「監督もコーチも情熱を持っているから、チームがどんどんよくなっている」。柱谷哲二監督は群馬の現状をそう評する。天皇杯2回戦で栃木にPK勝ちをおさめたのをはじめ、リーグ戦では直近5試合で2勝1分2敗と調子を上げており、前節湘南戦では首位を走るチームをあと一歩まで追い込んでみせた。試合の状況や対戦相手によってシステムを変更できる柔軟性を持ち、さらに「日本に馴染んできた」(柱谷監督)FWダニエル・ロビーニョというストライカーの能力をチーム全体で生かすことができている。就任2年目の秋葉忠宏監督の目指すサッカーに近づきつつあることを監督も選手も感じていることだろう。水戸から09年以来の勝利を挙げようと自信を胸にKsスタに乗り込んでくるに違いない。
水戸も今節に向けて自信をみなぎらせている。リーグ前半戦はけが人の多さに苦しめられたが、6月下旬から続々と復帰。天皇杯2回戦福岡戦では小谷野顕治や細川淳矢といった復帰してきたばかりの選手が活躍を見せて勝利を挙げたことはチームが変わりつつあることを証明した。さらに小澤司のボランチ起用というオプションも手にし、さまざまな形で個の特徴を生かすことができるようになっており、それがチームの力になっている。メンバーのやりくりでいっぱいいっぱいだった前半戦とはまったく異なる状況で後半戦に挑むことができる。「チーム状態はいい」と柱谷監督はチーム作りに対する手ごたえを口にして挑む一戦である。
2桁順位の両チームとも後半戦の巻き返しに向けて強く意気込んでいるからこそ、初戦のこの一戦の持つ意義は大きい。しかも、ダービーである。敗れれば、「自信」を打ち砕かれる可能性もあるだけに、今後を左右する重要な一戦と両チームともとらえているに違いない。
調子を上げる両チームの激突。おそらく試合は紙一重の展開となることだろう。そうしたゲームを勝ちきれなかったのが前半戦の水戸だ。互角の展開の試合の流れを引き寄せることができず、勝負強さを欠いて、勝利を逃してきた。「内容は悪くなかったけど、よくもなかった。だから、普通の成績に終わってしまった」と柱谷監督は振り返る。過去を断ち切らない限り、上位に行くことはできない。今節は後半戦に向けての試金石となる。
勝負強さを身につけるため、今週意識して取り組んできたのが「コミュニケーション」である。選手層が厚くなったことによって、今後試合ごとにメンバーが変わり、また、様々なシステムが用いられることが予想される。今節も福岡戦とはまた異なったメンバーで挑むこととなる。誰が出てもそれぞれの特徴を生かすためにも今まで以上のコミュニケーションが必要となるのだ。「コミュニケーションを取ることで解決できる部分はたくさんある」と田中雄大は語る。
また、ピッチの中で必要以上に声を掛け合って集中力を高めることによって、リーグ前半戦で見せたような自分たちで隙を作って失点するという場面は減るはずだ。今節、群馬に押し込まれる場面もあることだろう。そうした局面でも慌てることなく、チーム全員が声を掛け合って同じ意思を持ってしのぎきることで勝利は近づくこととなる。隙を見せず、隙を突く。そんなしたたかさを見せて、ダービーを制すことが今後に向けての希望となる。
群馬を圧倒することが理想だが、現実はそんなに簡単にいくわけがない。「勝てる試合だったのにになぁ」と群馬の関係者に帰路モヤモヤした思いをさせるのも、それもまた理想である。5点差だろうと1点差だろうと、とにかく勝つことがすべて。「どんな試合展開でも勝つことが大事。結果重視で臨みたい」と吉田眞紀人は力を込める。過去から脱し、新たな姿を見せることができるか。注目の一戦である。
以上
2014.07.19 Reported by 佐藤拓也
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