7月26日土に行われた第23節・水戸戦は、ほかの試合に増して、どうしても勝たなくてはならない理由があった。
1つ目には、連敗を脱すること。2つ目に、「くまもと県民DAY」と打ち出して多くの来場を促し、実際に1万人を超える観客が集まる中での試合だったこと。そして3つ目が、4月末に発表された7000万円の増資の取り組み、合わせて3000万円を目標に始まった「ロアッソ熊本存続支援募金」の期限が今月末に迫るなか、熊本県と熊本市が増資に応じる意向を示し、また試合前にはサポーターが取り組んだペットボトル募金の贈呈を行うなど、クラブを支える多方面の動きに応えなくてはならなかったからだ。
結果は2−1で7試合ぶりの勝利。初めて観戦に訪れた人も含めてスタンドを埋めた観客と、報道を通じて状況を気にかけていた熊本県民、そして増資や募金に応じてくれた企業やサポーターの思いに、ひとまずはどうにか報いることができた。
試合前には、サポーター有志で立ち上げた「ロアッソ熊本を救う実行委員会」の代表・堤和夫さんから、ペットボトル募金で寄せられた金額の目録がアスリートクラブ熊本の池谷友良社長へ手渡された。4月27日の長崎戦の前に開いたミーティングで「自分たちにも何かできることがないか」と意見を交わし、約3カ月で集めた額は249万5214円にもなる。サポーターの思いが形になったものだ。
ペットボトルを設置した場所は、県内外合計457カ所。その1カ所1カ所にお願いに行って事情を説明し、そして水戸戦前の目録を渡すタイミングに間に合うよう、再び1カ所1カ所に足を運んで回収、集計した。飲食店などでは、店のオーナーさんからお客さんに声をかけてくれたところもあったろう。地域ごと、あるいは設置した店舗や事業所の規模、業態によって金額の大小はあったにせよ、その1本1本に、寄付を投じてくれた人の気持ちが込められている。
それは県内に留まらない。関東在住のサポーターがペットボトル募金箱を設置した川崎市のスポーツバー「アズーリ」では、その店の常連である川崎Fをはじめ、甲府や清水、仙台、浦和等のサポーターも力を貸してくれたという。また7月19日の柏対仙台の試合会場で募金を呼びかけてくれた柏サポーターもいたと聞く。さらに関西では、現在期限付き移籍で甲斐敬介選手が在籍している奈良クラブの岡山一成選手が、サポーターが開いたフットサルのイベントで自著をチャリティ販売し、その売上を寄付してくれたらしい。2度に渡ってロアッソ支援パンを販売した「オーダーメードパン屋」には県外在住の他クラブサポーターからのオーダーも少なくなく、また昨年は福岡の支援に乗り出した福岡市の「株式会社ふくや」からも、クラブに対して支援金が寄せられた。もちろん、県内企業や自治体からもそうした支援が続いている。
「本当に感謝しかない。これだけのパワーがあること、そしてサポーターの偉大さと必要性を改めて感じました。県外の方や他クラブのサポーターの方にも多く支援していただいて、サッカーファミリーの力と温かさを感じました」と池谷社長。募金の贈呈を受けて挨拶した際には、債務超過の解消のために設定した7000万円の増資を達成する目処が立った旨を報告した。
「ペットボトルを置いてもらう活動によって、ロアッソ熊本を県内の多くの市町村の方に身近に感じてもらいました。180万県民と絆を結ぶにあたって、クラブと両輪でサポーターも活動していきたい」。募金活動を引っ張った堤さんは、贈呈のセレモニーでそう述べた。
クラブが生まれて10年。規模も成績も、浸透度もまだまだだ。今回のことを通じて、他クラブサポーターの支えもあってこそ存在できるということも改めてわかった。
今回蒔かれた種をしっかり育て、もっと深く根を張らせ、もっと幹を太くしていくこと。そしていつか、熊本だけでなく、日本のサッカーに少しでも多くの果実をもたらせるようになること。それがこれからの使命であり、恩を返していくことに繋がるのではないかと思う。
以上
2014.07.29 Reported by 井芹貴志
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回収したペットボトルをただ処分するのではなく、BIGなペットボトルを作って渡す。こうした遊び心も熊本サポーターが誇れるところ
代表の堤さんから池谷社長へ目録の贈呈。スタンドからも大きな拍手が起きた
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