「前期の一番最初のゲームは湘南に負けちゃったから、今度はホームだし、なんとしてでも結果を出していきたい」。石崎信弘監督の言葉から、後半戦初戦となるこの一戦に懸ける意気込みが伝わってくる。加入から1ヶ月を過ぎたばかりのGK山岸範宏も「いいスタートを切らないと上に行けない。単純に後半戦21分の1ではなく、すごく重要な意味を持った1試合」と位置づける。山形は連勝がないまま前半戦を終えたが、守備組織の機能を高めながら連敗を喫することがなかったため、前節・東京V戦の勝利で今季初の一桁順位に到達。さらに勝点1差のプレーオフ圏内、その先、勝点12差の自動昇格圏内も視野に入れている。
天皇杯2回戦・熊本戦では東京V戦から先発メンバー5人を入れ替えたなかで1-0と勝利。ここまで出場機会が限られた選手たちが新たな自信を手にしたことでチーム全体のボトムアップにつながり、競争も激しくなっている。天皇杯2回戦で山田拓巳が負傷交代したことで前節からメンバー変わる可能性もあるが、このタイミングで結果を出し今季初のリーグ戦連勝が達成できれば、結果と内容が相互作用する上昇気流に乗る可能性はおおいにある。
得点数だけを見れば22得点はリーグ14位、シュート数173もリーグ最少と攻撃面での迫力不足は否めない。しかし山形とは対照的に、北九州は第10節の勝利で6位に入って以降、プレーオフ圏内を維持してきた。前半戦を終えた時点の勝点は山形より2つ多い33。2年目の指揮を執る柱谷幸一監督の下で攻守のメリハリをつけた戦術理解が進み、勝った10勝のうち8勝が1点差と競った試合をものにしてきた。前々節・湘南戦では0-2、前節・愛媛戦では0-3と無得点・複数失点の試合が続いたが、アウェイで東京Vと対戦した天皇杯2回戦では終盤にコーナーキックで追いつかれた直後に突き放し、原一樹の得点で2-1と勝利して3回戦に駒を進めている。
攻撃では原や池元友樹の2トップの動き出しに合わせてパスを送るのがファーストチョイス。そこで収まれば小手川宏基などサイドハーフが絡み、3人目が飛び出し……とフィニッシュに近づくことができる。トップに当てることが難しい場合はフリーの選手に預け、ボールを動かしながら縦パスのタイミングを計るが、相手に高い位置からプレッシャーをかけられると、そのつなぎの部分でミスが発生するシーンが多い。ボールロストが増え、相手のプレッシャーを強く意識する状況に置かれると、高い位置で起点をつくれず攻撃の機会は制限される。よりシュート数を増やし、常に複数得点できるチームになるためには守備の際に高い位置からプレッシャーをかけたいところだが、「前からかかった時に、外される回数がけっこう多い」ため、「GK含めて全員がコンパクトにしていくのが、今の段階では大事かなと思います」と、天皇杯2回戦を終えた柱谷監督は現実的な対応にならざるを得ない現状も明かしている。攻撃のパワーアップのために、堅調な守備をいかに拡張できるか。それこそが後半戦の大きなテーマのひとつとなりそうだ。
自陣でブロックを敷く守備に安定感を見せる山形は、前からボールを取りに行くのが本来めざしているスタイル。と同時に、それこそが最大の北九州攻略法となる。「押し込めれば僕ら自身もリズム出てくるし、自分のタイミングで配球できるし、受けれる。守備にばかり追われてしまうとリズムは崩れるし、相手のいいようにされると前に出ていけなくなるから、そこは潰して自分たちのサッカーができればいいと思う」と話すのは當間建文。敵陣で主導権を握ることができれば、宮阪政樹、石川竜也をキッカーとするセットプレーの機会も必然的に増え、さらに優位な舞台が整うことになる。
ただし、ハイプレッシャーの態勢に入ったらボールを奪いきり、シュートで終わるところまでやりきりたい。今でも散見されるピンチ直結の場面は、相手に背後に走られバックラインを下げて対応したときに、ボールホルダーへのプレッシャーがかかっていない状態。中途半端に前がかれば間延びした状態となり、セカンドボール争いでも後手を踏みやすい。前田和哉や風間宏希などのフィードのいい選手は確実に抑えたいが、前に行くかステイするかの判断をチームの共通認識として90分間持ち続けなければならない。そのうえで、攻撃で狙いたいのはカウンターだ。フィールドプレーヤー全員が自陣に戻る北九州の4-4-2のブロックを破るのは容易なことではない。ブロックが整う前に攻めきるのが理想で、切り換えの早さで相手を上回ることが必須となる。
本城で行われた前回対戦は、前半終了間際に中島裕希のゴールで先制した山形がそのまま逃げ切り1-0。山形は攻め手が見つからない後半だったが、守りきったことで勝点3を手にしている。守備をベースにするチーム同士の対戦。今節も先制点を挙げた側が主導権を握る。
以上
2014.07.19 Reported by 佐藤円
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