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【J1:第12節 C大阪 vs 川崎F】レポート:C大阪、川崎Fに逆転負けも、世界へ飛び出す「桜の4代目『8』番」柿谷とともに、新たな希望を見出す(14.07.16)

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柿谷曜一朗のスイス・バーゼルへの移籍前最後の試合となった、J1第12節、C大阪と川崎Fの一戦は、C大阪が1-2と逆転負けを喫し、若きエースの新たな門出を、勝利で飾ることはできなかった。それでも、マルコ ペッツァイオリ新監督のもとで挑んだ最初のリーグ戦で、アグレッシブな戦いを続けた桜色の戦士たちは、観衆を魅了した。また、83分から出場した柿谷も、ゴールこそなかったものの、満員札止めとなったキンチョウスタジアムにて試合終了まで奮闘。多くのサポーターに惜しまれつつ、世界の舞台へのチャレンジのために旅立っていった。

試合に関しては、ペッツァイオリ体制での約1カ月で、急ピッチに立て直しを図ってきているC大阪と、風間八宏監督体制で2012年シーズンから着実に積み上げを行ってきている川崎Fのサッカーとの、経験の差が出たものだった。

前半は、ホームのC大阪が中断期間中から取り組んできた、猛烈プレッシングをベースとしたサッカーが威力を発揮。川崎Fに対して、「わりと前からのプレッシャーがうまくはまっている場面も多かったので、狙っているサッカーができた」というのは、安藤淳。移籍加入後リーグ戦初先発となったこの16番が、突破口を開く。19分、楠神順平から始まった流れるような攻撃で、南野拓実の折り返しを安藤がダイレクトで右足で流し込んだ。C大阪での初得点を決めた29歳は、ゴール後一目散にベンチに向かい、柿谷らと喜びを分かち合った。

その後も、前半はC大阪が押し込む場面が多く、ドイツ代表を思わせるような「ゲーゲンプレス」も炸裂。楠神、南野、山口蛍、丸橋祐介らが自在に動き回った。また、安藤には2点目のチャンスも舞い込んできたが、川崎FのGK杉山力裕の好守の前に、決めきることができず。追加点を取れずにいると、流れは徐々にアウェイチームへ移っていく。

「この暑さなので、(C大阪が)後半絶対にばてると思っていたし、前半の30分過ぎくらいから最後まで行く手前までは、結構ボールが運べるようになっていた」というのは、中村憲剛。前半終了間際には、登里亨平の突破から、大久保嘉人がクロスバー直撃のシュートを放つなど、本領を発揮し始めた川崎Fは、ハーフタイムでの「自信を持ってボールを持つこと。出して動く、出して動くを繰り返していこう」という風間八宏監督の檄を受け、本来取り組むサッカーに立ち返り、反撃。起点となる中村、大島僚太のダブルボランチがボールを裁くシーンが見え始め、前線の小林悠、大久保が躍動し出すと、小林の飛び出しからPKを獲得。60分、これを大久保がきっちり決めて、試合を振り出しに戻した。

天皇杯2回戦の桑名戦で120分間を戦った影響もあってか、「コンパクトに保つのが難しい時間帯」(ペッツァイオリ監督)となったC大阪に対して、川崎Fはなおもその隙を見逃さなかった。76分、勝ち越しゴールを奪ったのは、金久保順。後半から出場していた18番は、大島の縦パスから、C大阪DFのリフレクションをうまく収めて、そこから左足を一閃。グラウンダーのミドルシュートが絶妙なコースに決まった。風間采配も見事に的中した川崎Fは、このままリードを守りきり、実に2006年シーズンの最終節以来、C大阪戦9試合ぶりに勝利。「何も変わらずに、いつもどおりやるかどうかがテーマだったので。後半にそれができたのはよかった」と風間監督も言うように、これまで取り組み続けているポゼッションサッカーの実行が、勝利を呼び込んだ。

一方のC大阪は、反撃に出ようとした矢先の78分、それまで攻撃の軸として奮闘していた南野が退場。これが誤算だった。ただ、10人となったなかでも、途中出場の長谷川アーリアジャスールが慣れない右サイドバックの位置から果敢な突破を見せれば、83分にはペッツァイオリ監督も「我々にはオフェンスの力が必要だったので、2人のオフェンシブな選手を入れた」というように、柿谷、永井龍を同時投入する思い切った采配を実行。最後まで攻撃的な姿勢を貫いた。結果的には新体制初戦を白星で飾れなかったが、「たくさんのゴールチャンスを作って、見ている人たちを魅了することもできていた。(中略)チームが戦い抜けたことは称賛に値すると思うし、我々はまだ成長曲線上にいる」と指揮官の志向するサッカーを、いきなり示せていたのも事実だ。川崎Fのように、自分たちの取り組むスタイルを、今後もぶれずに追求できるかが、低迷脱却の鍵を握るだろう。

試合後には、柿谷のお別れセレモニーも行われた。そのなかで、「正直、すごく悩んだ。自分から、この8番のユニフォームを脱ぐというのは、どうしてもしたくなかった」と、涙ながらに心境を吐露したクラブ生え抜きの『ジーニアス』。「サポーターの皆さんには、優勝してから出て行くと、あれほど言っていたのに、自分から出て行くことを選んでしまって、本当に申し訳ない。ただ、今より、もっともっと強くなって、この8番を、もっともっと似合う選手になって、帰ってきたいと思う」と述べた、森島寛晃氏から続くエースナンバー「8」を4代目として背負った男は、新たなチャレンジへと歩み始めた。C大阪に関わるすべての人たちに愛された柿谷の、さらなる成長を願ってやまない。彼の思いは、チームメイトに、サポーターに、しっかり受け継がれているはずだ。

以上

2014.07.16 Reported by 前田敏勝
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