長かった中断期間が空け、J1リーグが再開する。14節まで消化し、大宮は3勝4分7敗の勝点13で17位に沈んでいる。いくら『再スタート』とはいえ、白紙に戻ってのことではなく、大宮としてはスタートダッシュで遅れを取り戻さなければならない。幸い、リーグは混戦で、安全圏までは勝点3差であり、連勝すれば中位も見えてくる。ただ、この再開初戦に迎えるのが2年連続リーグ王者の広島。なかなか厳しい巡り合わせだ。
中断期間でのチームの進化について大宮・大熊清監督は「前線でスイッチを入れて連動する前向きな守備と、攻撃では全体的に前への意識が強くなってきた」と語った。攻撃について補足すると、まず優先順位を相手DFラインの裏に置くことで、エース家長昭博も間でボールを受けやすくなる。「裏への脅威を散りばめつつ、ボールをつなぐ」(大熊監督)、それが大宮の後半戦の攻撃のテーマだ。
新スタイルに対応すべく、リーグ中断前とはスタメンには大きな変化が見られる。まず最終ラインでは右サイドバックの今井智基がセンターバックにコンバートされ、代わりにセンターバックの高橋祥平が左サイドバックに移動した。これによって、今井のスピードとフィジカルを武器に最終ラインを押し上げ、高橋のビルドアップ能力をサイドの高い位置で生かすことができる。またボランチコンビは、守備で激しくアプローチできる和田拓也と、展開力と正確なキックを買われて2列目からコンバートされた橋本晃司の組み合わせ。そしてFWが本職の富山貴光は、大熊監督から「岡崎慎司のように、相手が引いた中でも裏をねらったり、ゴール前に入ってくる」ことを期待され、左サイドハーフの定位置をつかみつつある。
そこへさらに、中断期間に二人の外国籍選手を獲得した。現役セルビア代表で、昨年度のセルビアリーグ得点王のムルジャは、187cmの長身ながらスピードがあり、裏へ抜ける上手さと高い決定力を併せ持つ。ズラタンがサイドに流れてのチャンスメークを得意とするのに対し、「常に半身になってゴールに向かっているストライカー」(大熊監督)タイプだけに、「まず裏をねらう」戦術にフィットしそうだ。また、元韓国代表でプレミアリーグでもプレーしたチョ ウォニは、『韓国のガットゥーゾ』と異名を取るハードワーカー。ボランチとして期待がかかるが、右サイドバックの経験も豊富で、今週のトレーニングでは主力組のサイドバックでもプレーした。それぞれコンディションもまだ十分でなく、日本のサッカーや気候への慣れも必要な段階だが、ゆっくり待っていられないチーム状況もある。試合展開によっては広島戦での途中投入も十分にありそうだ。
大宮は先週の天皇杯2回戦では、JFLの八戸を相手に3-1で勝利。高い位置でひっかけてのショートカウンター、相手の最終ラインの裏を狙う意識など、後半は攻撃面で中断期間に準備したことが出せていた反面、前半はプレスが連動せず簡単にサイドで低い位置まで押し込まれたり、ビルドアップできずにロングボールが多くなったりと、中断期間前からの課題も根深いものを感じさせた。当然、広島もそこを突いてくるはずだが、「J1が相手だと15分で3点くらいやられて、そのままという流れになるような内容」(橋本)と、大宮にとってもリーグに向けて良い教訓になったはずだ。
一方の広島は、火曜日にリーグ戦の延期分の横浜FM戦を終えて中3日のスケジュール。その疲労とともに、先制して「完全に勝ちパターン」(佐藤寿人)を終了間際に引っくり返された敗戦のショックも引きずっての試合となる。当然、この試合を大宮も参考にするだろうが、大宮はそのまま横浜FMのような戦い方はできない。5-4-1の形で引いてカウンターをねらう広島に対し、アウェイの横浜FMも4-5-1の形で引いて中を固めたが、「マリノスは中村俊輔もいて低い位置からでもつないでいけるけど、ウチはそうではない」(大熊監督)ため、引いて我慢の戦い方を選択すると、「我慢しっぱなしで後手を踏んでしまう」(大熊監督)ことになりかねない。かといって連動性もまだ発展途上のプレスで前から追えば、広島にいなされてピンチを招くリスクがある。大宮としては、最終ラインを押し上げて高い位置でコンパクトにブロックを作り、中央を固め、なるべく高い位置でボールを引っ掛けてカウンターを狙いたい。逆に広島は、押し込む展開になればより強みが発揮できる。コンディション不良から横浜FM戦を回避した青山敏弘の出来が鍵を握りそうだ。
大宮にとってはこの再開初戦で、「中断期間にやってきたことをしっかり出して」(渡邉大剛)、同時に勝点という結果もつかむ必要がある。さらに次節は過去一度も勝ったことのないアウェイ鹿島戦と続く。リーグ後半戦が残留争いとなるか、それともシーズン目標として掲げた『勝点53以上』に近付けるための戦いになるか。それがこの連戦をどう乗り切るかにかかっている。
以上
2014.07.18 Reported by 芥川和久
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