「どこが空いているのか探していました」この日のヒーローとなったDF登里享平(川崎F)はさわやかな笑顔で語った。
「もっと相手に取って嫌な位置に立てれば、(中村)憲剛さんからもボールを受けやすいと思うので…」(登里)自らのプレースタイルを知り、味方の特徴を生かすことができるのが、今の川崎Fの強さなのだろう。
FW大久保嘉人も「(前半)途中でやり方を変えて…」と試合途中にも関わらず、臨機応変な対応をしたことを明かしてくれた。アウェイ戦が3試合続く中で、3連勝を飾ることができる要因が彼ら選手たちの試合後のコメントを聞いていると分かってしまう。風間八宏監督も「我々はパターンで戦っているわけではない」と試合後の会見でチームを評した。
近年の対戦では、手を焼いていた鳥栖戦だったが、しっかりとした自分たちの戦い方を最後まで出したからこその勝利なのだろう。
そして、この日生まれたのは23歳のヒーロー登里。「空いていたところを探していた」登里が、最後に見つけたのは決勝点となるシュートコースだった。
敗れたとはいえ、鳥栖も最後の最後では身体を張って守り切っていた。
62分に喫した決勝点も、シュートを放った登里にはしっかりと付いていたし、センターに飛び込んできた選手にもマークは付いていた。
言い換えると、登里からのセンタ−への折り返しの選択肢は完全に消していたわけで、登里の狙いはシュートしかなかったことになる。
入れられたGK林彰洋も、しっかりとコースを切っての対応ができていたので、登里のシュートが数センチ、いや数ミリでもどちらかのコースに逸れていれば、ポストに当たってゴールに吸い込まれることはなかったと思う。
決勝点のシーンだけを切り出してみると、両チームの選手の素早い判断と高い技術を観ることができる。
入れた川崎Fのサポーターも、入れられた鳥栖のサポーターも、ある意味での納得はできるのではないだろうか。
繰り返すが、両チームの選手の素早い判断と高い技術を観ることができる。
この試合では、個人プレーのクオリティの高さだけではなく、試合に対するチームコンセプトの高さも見て取ることができた。
「もっと、左サイドから崩すことができるはず…」と風間監督は試合途中から観ていた。
川崎Fの左サイドと言えば、決勝点をあげた登里のサイドである。鳥栖にとっては、堅守の代名詞ともいえるDF丹羽竜平を擁する右サイドである。
「右サイドのMFとDFの間を突ければ、(鳥栖の)入り方が変わってくる」(風間監督)は感じていた。そこで求めていたのは、DF登里が高い位置を取ることであり、そこに丹羽が対応することで、鳥栖の右サイド奥が空くことを読んでいたのである。
おそらく、ハーフタイムには指示が出ていたのだろうが、登里が高い位置でプレーすることで決勝点が生まれたのだから、ベンチワークも見事にはまったことになる。
決勝点が生まれる6分前に、個人技で状況を打破することができるFWレナトを左サイドに入れて、パワーを増していたことも、決勝点を導き出した要因に挙げることができる。
一方、深刻なのは鳥栖の戦い方である。
CB菊地直哉が指摘したように、前節の神戸戦に続いて相手に短いタテパスを入れられる回数が多いことである。
「ボールにアタックに行けていないし、コンディションも良くないし、ボールを失っている回数が多いのがそこのあたりにつながっている…」(菊地)
ポジティブに考えれば、相手にボールを持たせて最終のところで身体を張れているということだろうか。
しかし、「どこか行くところで行かないと、あれだけボールを持たれるときつくなってしまう」(安田理大/鳥栖)のも事実。
やはり、鳥栖らしいアグレッシブさが出せない要因が何かあるのだろう。
中断期を挟んだために実戦感覚が戻っていないのか、連戦での疲れなのか…。そんな不安を一掃するには、次節の戦い方に期待するしかない。超ポジティブにとらえれば、リーグ戦、ヤマザキナビスコカップ、天皇杯と続く過去10戦では、7勝1分2敗なのだから、早く次節に思いを馳せた方がいいだろう。
真っ赤に染まったベストアメニティスタジアムで大きな声で声援を送ったサポーターやファンたちもそう考えているのではないだろうか。
相手があって試合が成立するサッカー。
思惑通りにボールをゴールまで運べるとは限らない。
逆に考えると、思惑と違った現象が起きた時に瞬時にプレーを変えるだけの技術とプレーの幅が求められる。
高い対応能力は、連取の中で積み上げ、実戦の中で成果となる。
敗戦から学ぶことも多いのも事実であり糧となる。
サッカー思惑通りには流れないスポーツなのである。
以上
2014.07.24 Reported by サカクラゲン
J’s GOALニュース
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