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【J2日記】讃岐:パパは新米Jリーガー 〜短冊に込めた願いが叶った日〜(14.08.12)

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スタメン紹介時、その選手の名前がコールされた瞬間、サポーターから大きな歓声と拍手が湧きあがった。7月30日に行われた第24節・磐田vs讃岐。この日、31歳5カ月28日の新米Jリーガーが誕生した。
カマタマーレ讃岐・背番号19・大杉誠人。
様々な苦難、ケガとの戦いを乗り越え、ようやくJリーグのピッチに立った。

チームメイトやサポーターらから「スギちゃん」の愛称で親しまれ、いじられ、愛されているチーム1のムードメーカー大杉選手。Jリーガーデビューも31歳と遅かったが、サッカーを始めたのも小学6年生と遅いスタートだった。「野球にするか、サッカーにするか迷ったんだけど…」と言う大杉選手がサッカーを選んだ理由は、その年が1993年のJリーグ元年でサッカーが非常に盛り上がっていたから。そんな単純な動機でサッカーを始めた大杉選手だったが、ぐんぐんサッカーのおもしろさに目覚めていく。
大学を卒業後はJFLの佐川印刷SCに入り、その後も佐川グループのいわゆる企業チームでプレー。そんな大杉選手に転機が訪れたのは2012年。当時所属していたSAGAWA SHIGA FCが2012年でJFLを退会し、2013年1月にはトップチームの活動を停止すると発表したのだ。「チームが廃部という形になってしまったけど、まだサッカーをやりたいと思った」大杉選手は、Jリーグ入りを目指していたカマタマーレ讃岐を移籍先に選んだ。
「サッカーを始めたきっかけはJリーグ。企業チームでやってきたけど、Jリーグにずっと憧れがあり、そこを目標に頑張ってきた。廃部は残念だったけれど、いい機会だと思って新たなチャレンジをすることにしました」

ただ、大杉選手は3人の子を持つ一家の大黒柱。安定している企業チームではなく、この先どうなるかわからなかった讃岐でプレーする不安はなかったのだろうか。
「自分のサッカー人生の中で、この時が一番のターニングポイントだった。じっくり考えた結果、安定よりJリーグを目指すことのほうが自分としては価値が高かったので決めました」
この決断にはもちろん、「パパに任せる」と笑顔で見守ってくれた家族の力も大きな後押しとなった。

そして昨年、“166cmと小柄だけれどフィジカルの強いセンターバック”という高評価で讃岐に加入。しかし、シーズン前のケガで出遅れ、初めての出場は5月19日のJFL第12節。開幕からすでに2カ月が過ぎていた。そして、それからわずか1カ月半後のリーグ戦で再びケガ。左膝前十字靭帯損傷、全治4〜5カ月の診断が下る大ケガだった。その後、大杉選手がリーグ戦に復帰することは叶わなかったが讃岐は見事Jリーグ加入を勝ち取った。

迎えた今季。讃岐にとっても、大杉選手にとっても初めてのJリーグ。昨シーズンの悔しさを晴らすべく、憧れのJリーグという舞台に立つべく、懸命にトレーニングに励む大杉選手の姿があった。
しかし、サッカーの神様は大杉選手をすんなりJリーガーにはしてくれない。3月3日のトレーニングマッチで右膝内側側副靭帯損傷、全治2カ月。「またかと正直落ち込みもしたが、ケガをしてしまったものは仕方ない。今度も早く治そうと気持ちを切り替えました」と再びのリハビリ生活に入った。
ケガは徐々に回復し、自身の中でも「もう大丈夫」という気持ちが芽生えてきても、試合出場はなかなか叶わなかった。気がつけば、チーム内でリーグ戦に出場していないたった1人の選手となっていた。焦燥感もあっただろう、時には投げ出したくなることもあったかもしれない。けれど、大杉選手はくじけることなく、いつでも懸命に練習に取り組んできた。それは大切な家族の支え、子どもたちの願いを知っていたから…。
9歳の長男が「お父さんが試合に出られますように」と七夕の短冊に願いを綴ってから23日後、天の川にその願いがようやく届いた。

アウェイだった磐田戦は、讃岐のホームタウン・高松市でパブリックビューイングが行われていた。会場には大杉選手の奥様、長男、長女(6歳)、次男(4歳)の姿もあった。「遠征メンバーに選ばれていたので会場に来てみたんですが、まさかスタメンだなんて…」とその瞬間まで大杉選手のスタメンを全く知らなかったという奥様。「うれしいけど、私も子どももすごく緊張しています」とキックオフ前にはソワソワ、ドキドキ。試合が始まってからは、子どもたちも小さな拳をギュッと握りしめ、大好きなパパと一緒に戦った。
試合には残念ながら敗れてしまったが、90分間戦い続けたパパの勇士に満足気な子どもたち。「今日はありがとうございました」と元気な声を響かせ、満面の笑顔で会場を後にした。

人よりちょっとゆっくりだけれど、夢の階段を一歩一歩昇っていく大杉選手。「1試合でも多く出て、チームの勝利に貢献していきたい」と努力を惜しまないパパを、家族は応援し続ける。もちろんサポーターも大きなエールを送る。
「頑張れ、パパ!頑張れ、スギちゃん!」

以上

2014.08.12 Reported by 中條さくら(オフィスひやあつ)
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