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【J2日記】岐阜:負けず嫌いの好青年(14.08.05)

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8月4日、九州まで足を運んだ。勝利を望むチームの取材はもちろんのこと、もう一つの思いを抱きながらの移動だったが、そうした岐阜サポーターも少なくなかったかもしれない。第25節、長崎戦。この日は、ブルーとオレンジのユニフォームを着たスティッペと初めての対戦だった。

突然の別れだった。7月11日にチームを離れ、同15日に移籍。それはサポーターのみならず、岐阜の選手たちにとっても同じである。岐阜の勝利で終わった長崎戦の試合後、スティッペは自ら岐阜サポーターの下へと向かい、ミックスゾーンでは岐阜の選手たち一人ひとりと挨拶をかわす光景があった。
「私の中には、岐阜の皆さんがいます。最後に皆さんに『本当にありがとう』と言いたい」
メディアである自分のところにまで歩み寄ってきてくれたほどだから、ホームページを通じたこの惜別コメントに嘘や偽りはない。そこにはファンに対しても紳士的な対応を見せていた、いつもの好青年の姿があった。

しかしもちろん、スティッペは今、長崎のプレーヤーである。地元記者に囲まれると、その表情は一気に引き締まる。「この結果を飲み込むのが辛い。自分たちの求めている勝利をピッチで出せていないことが悔しい」とのコメントは、古巣との試合だったからではない。試合に敗れた悔しさだけをひたすらにじませる姿もまた、岐阜時代となんら変わらない。いや、好青年としてのスティッペの姿以上に、本来の彼らしい姿にも映った。だから最後に「自分が入ることで長崎に何をもたらしたいか?」と聞いてみた。予想に違わず、答えは岐阜で見せてきた彼の姿勢そのものだった。
「もちろんこれからもっと伝えていくことにはなると思うけど、勇敢さを伝え、勝つという気持ちをもっともっと出していきたい」

スティッペが岐阜にやってきたのは昨夏のこと。当時、最下位だったチームで、最初はベンチを温める日々だった。しかし練習からゴールに向かう勇敢さを見せ続け、第32節・東京V戦でJ初ゴールを奪うと、徐々に先発の座を奪っていく。もちろんボールの扱いやシュートなど攻撃スキルの高さも光ったが、なによりも印象的だったのは彼の「負けることが大嫌い」という姿勢。それは、「すぐ顔に出てしまうんだ。プレステでゲームをやって負けるのも大嫌いだね」と話すほどで、たとえ相手が格上でも試合にに敗れた日の表情はこの日のように険しかった。そして自らの言葉に違わず、彼は土壇場や大一番でことごとく輝いた。死闘となった裏天王山(第34節・鳥取戦)での2ゴールを筆頭とした5つのゴール。J2残留を大きく手繰り寄せたそれは、彼の負けん気の強さが生んだものであったように思う。彼は好青年である以上に、並々ならぬ闘志と勇敢さを備えた大の負けず嫌いだった。

未来の発展を目指し大改革を施したチームにあって、ケガなども重なった今季は様々な思いもあっただろうし、プロの世界で出会いや別れは付きもの。ただ、それでも色褪せないものはある。彼と同時期に加入し、2トップを組み、英語で会話をかわす仲でもあった中村祐輝は、すぐに電話でエールを送ったという。「今季は自分と同じようにあまり試合に出られなかったけれど、練習の中でパスをもらったり、ゴールを決めたり、一緒に戦った仲間だからね。もちろんもっと一緒にやりたかったし寂しい気持ちもあるけれど、新天地でまた頑張ってくれれば一番うれしい」

ともに苦しい時期を戦った仲間であり、そのあきらめないプレーで今季の改革へと繋げてくれた1人であることを思っても、「最後に『本当にありがとう』と言いたかった」のは岐阜サポーターのほうかもしれない。
試合が終わると、“背番号16”をこよなく愛し、はるばる九州まで駆け付けた岐阜サポーターは拍手や声援、ゲーフラなどで別れの挨拶を送った。そこには突然の移籍で直接伝えることができなかった2つの意が込められていたように思う―これまでの感謝と、これからの活躍を願うエール―。
挨拶を終えた“背番号44”は、少しばかり涙を光らせていた。

以上

2014.08.05 Reported by 村本 裕太
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