がかかるのが、この夏に仙台に加入した3選手のうち、攻撃的ポジションの野沢拓也とハモン ロペスだ。前節・甲府戦で途中投入されたふたりは、今度こそチームの勝利に貢献しようと意気込んでいる。

野沢は「勝たなければいけないし、上を見なければいけない。しかも次はホーム。勝点3を絶対に取らないと」と勝利を渇望する。鹿島で数々のタイトル獲得に貢献してきたばかりでなく、渡邉監督が「現状に甘んじず、常にタイトル、高みを狙う姿勢をチームに伝えられる選手」として期待するその心意気は、合流に週間足らずのチームに刺激を与えている。プレー面においても野沢の技術と創造性は、チームに新しい攻撃のかたちをもたらしている。今節はMFだけでなく、少し引いた位置でのFWで出場する可能性もある。どちらにしても、「野沢さんはまだ合流して間もないのに、僕の動き出しを感じ取ってパスを出してくれる。自分が質の高い動きをすれば応えてくれるので、しっかり相手の隙を突いて走りたい」と武藤雄樹が語るように、チームメートの信頼を得ている。「今のチーム状況を考えればプラスアルファとなる刺激が必要だけれど、野沢さんが本当に大きな刺激になっている。彼が攻撃面での良さを少しでも発揮できるように、後ろはしっかり支えたい」と角田誠もこの新しい刺激を歓迎している。

ハモン ロペスは体の強さと左足の柔らかいボールタッチというまた違った特徴を持っており、右のMFとFWのどちらで出てもチームに違ったリズムをもたらす。「Jリーグの素早いプレッシャーを（前節に）実感しました。それを上回るプレーを次はもっとしたい」という彼も、清水のゴールを破る上で切り札のひとつとなる。
　ホームの声援を背に受ける仙台は、勢いに乗ろうとする清水の背後を突いてゴールを重ねられるか。「自分もこのホーム戦を楽しみに頑張りますので、一緒に仙台を盛り上げましょう」と野沢も呼びかけるこの試合で、新しい刺激を勝点3につなげるのは仙台か清水か。

以上

2014.08.15 Reported by 板垣晴朗