ホームでのJ1再開を心待ちにしていた清水が対戦相手に迎えるのは、7月15日に一足先に再開し、Ｃ大阪に競り勝って3位に浮上した川崎Ｆ。リーグ戦では5試合勝利がない10位の清水にとっては、後半の巻き返しに向けて何としても良いリスタートを切りたい一戦だ。

ワールドカップ・ブラジル大会による中断期間に、2週間のオフで疲労を抜き、そこから5週間のハードなトレーニングでコンディションを作り直してきた清水。その中で、持ち前の組織力に磨きをかけるだけでなく、「フィジカル面も含めて攻守ともに個の力を高めるという部分にも力を入れてきた」（アフシン ゴトビ監督）。タレント揃いの川崎Ｆとの対戦は、その成果の見せどころでもある。
またシステム的には、中盤を1ボランチ＋2トップ下という形でキャンプから練習してきた。先週土曜日の天皇杯2回戦（びわこ成蹊スポーツ大戦）では、前半でその形を試したがうまく機能せず、後半は従来の2ボランチに戻して流れが良くなった。そのため、今週は2ボランチの形でも練習しており、今回どんなシステムで臨むかというのも注目点のひとつとなる。

一方、川崎Ｆのほうは、土曜日の天皇杯はメンバーを大幅に入れ替えた中でY.S.C.C.横浜にかなり苦しめられたが、後半アディショナルタイムに同点に追いついて、延長戦の末に辛くも勝利。そして今週火曜日には延期になっていた第12節を行ない、そちらは現状のベストメンバーでＣ大阪に逆転勝ちし、順位を3位に上げた。この試合では前半はなかなか自分たちのサッカーができず、後半にそれを取り戻して勝ち切ったという意味では、清水と似た状況。つまり、第2の開幕戦とも言える再開初戦の難しさはすでに経験済みで、今回はどちらもより良い状態で試合に入れるだろう。
ただ、川崎Ｆのほうは、主力にケガ人が多いのが苦しいところ。GK西部洋平、DF井川祐輔、MF山本真希の他、レナトもここ2試合欠場している。それでも代わりに出場した選手たちがしっかりと自分の仕事をしており、中村憲剛、大久保嘉人といったらベテランがチームを引き締め、小林悠も相変わらずの動きを見せているのは、層の厚さを表わしている。

もちろん、川崎Ｆらしいパス回しも健在で、パス数、パス成功率の両方でリーグ1位。その中で中村からの決定的な裏へのパスが数多く出て、ゴール数でも首位に立っている。つまり、Jリーグで今もっとも攻撃力のあるチームと言える。それに清水がどう対応するかが、まずこの試合の大きな見どころになる。

清水のほうも、できるだけ自分たちがボールを支配しながら戦いたいチームだが、川崎Ｆが相手では、なかなかそうもいかないだろう。ただ、「ポゼッションするだけでなく、守備のオーガナイズによって試合をコントロールすることもできる」とゴトビ監督も考えている。そのため、「選手同士の距離感を大事にして、縦パスを入れられてもすぐにプレスに行けるようにしたい。そうして中盤でボールを奪って、速く攻めるという形も大事になると思います」（六平光成）という狙いを実践できるかどうかがカギとなるだろう。
ただ、そう簡単にはいかないのが川崎Ｆの強みでもある。とくに中村からの配球は、Jリーグの中ではひと味もふた味も違う。「中村憲剛さんのパスはやっぱり特別だし、それに対して大久保さんとか小林悠が良いタイミングで飛び出してくるし、技術もあるので、そこは気をつけないといけない。だから、ラインの上げ下げとか、憲剛さんとかパスの供給元にタイトなプレッシャーをかけていくことが大事だと思います」とセンターバックの平岡康裕も警戒感を強めている。

それでも、90分の中では中村らにスキを与えてしまう場面も必ず出てくるだろうが、そこで重要になるのが、身体を張ってピンチを止める個の力。もちろん攻撃でも、精度の高いラストパスを送る個の力、チャンスを決めきる個の力が重要であり、最終的にはそこが勝負の分かれ目になるだろう。
ゴトビ監督も「メンバー表だけで比べれば川崎Ｆのほうが上かもしれない」と言うが、チーム全体の団結力や個々の強い気持ち、そしてサポーターの後押しでその差を埋められるのがサッカーの良いところ。そこがアイスタの力の見せどころでもある。

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2014.07.18 Reported by 前島芳雄