４連敗、天皇杯２回戦も含めれば５連敗という結果に反して、チーム状況は再び上向いてきたようだ。前節の湘南戦、敗れこそしたが前半の被シュートは１本に抑えるなどシュート数では上回り、そして何より、今シーズンのベース、あるいは生命線と言えるアグレッシブな守備を彼らが取り戻しつつあることが、それを物語る。
「前節は内容的にも、勝ってもおかしくないゲームをしてくれた。ただ結果は出なかった。こういう時に自分たちから歯車を狂わせてしまうのはもったいないこと。ですから肝心なのは、自信を持ってアグレッシブに戦う、これを続けていくこと」。小野剛監督はそう話す。
湘南の３バックとうまく噛み合ったという側面はあったにせよ、「失点した場面以外はそれほど危ない場面はなかった」（橋本拳人）、「お互いにうまくカバーリングし合えている」（園田拓也）と、守備に関しては選手達も手応えを掴んでいる。だからこそ、それを裏付けるために必要なのが、攻撃で成果を出すこと。小野監督が描く年間を通したプランの中では、「少しずつでもサッカーを発展させていく」という狙いのもと、おおよそこの時期に攻撃面をさらにブラッシュアップすることは予定されていたようだが、今節迎える相手が「組織がしっかりしていてブロックがコンパクト。全体のスライドも早く、なかなか崩れない」（小野監督）と、守備の堅い水戸であることも踏まえて、今週のトレーニングでは相手のブロックをいかに崩すかに重点を置いた。

その水戸は、前節群馬を相手に２−０で完封勝ち。３試合勝ちなしでリーグ前半を終えたが、天皇杯２回戦では19節に敗れた福岡を２−０で下し、直近２試合は無失点である。この天皇杯で小谷野顕治がプロ初ゴール、そして鈴木隆行が今シーズン初ゴールを決め、鈴木はその勢いのまま前節群馬戦では２つのPKを決める等攻撃も上向き。故障者が少なくない中でもチーム全体の力が底上げされてきたことがうかがえ、リーグ後半戦を勝ってスタートしたことでさらに自信も深めた。

４月の前期対戦（10節＠K'sスタ）を振り返ると、スコアレスドローに終わったものの熊本は13本のシュートを許している。「ボールを回されてサイドをえぐられたイメージ。やっと引き分けた印象がある」と園田が話すように、簡単な試合ではなかった。熊本としては「相手のレールに乗らない」（小野監督）試合運び、すなわち、まずは積極的な守備でペースを握った上で、自分たちから攻撃のアクションを起こしていくことが重要になる。トレーニングで意識していたのもこの点だ。ポイントは、相手のブロックを開かせる、あるいはギャップを生じさせるボールの動かし方と、それによってできたスペースを衝くタイミングを逃さないこと。
「怖がらずに縦パスを入れて、そこからのコンビネーションで持ち込む場面を増やしていけばバリエーションが広がるし、相手の嫌がる攻撃ができると思う」と齊藤和樹が話す通り、リスクを負ったチャレンジを繰り返すこと、さらにはワンタッチなどでリズムに変化をつけることが求められる。その上で、安易なボールロストからカウンターを受けないよう、的確なサポートも不可欠。同時に、奪われてもすぐに取り返す、攻撃から守備への切り替えで後手を踏まないことも重要。19時開始とは言え、暑さも考えれば90分間プレッシャーをかけ続けることは不可能で、相手にボールを握られる時間も必ずある。特に鈴木に対しては前期対戦でもかなり手を焼いたが、相手のブロックの中にボールをつけることを意図したトレーニングのなかで、守備陣は簡単に中へ入れさせないことを体と意識に植え付けた。リスクの高い場所でフリーキックを与えないためにも「ペナルティエリアに入れさせない」（橋本）ことを意識しながら、供給源をしっかりと断ち切りたい。

この試合、「くまもと県民DAY」と銘打って、15,000人の動員を目標にクラブは集客プロジェクトに取り組んできた。夏休みに入って最初のホームゲームとあって、子どもたちや初めて観戦に訪れる人も少なくないだろう。また23日には、債務超過解消に向けた増資に、熊本県と熊本市が応じる方向であるとも報じられている。そうした状況で、ふがいないゲームはできるはずもない。
「いい内容だった、というのは、もういい」と養父雄仁は言う。膝はもうじゅうぶんに曲げて腰も落とした。あとは勢いをつけて、高く跳ぶだけだ。

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2014.07.25 Reported by 井芹貴志