「もしかしたら、残っているかもしれないな…」
自宅の風呂場で頭を洗っている真最中に、ふとそう思った。そして部屋に戻ると着替えもそこそこに、戸棚を開けてみる。もしかしたら引っ越しの際に捨ててしまったのかも? と一瞬だけ頭をよぎったが、以前使っていたデジカメが無事に奥から顔を出した。
そしてそこからSDカードを抜き出してパソコンに差し込んでみると、予感は的中。4年近くも前の写真が消去されずに残っていたのである。もともとアナログ気質なため、ハードディスクに移してまでデータを保存するということはほとんどしない。使い終わったものはだいたい消してしまう。しかし、もともと女々しい性格でもあるため、何となく消せずにいるデータもあったりして。今回ばかりはそれが奏功した格好だ。わずか2〜3枚だけ消去せずに残しておいたものの1つがこれだった。
2010年に、AFC U−19アジア選手権を観に中国・山東省のシ博という街に出掛けたときの写真である。日本代表チームのトレーニングウェアに身を包んだ古田寛幸選手の姿だ。実はこのときも膝を痛めていて、「なんとか準決勝には間に合わせますよ」と気丈に話してくれたのだが、結果的には全治数カ月の負傷であることが帰国後に判明する。
とまあ、ちょっとした昔話である。ワールドカップイヤーなのだから、4年前を思い出したって別におかしなことでもないはずだ。
7月13日に古田選手の讃岐への期限付き移籍が発表されたこともあって、筆者も風呂場でふと思い出したのだろう。ものすごく活躍してほしいと心から願っている。
若い選手がケガに苦しむ姿を見るのは、本当に心が痛くなる。でも、何度かケガがあったこの選手は、いつだって同じように取材に応じてくれた。本当はあるのだろうけど、感情の起伏はあまり見て取れなかった。すごく気持ちの強い選手だといつも思っていた。そしてきっとこれから大きな活躍をして、また代表チームのシャツを着るはずだとも思っている。なぜならば、この選手はメチャクチャうまいからだ。
ケガが何度かあったが、それも過去の話。完全移籍で旅立ってしまうわけではないのであまり長くは書かないが、誠実にサッカーと向き合っている選手には絶対にいい結果がついてくる。少なくとも筆者はそう思っている。
キーホルダーにいつもカギをたくさんつけていて、クラブハウスの玄関付近から“チャリチャリ”という金属音がすると、「あ、古田が帰宅するんだな」とすぐにわかる。そんな日々ともホンの少しの間だが、お別れだ。一時的だとわかっていても、やはり寂しいものだなあ、とあらためて。
以上
2014.07.14 Reported by 斉藤宏則
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