３連戦の最後の一戦、そして時折雨が落ちる蒸し暑いピッチ。こうした環境下でキックオフを迎えたこともあって、序盤は互いにスピードが上がらず、ミスもあってチャンスを逸した場面も目についた。しかし、両チームとも貪欲に勝点３を狙う姿勢は最後まで見せてくれた。ゴール前でのスリリングな攻防も多く、見応えのある試合になったといえるだろう。

そこでまず、最初のチャンスは愛媛。前半８分に渡辺亮太が相手ディフェンダーを背負いながら強烈なミドルシュートを放つ。これにGK神山竜一が好セーブで応じると、前半34分に再び渡辺亮太がマークを外してはなったシュートも神山が防いだ。さらに愛媛はコーナーキックから堀米勇輝が得意とするペナルティエリア右のゾーンに持ち込みシュートを放ったり、キムミンジェがミドルシュートで古巣ゴールを脅かしたりしたが、先制点を奪い切ることはできなかった。

ただ、福岡も最終ラインからつないで愛媛のゴールに迫る場面は作れていた。石丸清隆監督は「坂田（大輔）選手と石津（大介）選手がワイドに下りた所で誰が捕まえるかはっきりせず、そこからボランチが引っ張られてバイタルを突かれた」と振り返ったが、福岡は例えば石津が時にボランチ中原秀人のところまで落ちたり、トップ下のポジションで受けたり、愛媛にとって嫌なポジションを取ってチャンスを演出。福岡が再三チャンスを迎えていた時間帯の51分には、石津のスルーパスから平井将生が抜け出してシュートに持ち込んだ。ここは愛媛のハンヒフンが体をぶつけようとしたこともあって枠をとらえられず。後半開始直後から続いていた福岡の流れを愛媛が耐えると、そこからは愛媛にチャンスが続いた。

特に、愛媛のワントップ渡辺亮は体の強さを生かしてボールを受けるだけでなく、反転してしかけるプレーでフィニッシュに絡む。ただ、最後の判断に迷いが見られた点は惜しまれた。73分には自らドリブルでしかけてカウンターに持ち込んだが、ラストパスの判断が遅れてシュートに持ち込めなかった。それでも81分には、イグァンソンがたまらずファールで渡辺亮を止めて退場。愛媛は数的有利の状況に持ち込み、さらに猛攻を続けたが福岡の守備陣も体を張ってゴールを死守。スコアレスドローに終わったことが不思議なほど、両者ともにゴール前でチャンスが生まれたゲームだったが最終的には互いに勝点１を分け合った。

河原和寿は「シュートの精度というよりも判断のミスでゴールが奪えなかった」と振り返ったが、確かに連戦の疲労は体力的な部分よりも判断の遅れにつながっていた感もあった。愛媛だけでなく１人少なくなった福岡も最後までゴールに向かう迫力があっただけに、ちょっとした判断のミスが勝点３を取りきれなかった要因にもなった。こうして両者痛み分けのスコアレスドローに終わったことは、当然満足できる結果ではない。それでも、置かれた環境で最大限力を出し尽くし、守り切って最低限の結果は得た。そういう意味では、愛媛にとっても福岡にとっても次節に向けてポジティブになれるゲームだったのではないだろうか。

以上

2014.08.04 Reported by 近藤義博