公式記録によると試合開始時の気温は23.1度。前節から中3日、真夏の平日ゲームという難しいシチュエーションながらも札幌ドームは良コンディションとあって、「涼しいなかで試合が出きたのはありがたかった。みんな最後まで走りきることができた」と横浜FCの松下年宏。過密日程のなか、双方が最後まで集中力を保つ熱戦が演じられていた。
立ち上がりに主導権を握ったのはホームの札幌。守備的MFの上里一将、上原拓郎がテンポよくパスを動かし、ジワジワと全体のラインを押し上げていく。地元ファン・サポーターの歓声も後押しし、勢いよく横浜FC陣内へと入り込んでいった。
しかし、そこで横浜FCの山口素弘監督が素早く手を打つ。4−2−3−1の布陣から、松下裕樹をアンカーに置く4−1−4−1へと変更することで、札幌の守備的MF2枚へ圧力をかけて、パス回しを封じてみせたのだ。「守備的MFを抑えたことで、相手のパスの出どころは最終ラインになり、対応しやすくなった」(松下年)。札幌の最終ラインからのロングボールはセンターバックのドウグラスを中心に跳ね返し、クサビのボールが入ってきても松下裕が鋭い読みでカットして勢いよくカウンターへと転じる。「相手がシステムを変えてきてから、少し攻撃で難しくなり、守備でも混乱した時間があった」とは札幌の財前恵一監督の試合後の弁だ。
そうして前半中頃に横浜FCがリズムを奪い返すと、後半もそのまま主導権を掌握。札幌がボールをポゼッションしているようにも見えたが、「ブロックの外ではボールを持てるのですが、そこから入れるボールが、受け手を探して探して、という形になっていた」とも財前監督は振り返る。ボールは主にホームチームが保持しながらも、ゲーム全体をコントロールしていたのは、安定した守備を見せるアウェイチームのほうだったのだ。
62分に市村篤司のゴールで横浜FCが先制点を奪ってからは、その構図がより一層色濃くなる。札幌が上原拓に代えて前田俊介を投入し前傾姿勢をとると、それに合わせるように横浜FCは安英学を投入してシステムを再び4−2−3−1へ。松下裕と安がバイタルエリアをガッチリと固めてスペースを埋め、逃げ切りを図る。札幌には狭い局面で決定的なパスを出せる小野伸二がいるが、その小野にも効果的なパスコースを与えず、シンプルなクロスやミドルシュートを打たせる見事な対応をしてみせた。そして1−0のスコアのままタイムアップの笛を聞いている。
試合を大まかに総括すると、「危ない場面はほとんどなかったと思う」と安が振り返るように、1−0という最少得点差ながらも横浜FCがほぼ危なげなく勝利したゲームだったと言えるだろう。試合の状況を的確に見極めて布陣変更、選手交代を行った山口監督のベンチワークも光った。交代枠を1つ残して試合を終えたのは、それだけ狙い通りにゲームが進めることができた証でもあるだろう。
ただし、それ以上に強く感じたのは横浜FCの選手たちの豊富な経験値だ。「ベンチの力に頼らずとも、自分たちで試合のリズムに変化をつけることができた」と松下年が口にしたように、横浜FCの選手たちは負傷者の治療などでインターバルが生まれた際に、GK南雄太や松下裕を中心に輪を作って話し合いをする場面が何度もあった。そうやって悪くなったリズムを元に戻したり、チームの歯車をより円滑に動かしていったのだろう。やはり先発メンバー11名の平均年齢が29.45歳という経験値はダテではない(札幌は25.64歳)。
あらためてサッカーというのは、ピッチ上の選手が自分たちで考え、行動に移すスポーツだと思い知らされる試合だった。たしかに山口監督のベンチワークも的確だったとは思うが、あくまでもそれはベクトルを示したにすぎない。やはり目の前で起きていることを、選手たち自身が感じとってディティールに変化をつけていくのが試合というものだろう。戦力面で横浜FCが札幌を大きく上回っていたとは思わないが、少なくともチームとしての勝つための試合運びについては、スタメンのなかに30歳以上の選手が5人いた横浜FCが札幌を圧倒していたように感じてしまう。
この勝利で横浜FCはリーグ戦で7戦無敗、今シーズン初の3連勝を達成。今後の戦いぶりに注目が集まるチームの1つだろう。
以上
2014.07.31 Reported by 斉藤宏則
J’s GOALニュース
一覧へ- 2024 明治安田Jリーグ終盤戦特集
- アウォーズ2024
- 2024J1昇格プレーオフ
- bluelock2024
- 2024 明治安田Jリーグ フライデーナイトJリーグ
- 2024JリーグYBCルヴァンカップ
- Jリーグ×小野伸二 スマイルフットボールツアーfor a Sustainable Future supported by 明治安田
- AFCチャンピオンズリーグエリート2024/25
- AFCチャンピオンズリーグ2 2024/25
- はじめてのJリーグ
- FIFAワールドカップ26 アジア最終予選 特集ページ
- 2024天皇杯
- 明治安田Jリーグ 月間表彰
- 2024Jユースカップ
- シャレン Jリーグ社会連携
- Jリーグ気候アクション
- Jリーグ公式試合での写真・動画のSNS投稿ガイドライン
- J.LEAGUE CORPORATE SITE
テレビ放送
一覧へ明治安田J1リーグ 第37節
2024年11月30日(土)14:00 Kick off