「どっちに転んでもおかしくない試合だった」と試合後の会見で松本山の反町康治監督が話したように、互いに中盤でガツガツとぶつかり合う、見ごたえのあるミラーゲームだった。
開始早々の6分、長崎は新加入したU-23韓国代表のFWイ・ヨンジェがパワーを生かした重戦車ドリブルで右サイドを突破すると、ペナルティエリアの奥埜博亮にクロスを合わせた。いきなり新加入選手が魅せてくれたことでホームスタジアムは沸き上がるも、松本も負けてはいない。その直後、ロングボールに対して裏へ抜け出した犬飼智也のヘディングシュートが長崎のゴールネットを揺らした。これはオフサイドとなったが、互いに持ち味を出し合う立ち上がりとなった。
前半25分を過ぎた頃から出足に勝る長崎がリズムを掴み、選手同士が近い距離でパス交換をしながら松本のゴールに迫るシーンが増える。ただし、松本のGK 村山智彦が「ミーティングでも長崎はクロスが多いという話をしたので、そういう部分では出られるボールには積極的に出ようとしていました。ただそういうボールはあまりなかったです。サイドを崩されたけど助けられました」と言うように、長崎は2次攻撃、3次攻撃を重ねるもいつものようにクロスの質の低さによって攻めきることができない。
長崎の攻撃に耐える松本は前半のシュート0本に終わったが、サビアが常にDFラインの裏をうかがい、FKやロングスローのチャンス時には何度も高さのある選手目がけて長いボールを入れるなど、劣勢にありながらも怖さのある不気味な沈黙を保っていた。
試合後、松本の多くの選手が「前半を0で終えられたのが大きかった」と話すように、後半に入ると飛ばしに飛ばしていた長崎の選手の足が止まり出す。61分には奥埜が足をつって深井正樹に交代。深井が持ち前のがむしゃらプレーでピッチを縦横無尽に駆け回るも、選手間の距離が遠く連携で崩すことができない。すると73分、牙を潜めていた松本がセットプレーの流れから田中隼磨がクロスを入れ、上がっていた多々良敦斗がヘッドで合わせて先制点を決めた。前半押していた長崎だが、足が止まったところでDF陣を左右に振られてしまい、良いポジションで競られてしまった。
こうなると長崎は追いつくためにリスクを冒してでも攻めようとする。DFラインを高い位置まで上げてプレー。前半から盛んにDFラインの裏を狙っていた松本は80分、犬飼のパスに合わせて飛び出した船山貴之がGKとの1対1を技ありの右足ループ。値千金の追加点をあげた。
セットプレーとカウンター。2点とも松本山雅の得意の形での得点だった。長崎の高木琢也監督は試合後「警戒はしていましたが、結果として点を取られたということは浸透していなかったということなので、次の伝え方、やり方を考えなくてはいけません」とこの試合を振り返った上で、「ピッチでかっこつけることもやめて、気負うことも恥じらいも捨てて、とにかく相手からボールを奪う、相手の陣地に入る。原点の部分に立ち返る以外、これ以上良くなることはないと選手にも伝えた」とドレッシングルームでの話をしてくれた。3連敗で順位を15位に下げた長崎。今一度、チームは厳しい状況に入ったことを自覚する必要がありそうだ。
ただ、三原雅俊は下を向くことなく、「やっていることは悪くないと思うので、選手自身が弱気にならずに自信を持つことが大事だと思います」とメンタル面の重要性を指摘している。
一方、松本はこの勝利で順位が、(少し気が早すぎるが)自力昇格圏内の2位へと上昇。アウェイの大分戦(第12節)と同じような苦しい試合を耐え、決める選手が決め、何と言っても0で抑えた勝利は大きい。
最高の後半戦スタートを切ったと言えるだろう。反町監督は「これが今日だけじゃダメだ」と言うものの、しばらくこの勢いは止まることはなさそうだ。
以上
2014.07.21 Reported by 植木修平
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