約1カ月ぶりのホームゲームとなった岐阜。この日は夏休みの始まりと3連休の中日という好条件も重なって、12,465人もの観衆が長良川競技場に詰めかけた。
前節を3-0の勝利で飾った岐阜は、その時のメンバーからまた数人入れ替えて、『横浜FC対策』をしっかりと講じてきた。前線はナザリトの1トップに、後方に右から遠藤純輝、高地系治、難波宏明の3シャドーを並べた。狙いとしては、高い位置で起点を作り、相手のダブルボランチの脇とギャップを3枚の中盤で果敢に狙うこと。守備面では前節の水野泰輔とヘニキのコンビではなく、宮沢正史とヘニキのコンビを採用することで、守備能力の高い宮沢をストーンに置いて、横浜FCの1トップ・黒津勝とトップ下の小野瀬康介にプレッシャーがかかるように仕向けた。
前半はこれがハマった。横浜FCの黒津に対し、しっかりとセンターバック1枚と宮沢が対応し前線で起点を作らせないようにすると、セカンドボールを3シャドーとヘニキが拾って、ショートカウンターを仕掛ける。
15分を過ぎると、試合はこう着状態に入るが、30分を過ぎたあたりから岐阜が再び攻撃のギアを上げる。DFラインを高く押し上げ、右サイドバックの益山司のポジショニングを前に上げて、左サイドで作って右に大きく展開して、横浜FCを揺さぶりにかかった。これにより横浜FCの中盤は完全に間延びし、黒津が孤立。岐阜は間延びした中盤をうまく利用し、ポゼッションを織り交ぜながら、チャンスの時を虎視眈々と狙った。
ここから岐阜のハーフコートゲームとなったが、岐阜はラストプレーの精度が甘く、ブロックを形成する相手DFラインをなかなか切り崩せない。前半を0-0で折り返すと、後半も岐阜のペースで試合が進む。
押し込めど点が入らない嫌な流れだったが、68分の遠藤の中央突破からのシュートを境に、岐阜の猛攻が始まった。そして猛攻の流れから74分に、宮沢の右からのクロスを、ファーサイドでヘニキがヘッドで落とすと、走り込んだ高地が豪快に蹴り込んで、岐阜が最高の形で先制に成功する。
しかしその直後、岐阜は最悪の形で失点をする。ゴールの余韻が冷めやらない75分、岐阜は不用意なファウルでFKを与えると、ここで全員の集中力が切れてしまった。棒立ちになった瞬間をFW小野瀬康介は見逃さず、すかさずリスタート。右サイドでフリーになったDF市村篤司が、角度のないところから豪快に突き差し、あっという間に同点に。悪夢はこれで終わらなかった。完全に浮き足立ってしまった岐阜は78分、左サイドを簡単に破られ、折り返しを交代出場のMF小池純輝に蹴り込まれ、あっさりと逆転。
岐阜にとって『魔の4分間』だった。そしてこの4分間が勝敗を決してしまうどころか、内容と結果を反転させるものとしてしまった。
これまで記してきたように、90分の内容という面では、岐阜は決して悪くはなかった。むしろ今季のゲームを振り返ると、良い部類に入るものだった。しかし、結果がまったく反対のものになった。
「もう素人か。クリアボールして、宮沢のところで数的不利なのに、なぜみんな前に行ったのか。リスク管理が出来ていない。こんなにいいサポーター来てくれて、今週の練習も雰囲気良くて、相手の出方も予想通りだったのに。何より一番腹立つのは、自分たちのミスで負けること。これは何回も言っていること。小学生だよ。今の中学生、高校生はそんなミスをしない」
ラモス監督のこの言葉はもっともだ。手痛いを通り越して、『激痛』の敗戦。言葉が出なくなるような、敗戦だった。
こういう展開は得てして、『サッカーの恐ろしさをまざまざと思い知らされた』という言葉が用いられるが、今回は恐ろしさでもなんでもない。単なる『集中力の欠如』だった。逆にそれを『恐ろしさ』で片づけてしまってはならないだろう。自分たちの致命的なミスとして真摯に受け止めて、次以降の戦いに挑んでほしい。正直、岐阜にとってそれ以外に言うことが出来ない敗戦だった。
以上
2014.07.21 Reported by 安藤隆人
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