この2試合で失点8と守備は崩壊。前々節の広島戦は2点を奪い、相手より多くのチャンスを作り出したにもかかわらず、それをことごとく逸し、前節の清水戦にいたっては、シュートはわずかに3本と、攻撃面でも光明が見えなかった。攻守において噛み合わず、2試合連続の体たらく。田中順也の突然の移籍は確かに痛手であるが、彼一人が抜けただけで、ここまで崩れていってしまうものなのか。
工藤壮人は「僕たちは勝ってきたチーム。そこは自信を持っていいし、ちょっとチームが自信をなくしている部分もあるけど、しっかり自分たちの力が出せれば勝てる」と、この逆境を跳ね除けようとする姿勢を見せているが、工藤の言葉通りチーム内には自信を失いかけている者も出ている。清水戦はイージーミスから2失点し、その時間帯も悪かったため、精神的なダメージが大きく、失点後から明らかにチームはトーンダウン、反発力を失った。したがってメンタル的な部分でどこまで立ち直っているか。とにかく戦う気持ちを取り戻さなければ、勝つことはまず不可能だ。
対する川崎Fは、未消化だった第12節を含めて中断明けはリーグ4連勝中、しかも失点はわずかに1と、柏とは対照的な状況にある。順位も3位まで上がり、首位浦和とは勝点差3に迫った。他チームの結果次第では、今節終了時にも首位に立つ。
柏の選手たちに川崎Fの印象を聞くと、誰もが決まって「攻撃が強烈」と話す。直近の2試合はともに1−0で終わったとはいえ、やはりビルドアップから相手ゴールへ襲い掛かる攻撃の多彩さ、相手守備陣の嫌なところを突き、パワフルに突き破ろうとする圧力はさすがと言うしかない。中村憲剛を起点にディフェンスラインの背後、手前のスペースを状況に応じて使い、前節は森谷賢太郎が決勝点を挙げたことにも象徴されるように、FWが空けたスペースに2列目の選手が入る連動性や、小宮山尊信、登里享平の両サイドバックの攻め上がりも効果的かつ対戦相手に脅威を与える。
また、こうした圧倒的な攻撃力を武器とするチームは、意外と守備に難点があるものだが、川崎Fは目下3試合連続完封中と守備にも隙がない。實藤友紀、谷口彰悟のセンターバックコンビの安定感は増すばかりだ。
勢いに乗り、自信に満ち溢れる川崎Fを迎えるにあたり、柏の戦い方としては、ある程度の割り切りも必要だと思っている。おそらく川崎Fがその攻撃力で多くの時間帯で柏を押し込む展開が予想されるが、そこでバランスを崩して前へ前へという意識を強めては逆にその裏を突かれる可能性が高い。5バックと3ボランチで自陣にブロックを作り、川崎Fの攻撃陣に攻め入るスペースを与えない。そして奪ってから素早くカウンターに転じるという戦い方が最も得策だ。
ただ、柏はサイド攻撃の精度不足という問題を抱える。清水戦でも、両ウイングバックのクロスがファーに流れる、あるいはゴールラインを割ってしまうなど、クロスが上がった瞬間に「精度不足」と分かる、思わず目を覆いたくなるような場面が目立っていた。「サイド攻撃が生命線」というシステムを敷きながら、そのサイドから全く良いボールが入らないのは致命的。ピンポイントのクロスが入らないまでも、相手DFが処理をしづらいボール、あわよくば触ればオウンゴールを誘発するような際どいボールを入れてほしい。カウンターへ転じても、工藤とレアンドロはドリブルでぶっちぎって相手のDFを置き去りにするタイプではないだけに、両ウイングバックには今一度、その精度向上に努めてもらいたい。
そして、こういう苦しい時こそ日立台を黄色く染めるサポーターの力が必要である。工藤は「日立台の雰囲気はアウェイとは雲泥の差。アドバンテージがある」とホームでの一戦に自信を覗かせる。清水戦では、選手たちのメンタルが明らかにトーンダウンしてしまったが、もしそうなった時に、彼らを鼓舞し、叱咤するのは日立台に詰めかける『12番目の選手』たちだ。
以上
2014.08.01 Reported by 鈴木潤
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