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【J1:第15節 大宮 vs 広島】レポート:ムルジャ2ゴール鮮烈デビュー! 大宮、前半0-3から広島に追いつく(14.07.20)

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大宮・大熊清監督は試合後の会見で、安堵の表情を浮かべつつも、「(前半と後半で)まったく別のチームになったというか」と、苦笑しながら試合を振り返った。良いところがまるでなかった前半と、良いところばかりが出た後半。自ら布陣変更と選手交代を決断しながら、その効果のあまりの極端さに、指揮官自身がどう評価したものか戸惑っているように見えた。一方の広島・森保一監督は「これもすべて現実」と唇を噛んだ。だれも予想できなかった同点劇は同時に、2ゴールを挙げてその主役となったムルジャという名前を、鮮烈に日本のサッカーファンの間に刻み込んだ。

前半の大宮はプレスがまったく連動せず、かといって引いて守りを固めるでもなく、「中途半端というか、ポジションの間を取られて」(渡部大輔)、立ち上がりから広島に主導権を握られた。いきなり2分に高萩洋次郎のスルーパスから抜け出した佐藤寿人にシュートを許すと、3分に大宮は攻撃にかかった場面で家長昭博が塩谷司に吹っ飛ばされてボールを失い、がら空きの左サイドを使われて失点。これで三浦知良のJ1通算ゴール数139に並んだ佐藤は、チームメイトとともに喜びのカズダンスを披露した。

先制すると引いて守りを固めてくるのが広島のパターンだが、この日はなおも前からの圧力を緩めない。大宮はビルドアップができず、後ろからのロングボールばかりになり、攻撃の時間をほとんど作れなかった。守備では前の選手は前から取りに行きたがるが、後ろの選手は連動できず、中途半端にラインを上げている。そんな中で大宮の左サイドは、攻撃で相手の裏を取ることを要求されている富山貴光が守備で戻りきれず、「数的不利の状況ができていて、そこからクロスがどんどん上がってきた」(渡部)。22分、25分と、同じような形で清水航平のクロスから、佐藤、石原直樹を最終ラインがつかまえられずに失点。2年連続リーグ王者に対し、前半なかばで3点のリードを許してしまった。しかも広島は、先制すれば得意のカウンターで脅威を与えつつ、5-4-1の強固な守備ブロックで逃げ切る勝ちパターンを持っている。状況は絶望的だった。

しかし後半開始、大宮が富山に代えてムルジャを投入し、同時に3バックにシステムを変更すると、状況が一変する。「ハーフタイムに、守備でもっと人に対して行くように話した」(渡邉大剛)大宮は、相手と同じ陣形を取り、「マークがはっきりした」(菊地光将)ことで、広島を完全にハメ込んだ。「開き直って、あれだけ行ったら、広島も回せない」(和田拓也)。前線から連動して人を消しに行ったことで、前半とは逆に広島がロングボール頼みになり、簡単に攻撃権を大宮に渡すようになった。

そして大宮の前線では、ズラタン、ムルジャ、家長の3トップが広島の脅威となった。ムルジャは最初のプレーで千葉和彦と森崎和幸に挟まれながらボールをキープして味方に落とすと、一気に味方の信頼をつかんだ。「ムルジャのところで前に起点ができ、彼が引っ張ることでスペースができたり、相手のラインが下がった。下がることによって中盤が持てた」(大熊監督)、その好循環で大宮の時間が増えていく。ムルジャ、ズラタンにボールが収まり、広島の最終ラインがこの2人に引きつけられてギャップができ、家長がフリーで裏に飛び出した。
標的になったのは、広島の右サイド。52分、家長が清水の裏に飛び出し、ペナルティエリア内左深くに侵入したズラタンに送ると、ズラタンが3人に囲まれながらも反転し、右足でゴールにねじ込む。54分、またしても家長が清水の裏に抜け出し、フォローに上がっていた高橋祥平に戻すと、ズラタンの頭を越えたクロスを待ち構えていたムルジャが頭で決め、1点差に追いつめる。
大宮ゴール裏のボルテージが上昇し、広島は完全に浮き足立った。そして72分、高橋の縦パスをムルジャがペナルティエリア内で受ける。ムルジャの背後には塩谷がピッタリついていたが、軽く左前方にボールを押し出して距離を空けると、振り向きざまに右足を振り抜き、ゴール右隅を射抜く。ついに同点に追いついた。信じられないといった、広島守備陣の表情。そして時間は、まだ20分近く残っている。

しかし広島にも意地があったし、運もあった。73分に清水のミドルシュートが枠を襲う。江角浩司のファインセーブに防がれたが、大宮を脅かすと、少しずつペースを取り戻し始める。そして大宮が橋本晃司を下げてカルリーニョスを投入したが、この交代の意図が選手たちに上手く伝わっていなかったのは確かだ。結果、「彼(カルリーニョス)が引くことによって、ムルジャとズラタンも引いてしまった」(大熊監督)ため、再び広島が大宮ゴールに迫るシーンが出てきた。しかし大宮の守備陣もしっかり最後のところで体を張る。終盤は互いにカウンターの応酬を続けたが、決めきれず、計6ゴールの乱戦は痛み分けで幕を閉じた。

広島の石原は、「自分たちが後半、もう1点を取りにいくのか(どうかが曖昧だった)」と、後半の入り方を悔やんだ。4日前の横浜FM戦を、後半に先制点を上げながら「勝ちパターン」(佐藤)を完遂できずに逆転負けし、この試合では3点差を追いつかれて勝点2を失った。受け身になったときの意外なまでの脆さは、昨年までの王者にはなかったものだ。この試合の教訓をどう生かせるか。首位との勝点差は9に開いたが、まだ3連覇の望みはある。
大宮は、大熊監督の会見での表情と同様に複雑だ。勝ったような騒ぎだが、得られた勝点は1に過ぎず、順位も上がってはいない。3得点は喜ぶべきだが、3失点とその内容は、とても結果オーライとはいかない。何より、中断期間にずっと取り組んできた、4-4-2のブロックを作って前から連動していく守備がまったく機能せず、相手陣形に合わせてのマンマーク守備がハマって結果が出たこと。つまり、立て直しが中断期間の戦術的な積み上げによるものではなかったこと、追いついたのはムルジャという7月に加入した個人の力が大きかったことが、どうにも複雑な気持ちにさせる。ただその一方で、救世主誕生の予感を、単純に喜びたい気持ちもある。最低限の勝点と、後半戦を戦う希望を残す、リーグ再開初戦だった。

以上

2014.07.20 Reported by 芥川和久
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