中3日で迎えた3連戦の最後の試合、ともに勝点27の19位・熊本と18位・群馬の一戦は、試合前に一時的に激しい雨が降って77%を記録した湿度が選手達のパフォーマンスにも影響したのか、その順位が表す通りの低調なゲームとなった。そうした中でもしたたかに勝点3を手にして相手に差をつけたのは、一瞬の決定機を逃さなかった群馬。前期に続き対熊本戦連発となるダニエル ロビーニョのゴールが試合を決めた。
熊本は前節出場停止だった片山奨典が左サイドバックに、そして橋本拳人が最終ラインに復帰。これに伴い、松本戦でJリーグデビューを果たしてそのポテンシャルの高さを見せたキム ビョンヨンがアンカーに入って中山雄登と組み、「今日はもう少し前にプレッシャーをかけに行くんで、養父(雄仁)を若干前に出した」(小野剛監督)[4-2-3-1]と見える布陣でスタートしている。実際、群馬のボールの動かし方に対してコースに蓋をする寄せ方で、ラインは高めに保ちながらもカウンターを打たせない展開には持ち込んだ。
一方の群馬は、先発11人のうち1人だけを前節から変えている。秋葉忠宏監督は、「熊本は競り合いやセカンドボールにすごく特徴のあるチームなので、その良さを消そうと」「球際の強さであったり、特にセカンドボール、後ろに対する反応の早さにいいものを持っている」黄誠秀をボランチの1枚にチョイス。全体的には、判断のまずさとマイボールになってからの組み立てのミス、さらには出し手と受け手のイメージのズレなども目立って攻撃をスピードアップさせることはできなかったものの、群馬もまた、左の片山、右の藏川洋平から早いタイミングで送られるクロスは中でしっかりと跳ね返し、熊本の攻撃を最後の局面では抑え込んでいる。
前半のシュートはともに4本で、そのうち決定機はいずれも1回ずつ。よく言う「どっちに転んでもおかしくない」試合は、後半開始からわずか5分後に動く。ハーウェイラインを少し熊本陣内に入った位置での群馬のフリーキック、宮崎泰右からのボールはゴール前に詰めた小柳達司と青木良太には合わなかったが、このクリアボールを拾った黄がスルーパスを通し、橋本の背後に抜けたロビーニョが右足で流し込んだ。セットプレーの守備のために多くが自陣に戻っていた熊本にとっては「しっかり(ラインを)上げるのか、止めるのか、少し揃っていないところがあった」(橋本)場面。しかし映像を見直せば、単純なクリアで相手にボールを渡してしまったこと、そしてパスコースをうかがう黄にしっかりと寄せて出どころを抑えきれなかったことなど、失点する必然の要素があったことは否定できない。
さらに熊本にとって難しくなったのは、63分の青木良の退場である。1人少なくなった群馬の秋葉監督は、「4-4-1のブロックを作って中に人数をかけて弾き返す」こと、そして「ファウルの回数を少しでも増やして、セットプレーでもう1点取ろう」という狙いでロビーニョを下げて乾大知を投入。つまり、「やることが明確になった」(GK富居大樹)残りの約30分を割り切ることに徹した。前半のうちに1枚のカードを切っていた熊本の小野監督はまず、62分にキム ビョンヨンに代えファビオを入れて養父を1列下げ、さらに76分、後半から右に置いていた中山を再びボランチに戻し、養父から巻誠一郎に交代。熊本にとっても狙いは明確で、以降終了間際まで再三に渡って両サイドからクロスを供給して押し込む。しかし78分、79分の巻、82分の園田拓也の右足ミドル、同じく82分の澤田崇の右足、83分に左コーナーから橋本、続く84分にも左のフリーキックから橋本、さらに87分には片山から巻、そして90+3分に巻の落としから齊藤和樹と、山のように築いた決定機もGK富居に阻まれ、またバーにも嫌われるなど、最後までゴールを割れなかった。
勝った群馬は中3日の3連戦を2勝1分の無敗で乗り切り、一気に中位も射程圏内に捉える17位に浮上。決して内容的には良くなかったものの、タイトなスケジュールの中でも結果にこだわり、そして実際に勝点7を積み上げたことは今後にとっても自信となる。この3試合で1失点と守備が安定してきたのも明るい材料。次節ホームに迎えるのも順位が近い長崎とあって、連勝で加速し勝点差を開きたい。
熊本は今季これで10敗目。「悲観する内容ではなかった」と小野監督は振り返るが、後半も押し込んだとは言え、攻守において相手に怖さを与えることができていたかという観点では物足りなさが残る。群馬の青木良が「ボールには寄せにきているけど、どこかが空いてる」と指摘しているが、1つめのアプローチに対しての連動が十分だったかと言えば、やはり結果としてそうした甘さが失点につながっている。また攻撃でも、ダイレクトで打てる場面、ダイレクトで打った方が確率の高そうな場面で1つ余分にコントロールすることで、相手に体勢を整える時間を与えてしまうようなシーンもあった。
サポーターはチームとクラブを信じて叫び、跳ねているのだが、果たして選手達はどうか。味方と、そして何より自分の、自分たちの力を信じることができているか。「うちのチームは、失点も得点も1点が重い」と片山は言うが、そうした事象に思いの他とらわれてはいないだろうか。呪縛を自ら解くには、大胆さや無謀さ、鈍感さも時には有効だ。
以上
2014.08.04 Reported by 井芹貴志
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