１人少ない状況で先制された大分が、逆境を跳ねのけ勝利をもぎ取った。豊富な運動量、最後まで途切れない集中力、そして新戦力が結果を出し、今後の明るいシーズンを予想させた。

リーグ後半戦、勝利のないチーム同士の対戦は手堅い試合になると思われたが、序盤から攻守の切り替えが激しい試合となった。大分はターゲットのラドンチッチにボールを集め、そこから２次攻撃を展開すると、栃木はそのロングボールを封じようと大久保哲哉、重松健太郎ら前線の選手が相手のビルドアップに対しプレッシャーをかける。

一進一退の攻防が続いたが、34分にキム・ジョンヒョンの退場により流れが変わる。１人少なくなった大分は、ラドンチッチ１人を前線に残し２枚のブロックを作り、栃木の攻撃をしのぐ。何とか無得点に抑え、後半に入るも流れは変わらず、52分に失点を喫す。６試合未勝利が続くホームチームは、「勝負にいかないといけない」と田坂和昭監督が【４−４−１】から【４−３−２】にシステムを変更する。前線にラドンチッチと林容平の新戦力を再び並べ、「前線にパワーを置いた」（田坂監督）。
この決断が流れを呼び込み、65分に林が為田大貴のパスをGKの目の前でコースを変える技ありシュートを決めると、その３分後にラドンチッチが後方からのフィードに対し相手DFが目測を誤ったのを逃さず、こぼれ球をきっちり決め逆転に成功。新加入FWのゴールの共演で勢いに乗ったチームは、数的不利を走力でカバーし、終了間際の再三のピンチは武田洋平が神懸かり的なセーブを連発し、追加点を与えなかった。
新しい戦力と既存の戦力がかみ合い、結果が出た。田坂監督は「１人少ない状況で選手の距離間が良かったし、バランスもとれ、いいアプローチができた。集中してプレーもできた」と手応えを口にし、「ターニングポイントとなるような試合」と振り返ったように、今季最高と呼べる感触を今後につなげたい。

一方、数的有利を活かせず、１点のリードをひっくり返された栃木のダメージは大きい。阪倉裕二監督は「逆転負けという結果は変えられないし、連敗中という状況も変えられない。この結果をしっかり受け止めて、選手としっかり次に向けて準備をしたい」と気持ちを切り替えたが、先制後の試合運びに課題を残した。岡根直哉が「もっとボールを動かして自分たちのペースで試合できればよかったのですが、メリハリがなかった」と振り返ったように、先制した後も同点に追い付かれた後も攻撃のリズムは変わらず、一人ひとりのボールを持つ時間が長くなり、どこかちくはぐな展開が目に付いた。その不手際が大分に付け入る隙を与え、失点した。試合終了の笛が吹かれると栃木の選手たちは疲れ切った表情を浮かべ、悔しさを滲ませた。状況に応じた試合運びという明確な課題を見つかったのは収穫だが、「一人多い状況でもったいない試合をしてしまった」（大久保）では、上との差は離れていくばかりだ。

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2014.07.31 Reported by 柚野真也