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【J1:第15節 神戸 vs 鳥栖】レポート:サッカーに勝って勝負に負ける。神戸が再三の決定機を逃し、鳥栖の値千“金”弾に泣く(14.07.20)

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有利に進めながら結果的に敗れることを「相撲に勝って勝負に負ける」と表現することがある。今節の神戸に置き換えれば「サッカーに勝って勝負に負ける」と言ったところか。鳥栖より7本上回る18本のシュートを放ち、それ以外にも何度も相手ペナルティエリアへ侵入するような好機を作った。もちろん、ファインセーブを連発した鳥栖のGK林彰洋や、身体を投げ打ってシュートブロックを続けた鳥栖の守備を褒めるべきかも知れない。だが、神戸が18本のうち1本でも入れていれば…。そう思わせるゲーム内容だった。

前半の開始早々からゲームを支配したのは神戸だった。ボールホルダーを2〜3人で挟み込んでボールを奪い、連動したパス回しから小川慶治朗やマルキーニョスらへキラーパスを通していく。安達亮監督が「前半から非常にボールも人も動いていて、チャンスをたくさん作ることも出来た」と振り返るように、中断期間中に高めてきた攻守の連動性を思うようにピッチに描いた。
4分には、シンプリシオがインターセプトしたボールをマルキーニョスへ繋ぎ、森岡亮太のヒールキックを経て小川が決定的なチャンスを迎えた。8分過ぎには、チョン・ウヨンからの縦パスを受けたシンプリシオが、さらに縦パスを入れて小川が抜け出すシーンも。20分頃にはシンプリシオと右サイドバック高橋峻希とのパス交換からペドロ・ジュニオールへ渡り、ペドロのクロスをマルキーニョスがフリーでヘディングシュートする好機もあった。さらに前半アディショナルタイムにはセンターバック岩波拓也のパスを受けた森岡がペドロとのワンツーで相手DFを交わして冷静にゴール右隅を狙ったが、GK林の片手1本のウルトラセーブに拒まれてもいる。
約3カ月ぶりにシンプリシオがリーグ戦に復帰したことで、攻撃のバリエーションは格段に増えた。だが、結局はどれも決めきれず、前半を0−0で折り返す。結果論で言えば、このスコアレスが神戸を精神的に追いつめたのかもしれない。

後半も開始直後から神戸がチャンスを作り続けた。ただ、鳥栖が53分頃に藤田直之、金民友、安田理大がワンタッチパスをつないで攻め上がるシーンを演出すると、ここから徐々に神戸のプレッシングを外す術をつかんだのか、鳥栖に攻撃のリズムが生まれ始める。そして61分に試合が動いた。

鳥栖の岡本知剛が浮き球を前線の金民友へ蹴り込むと、そのボールはプレッシングを掛けにきた神戸の茂木弘人と増川隆洋の間をすり抜けていく。そのボールにいち早く反応した金民友が、神戸のGK山本海人の動きを冷静に見てゴールへ押し込んだ。劣勢だった鳥栖にとっては、まさに金民友による値千“金”の先制点だった。
その後もボールを保持しながら攻め続ける神戸、守ってカウンターを仕掛ける鳥栖という展開が続いたが、試合は0−1のまま終了。神戸は終盤に田代有三を投入し、増川とのツインタワーでゴールをこじ開けに行ったが、最後までそれが実ることはなかった。

神戸のゲーム内容を見る限り、1週間前に関西学院大学に敗れた天皇杯の“後遺症”は感じられなかった。だが、最後の最後で決めきれなかったことを考えると、無意識のうちに影響があったのかもしれない。安達監督は記者会見でこう振り返っている。
「決定機に関してですが、先週の天皇杯でそういう思いもあり、余計に決めなければいけないというのが前半はあって…。ハーフタイムに、もう少しリラックスしてシュートを打ったほうがいいと伝えたくらい。決定機があるがゆえに、決めてやろうという気持ちが強く、肩に力が入っていたと思います。ちょっと天皇杯に負けたことを引きずっているというか、何とかしなければという気持ちが先走っていたような気はします」
だが、マルキーニョスはこう言う。「今、得点王を争っている選手が神戸には2人(ペドロ・ジュニオール、マルキーニョス)もいる。それだけの得点率は持っていると思う。サッカーでは30本打っても入らないときもありますから、そこ(決定力)を問題視する必要はないと思う」。シュートは水ものとよく言われる。あまり考え過ぎず、次節の横浜FM戦(7/23@ニッパ球)に気持ちを切り換えることが重要だと言えそうだ。

一方の鳥栖は、尹晶煥監督が「皆さんおわかりだと思うけれど、非常に難しいゲームだった。たくさんの問題点も出てきた」と言うように内容が良かったわけではない。確かに、ロングフィードを前線の豊田陽平が競り、セカンドボールを拾う形で攻め込んだ時間帯はあった。リーグ戦再開初戦でのアウェイゲームという状況を考えればやむを得ない部分もあるが、これからタイトル争いを演じようとしているチームとしては、やはりもの足りなさはあったと言える。
とはいえ、豊田が「3連戦は上位チームとの対戦ばかりですし、1つも落とせない。自分たちは上を目指していますから、その上で今日は重要な勝点3だったと全員が感じていると思います」と言うように、川崎F戦(7/23@ベアスタ)とC大阪戦(7/27@金鳥スタ)を控える鳥栖にとっては価値ある勝点3と捉えるほうがベターかもしれない。

強い者が勝つのではなく、勝った者が強い。勝負の世界ではよく使われるフレーズだが、苦戦しながらも天皇杯3回戦へ駒を進め、今節も勝点を積み上げた鳥栖にはこの言葉が良く似合う。
神戸の岩波拓也は試合後にこう話している。「前半から攻め込めたし、いい攻撃の形はできたけれど、結局、あの一発を決められて試合は負けた。まだまだ足りないのかなと思います。そういう意味では鳥栖のほうが上なのかなとも思います」

以上

2014.07.20 Reported by 白井邦彦
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