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【第94回天皇杯 2回戦 東京V vs 北九州】レポート:「結果」と「内容」。互いのこだわりが勝敗を分かつ。(14.07.14)

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「内容的には選手が非常にアグレッシブに躍動してくれた。結果はどうであれ、しっかりとした姿勢で選手は積み上げてきている。今日は、その積み重ねが非常にいい出方をしたと思います」(三浦泰年監督)
「負けて惜しいなんてことは全くない」(柱谷幸一監督)
両指揮官の試合後の記者会見でのコメントに、試合結果の全てが凝縮されていると言っていいだろう。

「内容」に手応えを掴んだのは東京Vだった。立ち上がりから、ほぼ90分間、常に優位に立ち、試合を進めた。中でも目立っていたのが南秀仁の存在だ。「最近、ボランチとFWの間が離れていて、攻撃が短調だったので、そこに入ってパスを出して、スムーズにいたりリズムが生まれるようにできればと思っていました」。トップ下に入り、天性の才能とも言える独特のテンポと卓越したテクニックから繰り出すパス出しで、澤井直人、安西幸輝、常盤聡ら攻撃選手を見事に操り、小気味よい攻撃を生み出した。さらに効いていたのがボランチ鈴木惇との関係だった。鈴木が攻撃で前に上がると、その空けたスペースを埋め、自らボールを受けて上がった鈴木を生かす、または他の攻撃陣へ球を配るなど、鈴木の長所である攻撃性も引き出していた。「今日は、特に(球を)もらう位置が低すぎるとか意識せず、ボランチのところでも自分がどんどん受けようと意識していました」(南)。自らに課した「MFとFWのつなぎ役」の役割を90分間見事に果たしたと言えよう。ただ、本人にとっては、もう1つ心がけていたFWとしての大事な仕事「フィニッシュ」を決めきれなかったことを大きく悔いた。「ここ3試合、シュートを打てていなかったので、強引にでも打っていこうと思っていた。2本打てたことはよかったけど、決めないと勝てない」。後半35分に入ったチームの1点が、セットプレーからのDF井林章のものだったことを挙げ、「決めてくれたのがDFの選手。攻撃の選手として責任を感じます」。チームを勝たせる選手となるべく、日頃のトレーニングで精度を磨いていくことを強く誓っていた。

また、守備も失点シーン以外は悪くなかったように思う。前線からの守備もはまり、ボランチまでの位置でほぼボールを奪うことができていた。攻撃に転じようと北九州がパスを出したところで、受け手に渡る瞬間に金鐘必、井林、ニウドがしっかりと体を当て、奪い返す場面が何度も見られた。また、セカンドボールへの対応も相手を優っていた。そして、一番は、東京Vが良い内容で試合を出来ている時の象徴ともいえる、最終ラインがセンターライン付近まで上がって展開する時間が非常に長かった。これにより、「みんなが勇気をもって『つなごう』という気持ちを持ち続けられたのが、上手く戦えた要因だったと思う」(南)攻撃にも好影響をもたらせた。

だが、勝敗は内容に比例しないことは、よくある。
圧倒的に主導権を握って戦っていたにもかかわらず、前半42分、与えてしまったFKのロングボールから、「コテ(小手川宏基)が一生懸命ヘディングしてくれた中で取れた」原一樹に先制弾を許した。後半35分に追いついたが、わずか3分後の同38分、「得点の半分は大生のあのプレーだったんじゃないかなと思います」と、柱谷監督も大絶賛した渡大生の縦へのドリブルから、再び原に決勝点を決められ、今年の天皇杯敗退が決まった。

「こういう内容で勝利することで自信につながる」(三浦監督)が、残念ながら敗れた以上、東京Vはこの試合からも真の意味での自信を手にすることはできなかった。それでも、プロ初スタメンの澤井の貢献、南を中心とした攻撃アイデアの増加など、収穫はいくつかあったことは間違いない。それが、再開されるリーグ戦後半戦に活かすことができるか。北九州との再戦はもちろん、週末から続く磐田、松本、京都という強豪との連戦に注目したい。

一方、「結果重視」の北九州は、見事に目的を果たすことに成功した。序盤から、東京Vの高いDFラインによって、全員が自陣に押し込められてプレーをする時間帯が少なくなかった。それにより、せっかくボールを奪っても、攻撃の起点は自陣からのスタートだった上、東京Vの激しいプレスから中盤でボールを失うことも多く、持ち前の風間宏希を中心としたスムーズなボール回しができなかった。前半は何度かサイドからチャンスを作る場面もあったが、クロスボールの多くは相手DFにクリアされ、決定機を生み出すには至らなかった。
それでも、「負けたらもう次はない。0か100だ」と腹を決め、自チームの選手の現時点での実力をドライに把握した末、「うちの選手はそんなに広いスペースでガンガン1対1をやって、攻撃も守備も優位に運べるタイプではないので、常に近い距離で攻撃も守備もやらなければいけない」と、引き気味での戦いを決断。引き気味ながらも、「必ずくる」と信じたカウンターのチャンスと、セットプレーから2点を奪い、見事に勝利を勝ち取った。トーナメントの戦い方としては、まさしく理想的だったと言えよう。
ただ、東京Vの決定力に救われた部分も、多少なりとはあったに違いない。次の対戦は、J1横浜F・マリノスである。「負けて惜しいというのはない。なんとかいいゲームをして、勝ちに行きたいと思います」(柱谷監督)。現在リーグ戦5位でJ1昇格プレーオフ進出圏内に位置するチームとして、J1がどのレベルにあるのかを身をもって経験できる素晴らしいチャンスとなる。「勝ちながら、チームが成長していくようにしていなければいけない」リーグ戦で勝利しながら力をつけ、3回戦では古豪に真っ向勝負を挑みたい。

以上

2014.07.14 Reported by 上岡真里江
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