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【J1:第19節 広島 vs 鳥栖】レポート:「18歳の冷静」がもたらした広島の秩序。8試合ぶりの完封で、首位・鳥栖を撃破(14.08.12)

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本来の試合開催日だった9日の練習で、塩谷司がケガによる離脱から復帰。紅白戦にも出場した状況を見て、「先発はやはり、塩谷ではないか」と報道陣は話し合った。鳥栖のエースは強さと高さではケネディ(名古屋)と共にJリーグの頂点に君臨している豊田陽平である。もちろん、彼は高さと強さだけの選手ではない。スピードもあり、技術にも長け、周りを使うことができる。フィジカルに優れ、経験も積んだ182センチの塩谷がプレーできるのであれば、やはり彼に豊田への対応を任せたいと考えるのが普通だ。
だが、森保一監督の選択は、ルーキー・宮原和也だった。塩谷が90分のプレーは難しいということからの判断。それにしても、U−17ワールドカップで屈強な世界の若者たちと渡り合ったとはいえ、172センチの宮原と豊田では「ミスマッチ」は否めない。
しかし、指揮官は自信を持って若者を抜擢した。
「川崎Fとの練習試合で、宮原は実にいいプレーを見せてくれた。相手にはフィジカルに優れ、経験も豊富な森島康仁がいたんだけど、彼をしっかりと抑えていた。手応えはありましたね」
エース佐藤寿人と青山敏弘主将が不在。守護神・林卓人も腰痛で離脱して、前節・鹿島戦から欠場。連続試合出場が235試合で止まってしまった。ミキッチは復帰したものの90分の出場は難しく、ファン・ソッコも負傷離脱中と主力の多くがピッチに立てない状況。負傷者が多いだけでなく、チーム状態も厳しい。今までできていたことができなくなり、守れる局面で守れず、パスをつなげるシーンでカットされる。森保監督は「今、我々は試されている」と語っていたが、広島は彼が監督に就任して最も辛い局面に陥っていた。
苦境に加え、相手は首位の鳥栖。前線には日本最高クラスのストライカー。だが森保監督はあえて、この重要な局面にルーキーを送り出した。結果が出せなければ、間違いなく批判の集中砲火を受ける。それでも、指揮官は18歳の若者を信頼した。

4分、鳥栖は18歳のサイドを狙う。安田理大からの縦パス。金民友が縦に行く。マーカーの宮原は、金の瞬間的なスピードに付いていこうと足に力を込めた。
が、その瞬間、右足が芝にとられて滑る。バランスを崩した。
金が行く。危ない。
だが宮原は諦めない。必死に体勢を立て直し、追いかけ、足を出した。その最後の最後に見せた執念が金のクロスを微妙に狂わせ、飛び込んできた水沼宏太の足にも、逆サイドに待ち受けていた豊田にも、ボールを合わせさせなかった。
振り返ればこのシーンこそ、鳥栖にとって最大のビッグチャンス。宮原が唯一、慌てたのもここだった。だが「失敗」から2分後、浮き球のパスに反応した池田圭を逆サイドまで厳しくマークして自由を剥奪し、見事にボールを奪いきったプレーは大人のテイスト。森崎和幸を彷彿とさせる冷静さと頭脳的な位置どりの妙を発揮して、宮原はチームを落ち着かせた。34分、本人が「狙い通り」と語った精密なクロスで水本裕貴の「幻のゴール」を導いた場面や、再三見せたクサビの正確さで、自身の攻撃性の一部をも垣間見せた。

結果として鳥栖は、宮原の出場していた前半はシュート0。後半は、ルーキーの活躍に燃えた塩谷司を中心とする広島の気迫の前に決定的なチャンスすら奪えない。ボールを持っても有効な縦パスは出せず、ロングボールも完封され、パワープレーも決定機を生み出せない。監督交代や台風による順延がコンディションに大きな影響を与えたのかもしれないが、それよりも広島の「ボールを持たせるところは持たせていい」という割り切りが、鳥栖を追い詰めた。得意とする速攻も、サイドアタックも、ハイボールも不発。鳥栖にとって「何もできなかった」と総括するしかない試合だった。
吉田恵監督は沈痛な表情で「私の監督としての力不足」と語ったが、彼の仕事はまさにここから。クレバーさと情熱を持ち合わせる好漢の立て直しに期待したい。何より忘れてはならないのは、鳥栖はまだ首位に立っているということだ。

塩谷・ミキッチ・皆川佑介と攻撃的な選手を立て続けに投入した森保監督の執念が結実したのが81分のゴール。塩谷の縦パスをミキッチが前に持ち出し、クロスのこぼれを柏好文が折り返して皆川が決める。交代した選手が全て得点に絡む采配の妙で、広島が首位撃破を果たした。ただこの結果は、45分間でやれることを全うし、秩序をもたらした若者の存在が、チームに勇気と競争意識をもたらしたことによって生まれた。彼だけではない。増田卓也や森崎浩司、そしてもちろん皆川佑介ら、前半戦は出場機会に恵まれていなかった選手たちが、自らの存在意義をかけて躍動したことが、歓喜を呼んだのだ。
「勝利以上に価値が重いのは、全員の意思統一。今日、僕たちは鳥栖に勝ったんじゃない。自分たちに勝ったんです」
これは、広島の現状に最も大きな危機感を持ち、改善のために多くの選手たちと語り合った森崎和幸の言葉である。

以上

2014.08.12 Reported by 中野和也
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