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【J2:第25節 北九州 vs 札幌】プレビュー:サマーユニフォームの初勝利へ。小野対策万全の北九州、リベンジを期し難敵・札幌に立ち向かう。(14.08.03)

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北九州の夏季限定ユニフォーム。その背中には北九州市庁舎を高く超えてゆく鮮やかな大輪の花火が描かれている。市の一大イベント「わっしょい百万夏祭り」で打ち上がるもので、その祭りはまさに試合が行われる8月3日、最高潮を迎える。「祭りに沸く北九州にふさわしいカラー」。紅いユニフォームを見た北橋健治・北九州市長はそう評した。北九州っ子は祭り好きだ。小倉の街を花火が照らしている頃、本城もまた歓喜に沸いているだろうか。8月の祭りの宵。プロットのないドラマに北九州らしいストーリーを書き加えていくには、この上ない舞台設定が整っている。

2戦続けて引き分けに終わっている北九州。ホームに小野伸二がフィットしつつある札幌を迎える。もともと個の能力があるうえにチームとしての戦術も徹底されている今季の札幌。北九州は開幕早々の第4節にアウェイで対戦しているが、内村圭宏に2点を取られるなど前半に立て続けに3失点を喫して惨敗した。序盤戦らしからぬリズミカルなゲームの組み立てに翻弄されてしまったのが敗因の一つ。その札幌に海外経験も豊富な小野伸二が加入。全ての対戦相手にとってさらなる脅威に映っていることは疑いようもなく、それは北九州にとっても同じだ。

柱谷幸一監督(北九州)は「札幌は小野が入ってボールを動かすリズムが良くなった」と話し、チーム全体が活性化してきているのではないかと警戒を強める。小野個人についても「スペースと時間を与えたくない。できれば(小野が)ボールに触る回数を減らしたい」と対策に力を注いでいる。もちろん小野だけをマークしても「ほかにも技術やアイデアがある選手がいる」。北九州は小野を当然にマークしなければならないが、引き寄せられることで起きる弊害への対応も求められる。

まだ小野の試合出場が少なく十分なスカウティングができているとは言い難い。ただ特別視をするしないに限らず小野に体を寄せたり、前回対戦で決められている内村への供給をカットできる役はセンターバックやボランチの負うところが大きい。そのうちの一人、ボランチの風間宏希は「清水の練習参加をしたときに(小野を)見たが、ボールタッチが柔らかく抜けていた。今のJ2の中でも抜けている」と話す。もっとも北九州の守備陣も経験値は高い。風間はJ1・川崎Fでの経験があり、合わせる八角剛史、センターバックの前田和哉、渡邉将基も経験豊富なベテランだ。それでいて強いFWへの闘争心にも溢れ、「スイッチが入ればうちのセンターバックは強い」と柱谷監督も評する。こうした熱くも落ち着いた守備陣が小野や前回対戦で背後を突かれた札幌攻撃陣を抑えることができるかは注目点だ。

ちなみに、小野とピッチに立つことを楽しみにしている一人が渡大生。「プレースタイルは違うが、天才。小さい頃はDVDで見ていた」と憧れる。その渡は前節、先発出場したがチーム全体にミスが多くてボールが繋がらず、チャンスもほとんどなかった。「シュートが少なかったので攻撃の関わりから考えたい。(攻撃に割く)人数が多いほうがいいのでFWがためを作れれば」と振り返る。強力な攻撃陣を揃える札幌に対して守備からゲームに入るのはやむを得ないが、どこかで攻撃にエネルギーを注いでいかなければ得点は生まれにくい。チームとしての意識を統一してゲームに臨みたい。もちろん早い時間での失点だけは禁物だ。

対する札幌は上述の通り、もともとのベースをより強くする小野が加わった。まだゴールこそないが瞬時の判断力がもたらす攻撃が強い武器になっていることを、直近の3試合が示している。切れるカードもある。ただ決定的なチャンスを決めきれなかったり、ちょっとした運を手繰り寄せきれなかったりと微妙なズレが横たわる。前節の横浜FC戦も押し込んでいながらも好機をことごとく逸し、逆にほとんどチャンスを与えていなかった横浜FCに決勝点を献上した。攻撃と守備が噛み合えば強力だが…。小野をどう攻撃の中でフィットさせるのか、また相手の小野対策によって起きてくる現象をどう自分たちのプラスアルファの要素にしていくか。小野加入4戦目、結果とともに内容にも目が離せない。

ところで本稿執筆時点の8月2日午前において、北九州地方は台風の影響によるものと思われる強い風が吹いている。もともと風のいたずらが起きやすい本城。ゴールキックが流されたり、昨年まで使っていた公式球ではロングシュートが絶妙な変化を刻んだりと風が試合を良くも悪くもおもしろくさせていた。8月3日、文字通りの「追い風」を受けて白星を手にするのは、守備からしっかりとゲームに入る北九州か、それとも小野のJリーグ復帰初ゴールが期待される札幌か。祭りの宵はどんな風が吹いてくれるだろう。夏季限定ユニフォームでの初勝利にも期待してキックオフを待ちたい。

以上

2014.08.02 Reported by 上田真之介
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