ぶっつけ本番だった。
負傷離脱した選手は通常、数試合のトレーニングマッチを積み重ね、その後に実戦復帰するのが栃木では慣例となっている。だが、背番号10の場合はその過程を踏まずに、いきなり公式戦の舞台に立つことになった。
杉本真がホーム“グリスタ”のピッチに立ったのは、天皇杯2回戦の群馬戦、65分からだった。その時点で0−0だったが、阪倉裕二監督は90分で決着を付けることしか考えておらず、残り25分を杉本に与えた。しかし、試合は後半最後の最後まで動かず、結果的に延長戦の前後半を含めて55分間、杉本はピッチでプレーしたことになる。
「100%じゃない」状態で戻ったことで、「正直、めちゃくちゃきつかった」と杉本は振り返るが、その表情は充実感に満ち満ちていた。予想を上回る時間でプレーを続けたが、「ケガの部分の違和感も痛みもなく、すんなり今週の練習に入れた。ストレスは感じていない。非常にいい状態にある」と、懸念されたリバウンドもなく、練習でもフルメニューをこなした。それだけでは飽き足らず、恒例の居残り練習まで行っていた。本人が言うように、コンディションは悪くない。「まだまだ本調子じゃない。体力もフィーリングも、取り戻すのに時間が掛かると思う。でも、日々のトレーニングを死にもの狂いでやれば、体は正直だから勝手に動くようになるはず」と、指揮官も近々、“完全体”の杉本が目にできると見ている。その日は、そう遠くないだろう。
実戦に戻ってきたものの、そこに至るまでの道程は生半可なものではなかった。生え抜きとして今季から10番を託され、開幕戦の千葉戦で好パフォーマンスを披露しながら、3月18日のトレーニング中に左第5中足骨骨折のケガを負う。サッカー人生初となる長期離脱だっただけに、「ケガをしたときはショックだった」。
しかし、「精神的に落ち込むことはなかった。ダメなモノはダメと、現実を受け止めた。モチベーションを落とすことなく、ヘコまずに前向きに考えた」。このポジティブな姿勢が奏功し、順調にケガは回復。トレーナーやチームメイトの支えもあり、復帰目安の3カ月に少し遅れたもののピッチに舞い戻ることができたのだ。
「みんなに感謝したい」という思いを抱いて臨んだ群馬戦では、目に見える結果こそ残せなかったが、前線でアクセントとなり3度のチャンスを演出。4−2−3−1のトップ下を争う重松健太郎、中美慶哉とは異なる独自の色を出し、まずまずの再スタートを切れた。相手のギャップでボールを受けるレシーバーとしても、ゴール前での神出鬼没な動きでフィニッシャーとしての役割も担える頼もしい選手が、過酷な夏本番を前に帰ってきた。
夏場に弱い栃木。10番の覚悟と責任を背負い、そのレッテルを剥がす。
以上
2014.07.18 Reported by 大塚秀毅
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