長いリーグ戦の折り返し。後半戦最初の試合となるこの２２節では、現在勝点３０で９位につける札幌が、同じく勝点３０ながらも得失点差で１２位となっている大分を札幌ドームで迎え撃つ。ともにJ1昇格プレーオフ出場圏を得られる６位との勝点差は２。どちらも上位にさらに肉薄したいところである。

札幌の直近試合は今月５日に敵地で戦った前節の長崎戦。前半立ち上がりに相手のミスをついて高い位置でボールを奪うと、そこから素早くパスをつないで砂川誠が冷静にゲット。その後は粘り強く相手の攻撃を跳ね返して、１−０のスコアで勝利している。

注目点としてはやはり、この勝利によって今シーズン初の３連勝を果たした部分だろう。Ｊ１昇格を至上命題としてシーズンインをしながらも、前半戦はなかなか調子を上げることができずにいた。厳しい言い方をすれば、低迷してしまっていた。それがここにきてチームは粘り強さを身に着け、遅ればせながらも勢いに乗りだしたのである。「ここにきて結果を出せるようになってきた部分は自信にしてもいい。そう選手にも話をした」と財前恵一監督も口にしている。

苦戦を続けながらも上位が見える順位で後半戦に折り返すことができた要因は、間違いなく守備にある。攻撃的なスタイルを標榜し、アグレッシブにパスをつなぐプレーを志向しながらもなかなか形にできずにいた前半戦だったが、１試合平均１失点と、なんとか踏ん張ってきたことが支えとなったはず。「守備陣がかなり計算できるようになったので、後半戦は攻撃面の肉付けに力を入れることができる」とも指揮官。この後半戦初戦も白星で飾り、４連勝でさらに勢いに乗りたいところだ。

一方、７月の北海道に乗り込む大分の直近試合は、１３日の大分銀行ドームでの天皇杯２回戦。ＪＦＬのＶ大分との一戦である。高松大樹、坂井大将の得点で前半のうちに２点を先行しながらも、前半終了間際に１点差に詰め寄られると、後半は格下の相手を攻めあぐねる展開に。しかし、最終的には力の差を見せ、しっかりと３回戦進出を決めている。

しかしながら指揮官は手厳しい。
「プロの世界でやっているのに違いを出せた選手はいますが、同等、もしくはそれより劣っているんじゃないという選手もいました。この点差は妥当な結果だったと思います」
そうやって厳しい言葉で振り返った田坂和昭監督。結果がすべてのトーナメント戦ではあるが、勝ったからといっても少しも満足はしない。そのうえ、相手がＪクラブではなかったこともあり、よりいっそう手厳しくなったのだろう。

とはいえ、ポジティブな要素も間違いなくある。リーグ戦に目を向ければ、現在２連敗中で４戦未勝利。しかもその４試合での失点が計１２もあったことを考えると、相手が格下だったとはいえ、しっかり逃げ切れた部分は前向きに捉えてもいいはずだ。また、この試合ではU-18所属の坂井が公式戦デビューを果たし、しかも得点も挙げている。これには指揮官も「彼は（トレーニングメンバーとして帯同した）ワールドカップでもの凄い財産を得てきたし、もう１、２段うえのレベルにいって欲しい」と１７歳の逸材に期待を込める。チームとしても若手の台頭を刺激に、いい形で後半戦に入りたいところだ。

さて、そんな両チームが対戦するこの試合の焦点だが、やはり移籍ウインドーが開いての初戦ということで、新たに加わった戦力がデビューする部分になるだろう。なんと言っても札幌には元日本代表の小野伸二が加入しているのである。

６月上旬からチームに合流している小野は「チームメイトの特徴も把握できたし、自分のプレーも十分に理解してもらえているはず」とチームへのフィットに自信を見せる。そして財前監督も「誰とでも合わせられる選手。コンディション的にも問題ない」と太鼓判を押す。欧州のトップリーグでも活躍した天才プレーヤーが、Ｊ２の舞台でどれだけその力を見せつけてくれるのか、大きな注目が集まるところだろう。

そして大分のほうも大宮からラドンチッチが加わっている。こちらはまだ加入まもないが、身長１９３センチの大型ストライカーは、連係に多少の不備があってもシュートを叩き込めるパワーを持っている。

小野とラドンチッチ。まったくタイプの異なる２人アタッカーだが、どちらも強烈な個の力を持っている。期待の新戦力同士のバトルもまた、目が離せない。

以上

2014.07.19 Reported by 斉藤宏則