今こそネジを巻き直す必要がある。浦和は第17節の鹿島戦で連続無失点記録が7試合でストップすると、続く神戸戦では2失点、さらに前節の川崎F戦も2失点と堤防が決壊したかのように失点が続いている。
リーグ新記録の連続無失点という眩い光の影に隠れていた守備の問題点が、ここに来て浮き彫りになってきている。今季の浦和はリスクマネジメントの意識を持ちつつ前から積極的にボールを奪いにいくスタイルがうまく機能してきたが、無失点という結果が出続けることで徐々に自信が過信へと変化していき、リスクマネジメントの甘さがだんだんと目立つようになっていた。
GK西川周作という突出した個の能力や、最後のところで体を張るディフェンスでピンチを逃れてきたが、アグレッシブというよりも無謀と言うべきボールへのアタック、そしてカバーリング意識の欠如が見られるようになっていくなかで、ついに問題点が失点という結果になって現れ始めている。
自分たちが取り組んできたことを今一度見つめ直す時が来た。やればできるということをこれまで証明してきたのだ。今こそ初心に帰り、丁寧に戦っていた頃の経験を生かすべき時だ。最後列でチームの変化を見てきた西川も「後半に前掛かりになったところでカウンターを受けている。ピッチ上で話し合っているし、共通理解はできているのでスムーズ。DFだけじゃなくて前線の選手と行く行かないをはっきりさせれば問題ないと思う。そのイメージは1-0で勝っていた時だし、そこが立ち返る場所」と力を込める。
一方の広島も最近は守備に問題を抱えている。昨季は最少失点を誇った鉄壁の守備が2連覇の原動力にもなった広島だったが、今季は現時点でリーグワースト6位タイ。中断明け6試合の数字を見ると13失点と非常に多く、鹿島戦の5失点をアクシデントとして割り切っても、7試合連続で失点していた事実を看過することはできないだろう。
ただ、天候の影響で月曜日に順延となった前節の鳥栖戦では久しぶりにクリーンシートを達成。気持ちを切り替えるきっかけをつかめたのは好材料だ。首位に立っていた鳥栖をシュートわずか2本に抑えて完封したという結果は選手たちの自信にもつながるだろう。
青山敏弘、ファン ソッコ、林卓人ら主力メンバーが故障で欠場の続く可能性があるなか、ここで浦和も封じることができれば立て直しに向けて大きな追い風になる。
ミハイロ ペトロヴィッチ監督の思想をベースとする両者の激突は、ここまでのところ浦和が優勢だ。ペトロヴィッチ監督が浦和に来てからすぐに迎えた2012年の開幕戦こそ広島が一日の長を見せたが、その後はヤマザキナビスコカップを含めて浦和が5連勝中だ。
浦和が好成績を収めてきたのは「広島対策」が機能していたからだ。普段、相手に合わせるサッカーをしないペトロヴィッチ監督だが、広島に対しては1トップ2シャドーにマンマークをつける方策を立て、それが奏功している。今回もこれまでの戦い方を踏襲するのかどうか注目したい。
ただ、広島もいつまでも同じやられ方はしたくないはずだ。浦和がそういった出方をしてきた時のために対策を練っているのは間違いないだろう。GK西川は「ロングボールを蹴ってくるイメージも持っているので、目の前のことは全て想定内と言えるように良いイメージをして準備していきたい」と広島が大きな展開を狙ってくることも視野に入れている。
そこで浦和が気をつけたいのは皆川佑介の存在だ。攻撃の切り札として存在感を高めている若武者はここ5試合で出場のチャンスを得ると、2得点と結果を出して勢いに乗っている。空中戦に強く、前線の高さという広島に今までなかったオプションが加わるという意味でも警戒すべき選手になるだろう。DFラインでは那須大亮が出場停止。代わりを務めるであろう永田充に期待が集まる。
浦和は最近の嫌な流れを断ち切るためにも、サポーターをこれ以上失望させないためにも今回のホームゲームは絶対に落とせない。対する広島も上位との差を縮めるためにも、せっかく掴んだ守備の手応えを確かなものにするためにも負けられない。
以上
2014.08.15 Reported by 神谷正明
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