両者の勝点差は『4』。まだ後半戦の序盤ではあるが、仮に松本が勝てば、J1自動昇格へ向け、大きなアドバンテージとなる。一方、磐田とすれば、勝点差を『1』とする最大のチャンス。今季J2の上位争いを占うビッグゲームと言っても過言ではない。

そして、このカードには“因縁”がある――。

前回の対戦は第15節。チケット完売のアルウィンで行われたゲームは、前半の船山貴之、飯田真輝のゴールで松本がリード。磐田の反撃を終盤の前田遼一の1点のみに抑え、2-1で勝利した。試合後、会心の勝利を手にした松本・反町康治監督はじょう舌だった。

「最後の15分、磐田は目が覚めたということ。サッカーに対して真摯に取り組んだと。それまでは我々を舐めてやっていたので、その対価として我々が勝利したわけです。人間というのは尻に火がついていないとやらない。我々は常に火がついている状況でやっている。レギュラーが固定していると言われるが、火をつけている。それだけは間違いない」（同監督）。

松本の監督に就任し、今季で3年目。前田遼一、駒野友一ら複数のビッグネームを擁する磐田に人件費では劣るが、“チーム力”では負けない――。このコメントにはそういった“意地”も見えた。指揮官はさらにこう続けている。「J1で天下を取ったチームにホームのたくさんのお客さんの中で勝てたことは我々にとって大きなページをめくったと思う。逆に言うと、ヤマハでこれだけやれれば本物」。

再戦は磐田よりも一つ上の順位で迎えることになった。重圧もあるだろうが、敵地で前回対戦と同等、あるいはそれをも凌駕するパフォーマンスを見せることができるか。ここ2試合は1勝1分。第23節のホーム・東京V戦は1-1とドローに終わったが、前節のホーム・熊本戦は2-1で逆転勝利。1トップ・サビアに第11節・愛媛戦（2○1）以来、約3か月ぶりとなるゴールが生まれた。一方、右足首を痛め、途中交代となった岩上祐三の状態が気になるところ。

対する磐田はチーム再建の1年目。先述した反町監督の弁は耳の痛いコメントでしかない。その後の戦いでもギアを上げきれず、第23節・横浜FC戦（0●4）では今季初の連敗かつ、今季ワースト失点を喫している。苦しいチーム状況ではあるが、松本との再戦に勝利し、先のコメントに“反論”できるか。前節のホーム・讃岐戦は4-2で勝利。新加入のチンガに加入後初得点が生まれ、連敗を『2』で止めている。

讃岐戦翌日（7/31）の練習後、シャムスカ監督は讃岐戦の先発メンバーを残し、ピッチサイドで約15分間“青空”ミーティングを行った。「練習後すぐに、ピッチでやることでいつも以上に伝わるものがある」と指揮官。松本戦に向け、改めてチーム内の意思統一を図った。さらにその後は山崎亮平と伊野波雅彦をそれぞれ呼び寄せ、個別にコミュニケーションを取った。“シャムスカ・ジュビロ”では当然これまでも選手、スタッフ間で話し合い、チーム作りを進めてきたが、試合翌日としては珍しい光景。この松本戦はそれほどまでに重要な一戦ということである。

ただし、見方を変えれば、連戦のさなか、リカバリーに時間を割くべき選手たちを炎天下のピッチに残し、話し合う“必要性”があったと指揮官が判断した、ということ。讃岐戦の試合後の会見では勝利を評価しつつ、「我々の求めているやり方ではない」、「あまりにバックパスが多すぎる」とチームに苦言も呈した指揮官。前節から中3日という限られた準備期間ではあるが、選手・スタッフ間で細かい部分をどこまですり合わせることができるか。
前田遼一（右ふくらはぎ痛）、金園英学（右肘脱臼）と前線2枚を負傷で欠き、さらにフェルジナンドも累積警告で出場停止となる。一方、疲労回復のため前節・讃岐戦を欠場した松井大輔、駒野友一は先発復帰する見込み。ゲーム主将の松井は「難しい試合になると思うが、やるしかない」と意気込みを語る。

注目の大一番は3日18時、ヤマハスタジアムで行われる。両者の意地とプライドがぶつかる、ハイレベルなゲームになることは間違いない。

以上

2014.08.02 Reported by 南間健治