饒舌な口調で試合を振り返る影山雅永監督(岡山)。目線を落として力なく言葉をつなぐマリヤン・プシュニク監督(福岡)。その対照的な姿が、この日の試合を物語っていた。互いに運動量と局面の激しい守備、そして攻守の切り替えの速さをベースに戦うチーム同士。堅固な守備を特長とする岡山と、攻撃を仕掛け続けることで勝利を目指す福岡というスタイルの違いはあっても、その根底は同じところにある。しかしながら、激しい点の取り合いとなった試合も、そのベースの部分で上回ったのは岡山。特に、2−2となった後は、時間の経過とともにトーンダウンしていく福岡に対し、岡山は最後まで走りきった。結果は2−3で岡山の勝利。勝負所で差が明確に表れた試合は、得点差以上の差が感じられた。
「後半戦の意気込み、強い気持ちというものを、選手たちは1週間でよく準備してくれて、それをピッチ上で表現してくれた」(影山監督)
その言葉通り、岡山は立ち上がりから激しく前に出た。高い位置からのプレッシャーで福岡のプレーを制限し、1対1の局面の激しさでも福岡を上回る。特に両チームの間で大きく違ったのはボールに対する集散の速さ。常に2人、3人がボールに働きかける岡山に対し、福岡は選手間の距離が遠く、1人1人が孤立してしまう。セカンドボールを岡山が圧倒的に支配するのも当然の帰結。中盤の主導権を握った岡山は、上田康太が自由にボールを捌き、石原崇兆が存在感を示し、久保裕一がボールを収め、そこへ 片山瑛一が効果的に絡む。これらの動きを福岡は全く制限できない。前半の失点はセットプレーのクリアミスから失った1点だけだったが、その内容には大きな差があった。
それでも、後半に入ると福岡が主導権を奪い返す。マリヤン・プシュニク監督はパク・ゴンに代えて金森健志を投入してシステムを4−4−2に変更。前半からアグレッシブに戦っていた岡山の足が止まったこともあり、これが功を奏した。そして55分、CKのチャンスにイ・グァンソンが相手の頭の上からヘディングシュートを叩きつける力技のゴールで同点。さらに60分には城後寿が送ったロングフィードに反応した武田英二郎が、最終ラインの裏に飛び出して頭で合わせて逆転に成功する。一気にボルテージが上がるレベルファイブスタジアム。今シーズン、後半に強さを見せる福岡が、このまま勝利に向かって試合を支配するかに思えた。
だが、岡山との差が表れたのは、むしろ1点をリードしてからの戦い方だった。勝点3を狙う影山監督は、三村真に代えて染矢一樹をピッチに送り出すと、「練習でもめったにやったことがない」という4−2−3−1の布陣に変更。両サイドバックを高い位置に出して勝負に出た。これに福岡は対応できない。「リードしてから何故か負けているような試合展開になった」とは城後の言葉。逆転した後に足が止まっていく福岡に対し、一度止まったかに見えた岡山の足が再び動き出す。互いに疲労の色が濃く、あちこちに大きなスペースがある戦いでは、福岡がゴールに迫るシーンもあった。単純な運動量の比較なら、福岡が岡山に劣っていたわけでもない。GK神山竜一の好セーブを始め、ピンチで体を張ろうとする姿勢も見えた。しかし、ここぞという勝負所で福岡は走り負け、集中力に欠けた。
65分の片山の同点ゴール、そして84分の押谷祐樹の決勝ゴールは、いずれも素晴らしいものだったが、その裏側には福岡のルーズな守備がある。もちろん、戦術的な問題や、技術的な問題もあっただろう。しかし、それ以前に「走る」「局面の勝負で勝つ」というサッカーの原点とも言えるべきところで後手を踏んでは勝負には勝てない。2−3となってからは、イ・グァンソンを前線に上げてパワープレーを仕掛けたが、疲れ切った福岡は著しく精度に欠け、チャンスを作ることなく試合終了のホイッスルを聞いた。
しかし、下を向いている時間はない。勝負の世界に身を置く者にとっては、敗れたことよりも、敗れた後に何ができるかが常に問われる。しかも、この後も強豪との戦いが続く。同じようなシチュエーションから負け続けて下位に沈んだ昨シーズンの二の舞は演じるわけにはいかない。そして、待ったなしの状況を乗り越えて成長してきたのが今シーズンの福岡だ。次節のアウェイ京都戦(7/26・土・19:00〜)は、福岡の真価が問われる試合になる。
以上
2014.07.21 Reported by 中倉一志
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