勝負は後半に動いた。61分、藤田征也がニアにクロスを狙い澄まし、岡田翔平が一瞬の動き出しでこれに応える。曰く、「征也さんがナイスボールを上げてくれたので合わせるだけでした」。交代間もない岡田のゴールにより、湘南が先制した。
振り返れば、湘南は前半から徐々にリズムを手繰り寄せ、主導権争いをリードしていた。縦の意識を体現し、敵陣での攻防に持ち込んでいく。攻勢に乗り出すと、この日シャドーに入った菊池大介やトップのウェリントンがゴールに迫りもした。また、攻守の切り替えの意識を高める藤田をはじめ、集中力は研ぎ澄まされており、たとえ誰かがかわされてもFWのプレスバックを含めて二の手、三の手のカバーが入り、あるいは囲い込んでボールを奪う。対して千葉も4−3−3の布陣で相手の攻撃を受け止めつつ、ボールを動かしながら機を伺う時間帯もあったが、攻撃の特徴とするクロスまではなかなか至らない。
一戦を前に湘南の曹貴裁監督は、「我々の良さを6対4、ないし7対3で相手よりも出せるようなゲーム展開にしたい」と語っていた。データうんぬんの話ではなく、自分たちのリズムで戦っていると選手たちが実感できるようにしたい。指揮官のその想いは、彼らの高い集中力とともにピッチに反映されていた。
ゲームを折り返して早々には、千葉が後半のファーストシュートを放ち、さらに相手の攻めを裏返して3対2の状況を作るが、湘南もこれを凌いで攻勢に転じ、ウェリントンが、あるいは岡田を経て菊地俊介が枠を狙うなど好機を重ねていく。先制点はそうした流れの先に生まれていた。
ただ、千葉も先制こそ許したものの、GK岡本昌弘を中心に守備陣が踏ん張り、結果的にこの1点に抑えた。失点後には攻勢を重ね、ゴールにも結んでいる。72分、縦パスから自ら左サイドを駆け上がった中村太亮が右足でクロスを送る。「左足で上げようと思いましたが、あまりにもラインが下がっていたので切り返した」機転を利かせた中村のクロスに、ゴール前に抜け出した井出遥也がヘッドを合わせ、千葉が同点に追いつく。
「先制点を取られましたが、追いつき、最後まで勝ちに行こうという前向きな戦いが非常にピッチに表れていた」試合後、千葉の関塚隆監督は語った。一方の曹監督も、「選手たちは、クロスの失点以外はよく対応したと思う。あれがなければパーフェクト。結果は残念だが、下を向く内容ではなかったと思っている」と清しい余韻を言葉に乗せた。
勝点3という最良の結果は得られなかった。だが悔しいドローにも、湘南の戦いぶりには深化が感じられた。とりわけ先制後の攻防にチームを思う。1−0とし、さらに勢いを駆って菊池大介がきわどいミドルを放てば、相手の攻撃に対しては、丸山祐市が後半の冒頭に次いで冷静に危険な芽を摘み、GK秋元陽太は枠を捉えた強烈なミドルを阻む。体調不良による急なメンバー変更もあったなかで、例えばそんなふうにそれぞれの責任感がチームを支え、チームのたくましさは一体感とともに増している。失点の場面の唯一ともいえる綻びは悔やまれるが、そこには0−1のままでは終わらせない千葉の底力があり、湘南にとっては、優勢のなかにあってもまだまだ突き詰めるべきを教えられたような戦いだった。集中力高く見応えのある好勝負、分け合った勝点1は両者にとって足踏みではなく、きっと前進に繋がるに違いない。
以上
2014.08.04 Reported by 隈元大吾
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