J2のクラブにとって、リーグ前半戦を終えた翌週のタイミングで行なわれた天皇杯2回戦。試合後の愛媛の選手たちから聞かれた、「90分でゲームを終わらせることが出来てよかった」という言葉から、このゲームに前向きに取り組んだことが伝わってきた。だから走る、だからゲームを早めに決めたい、というシンプルな意気込み。それが岡山にはなぜか欠けていた。
岡山はGK中林洋次、最終ラインの近藤徹志、植田龍仁朗らメンバーを7人入れ替えて臨んだ。怪我から復帰して練習には合流しているが、公式戦への出場は時間が空いているという選手がメインとなった。愛媛はルーキーの江口直生、2年目のGK大西勝俉の2人が公式戦に初出場した。
ゲームの立ち上がり、岡山がシャドーの林容平、左ワイドの染矢一樹とつないで押谷祐樹へ、というシーンを作り、ラインを上げてポゼッションし、優勢を取るかに見えた。しかし攻撃のスイッチを入れる段階でミスが頻発。岡山の緩いつなぎから愛媛がボールを奪い、前に運んで危険なシーンを増やしていく。西田剛が中にいて、堀米勇輝がスピーディなオーバーラップを見せるなど、攻撃のギアの高め方も秀逸。そんな流れの中、PA手前で仕掛けた堀米が倒され、自ら得たFKを決めて先制。「自信のある位置だった。うまくタイミングが外せた」(堀米)。対して、「僕がほんのちょっとでも早く動いていれば、ファウルなしで取れたプレーだと思う」と染矢。中途半端なポジションを取り、効果的に引いてくる堀米と河原和寿に、このゲームで岡山は手を焼くこととなった。
その後も愛媛が押し込み、そのポゼッションに対して、岡山が飛び込めない、ボールを奪えない時間が続く。しかし前半も終わり近くになって、押谷、妹尾隆佑が意地を感じさせる執念でボールを奪い、久木田紳吾、島田譲、植田が絡んで染矢がシュートを放つなどじんわりと岡山が盛り返す。その勢いを後半にも持ち込んで、49分には林容平が前に運ぶ所で倒され、今度は岡山・島田譲のFKから林が頭で合わせてシュート。見事に決まって同点に追いつく。「前半の最後から、攻撃から守備の切り替えや、そこから挟み込んでボールを奪うところなどを意識して入ったので、立ち上がりはすごく良かった」と島田。
ようやく岡山らしいプレスが効き始め、後半頭から入った田中奏一の突破やクロス、島田譲の抜け出しもあったが、愛媛が失点に動じることなく対応したことで、またもや愛媛に流れが傾く。サイドを起点に落ち着いて攻撃を作り、また3人目がサポートに入る、愛媛の良さを発揮して岡山に揺さぶりをかける。そして81分。77分に交代で入ったばかりの村上巧からのパスを西田がアクセントをつけ、GK中林洋次が前に出たところで、河原が無人のゴールに向かってループ気味のシュートを流しこむ。これでゲームが決まった。島田譲はリーグ戦の第17節・松本戦(6月7日)で肉離れを起こし、戦線を離れていたが、この試合にかける気持ちは強かった。先週、影山雅永監督から「目の色が違う」と言われていたひとりだ。その島田は先週も試合後も、同じことを話していた。「攻撃から守備の切り替えや、パワーを持って奪いきるところなど、自分たちの強みをさらに強くしていくことが一番大事だと思うし、それが攻撃にもつながると思う。もう一度見直してやるところかなと思う」。
岡山の天皇杯2回戦敗退は、2010年の福岡戦以来、4年ぶり。「天皇杯は勝って次に進むことが一番大事なこと」(林容平)、「自分たちを高めるチャンスを、自分たちで失くしたことをすごく残念に思っている」(影山監督)だけに悔やまれる結果だが、その分のパワーをリーグ戦で見せてくれるという約束でもある。
以上
2014.07.14 Reported by 尾原千明
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