7月12日に行われた天皇杯2回戦、柏と仙台は対照的な結果になった。大金星を狙う下部ディビジョンのチームに対し、柏も仙台も苦戦を強いられたが、セットプレーを機に相手の守備をこじ開け、終わってみれば実力差を見せつけた柏に対し、仙台は終盤に2失点を許して奈良に逆転負けを喫する苦汁を味わった。
仙台にとっては不本意な結果であるが、天皇杯の敗戦によって柏が仙台に対する警戒を緩めることはない。大谷秀和は「天皇杯では負けたけど、それが一発勝負の難しさ。仙台には堅いイメージがあって、粘り強く戦いながら、前線に決め切れる選手がいる」と話し、増嶋竜也も「仙台には良い選手が揃っている。力のあるチームなのできっかけを掴んだら上位に来る」と、天皇杯の敗戦を一切参考にしていない様子だ。むしろ工藤壮人は、「プライドを傷つけられて、挽回のつもりで日立台に来る」と、より仙台に対し警戒を強めている。
仙台は、現在リーグ戦では12位に位置し、得点11失点20。この数字だけを見ると、昨季までの堅さに欠けると思いがちである。だが、それは序盤の出遅れが影響したためで、中断前のリーグ戦は4連勝と調子を上げ、さらにその間は完封3試合と本来の強さを取り戻した感がある。
大谷、増嶋が「堅いイメージ」と話すように、過去3年の柏と仙台の直接対決を振り返ってみると、リーグ戦の6試合は柏の1勝2敗3分。決着のついた3試合は全て1点差、引き分けは全てスコアレスドロー。まさに拮抗した勝負が繰り広げられている。
また、柏と仙台に共通していることは、中断期間に攻撃力アップを図り、トレーニングを積んできたという点だ。柏は3−5−2の新システムを天皇杯のファジアーノ岡山ネクスト戦でテストし、工藤壮人とレアンドロの2トップに3ボランチのうち2枚のMFが攻撃に絡むといった新たな攻撃の形を模索している。岡山ネクスト戦では、茨田陽生が2トップと絡んでゴール前に飛び出す形こそ見せたが、「まだ柔軟に対応するところまではいっていない」(大谷)というのが新システムの現況である。
対する仙台も、キャンプ中に進めてきた攻撃力向上の成果を天皇杯では発揮できず、「中盤で人数が多い中で縦パスを通すには、そのための動きがまだまだ足りない。ボールを回せてもどこかで縦パスが入らないと、攻撃のスイッチは入らない」(梁勇基)と、課題を露呈した。
しかし新たな取り組みが、しかも中断明けの初戦で、コンディションや試合勘なども影響した状態でそう簡単に機能するはずはないということは、選手たちも理解済みだと思う。重要なポイントは、天皇杯で浮かび上がった問題点や課題を、このリーグ再開までの1週間で、どこまで煮詰めることができているかだ。柏も仙台も、守備は強固である。だからこそ、お互いにその守備をこじ開けるため、この1週間で攻撃をより理想形へと近づけた方が、勝利を手繰り寄せる可能性が高まる。
今回の対戦も、過去の例に漏れず拮抗した勝負が予想される。そしてどちらが勝つにせよ、そのギリギリの戦いに決着がつくとしたら、また1点差のゲームになるではないだろうか。
柏は、前半戦は怪我明けで本調子ではなかったキム チャンス、4月から怪我で戦列を離れたハン グギョン、5月まではなかなか戦力になり切れなかった韓国代表2人が、ワールドカップを経て調子を上げ、一回り成長してチームに戻ってきたことは朗報だ。田中順也の抜けた穴は確かに小さくはない。いまだ新戦力獲得の話もない。しかし、ブラジルで得た経験を柏での戦いに還元してくれるキム チャンスとハン グギョンが、チーム力を大きくアップさせてくれることを期待している。
以上
2014.07.18 Reported by 鈴木潤
J’s GOALニュース
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