苦しい戦いが続いている。第21節の松本戦を皮切りに、岡山、京都、湘南、愛媛、磐田と続く6試合を、J1昇格プレーオフ進出のための山場と位置づけて臨んだ福岡だが、現在3試合を消化していずれも逆転負け。3試合ともに、どこかで何かが変わっていれば結果は違ったものになったであろう試合だったが、勝負所で後手を踏んだことが要因になって勝ち星を手に入れられずにいる。水戸と対戦した天皇杯2回戦を含めれば、約1カ月のもの間、福岡は勝利から遠ざかっている。
しかし、それらの試合を悔んでいる時間も、その結果に下を向いている時間もない。6位以内を目指すサバイバルレースは例年以上の大混戦。どのチームにもチャンスは残されており、しかし諦めたチームはサバイバルレースへの参加権を失う。いま問われているのは、敗れた後そして苦しい時期に何ができるかということ。全てが決まるのは42試合が終わった時。まだ何も終わってはいない。
そして第23節、福岡はホーム・レベルファイブスタジアムに湘南を迎える。ここまでの成績は22勝1敗。ダントツの強さを発揮してリーグ首位をひた走っている。総得点は53。総失点はわずかに10。その強さは改めて説明するまでもないだろう。スタイルは、豊富な運動量をベースにしたアグレッシブなサッカー。90分間に渡って攻め続けることを信条にするチームは、常に7人が相手陣内に入り込み、そこへ最終ラインの一角である三竿雄斗が左サイドを駆け上がって攻撃の起点を作る。場合によっては、センターバック丸山祐市1人を残して攻め上がることも珍しくない。
最大の強みは高い位置からの激しいプレス。走力とプレスを武器に戦うチームは湘南以外にも、福岡をはじめとする複数のチームが存在するが、出足の鋭さ、プレスの厳しさ、そして走り続けるフィジカルの強さと走りの質で湘南の右に出るチームはない。そして、その強さが最も発揮されるのがボールを奪われた時。その瞬間に「攻」から「守」に切り替えて、その場でプレスバックしてボールを奪い返す。常に高い位置で前向きにプレーするチームは、その背後に大きなスペースが存在するが、相手のプレーを徹底的に制限することで、そのスペースを使わせない。まさに「攻撃は最大の防御」を実践するチームだと言える。
しかしながら、どんな強敵であろうとホームで戦う試合で負けるわけにはいかない。リーグ戦3連敗の福岡の状態は必ずしもいいとは言えないが、それでも、ホームチームの意地と誇りにかけて勝点3を掴みに行かなければならない。
まずはしっかりと守り切ること。福岡は、ここのところ失点が増加傾向にあるが、守備が大きく乱れているというよりも、肝心なところでのミスが要因になっていることが多い。中位以下のチームなら、それでも守り切ることは出来るが、そこに付け込んでくるのが上位チーム。まずは自分たちの守り方を再確認した上で、ディテールに徹底してこだわる必要がある。
また、前へ出る気持ちを失わないことも大切な要素だ。押し込まれる時間が長くなることが予想される試合では、割り切ってゴール前を固める時間帯も必要だ。しかし、ただ守るだけになってしまっては、いつかはこじ開けられる。たとえ低い位置に追い込まれても、隙さえあれば前へ仕掛けるという姿勢を忘れてはいけない。そして何よりも大切なことは、マリヤン・プシュニク監督がことあるごとに口にする「戦う姿勢、態度、意識」を持って戦うこと。何が出来たのかではなく、勝利のためにチャレンジし続けたのか。それが、この試合での最大のポイントになる。
猛暑の中、中3日のインターバルで戦う試合は厳しいものだが、それらを跳ね返して勝利を目指す気持ちを表現する。その先に勝利の女神が待ってくれているはずだ。
以上
2014.07.29 Reported by 中倉一志
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