試合終了の長い笛が響き、勝負は決着した。だが膝に手をつく姿に勝者と敗者の別はない。互いに120分を走り切った戦いは、延長前半に決勝点を挙げた湘南が2−1で辛くも制した。
湘南、琉球ともに奪ったり奪われたりの立ち上がりだった。ポゼッションは湘南に分があったろうか、しかし「一人ひとりの距離やタイミングがずれていた」とボランチの石川俊輝が振り返ったように、パスが合わなかったり横パスをカットされたりと、相手を脅かすエリアまでボールを運べない。かたや琉球はセカンドボールを拾い、スペースを使いながら機を窺うように転じていく。彼らの得点はそんな流れの先で生まれた。35分、パスワークからセットプレーを手にすると、富所悠のフリーキックに浦島貴大がヘッドを合わせ、琉球が先制した。
0−1になったあとも湘南はやはりパスが合わず、敵陣で回してもクロスやラストパスに至らなかった。ファウルもかさむなど負の流れに呑まれていたが、後半の選手交代とともに潮目が変わる。ウェリントンが前で時間をつくれば、菊地俊介は縦に預けては追い越した。こうしてチームとしての推進力が増すなかで、52分、決定機は訪れる。ウェリントンのクロスを吉濱遼平が落とすと、受けた菊地がボックスに自ら持ち込みシュートをねじ込んだ。「自分が入ったら前のサポートやボールに関わるプレーを多くしようと考えていた」前半の戦況を見ながらイメージをあたため体現した、らしいゴールだった。
追いついた湘南はその後も攻勢に出た。一方の琉球もGK田中賢治を中心に粘り強く防ぐ。90分で決着はつかず、勝負は延長戦に委ねられた。
交代のカードを1枚残していた琉球だったが、延長前半開始間もなくGK田中が相手と交錯し、交代を余儀なくされた。他方、湘南はウェリントンを中心にゴールに迫り、さらにウェリントンのクロスから吉濱がペナルティーボックス内で仕掛けてPKを得た。この日キャプテンマークを巻いた丸山祐市がこれを沈め、湘南が逆転に成功した。リードした湘南は延長後半、パスミスやクリアミスで相手に渡す場面もあったが、GK梶川裕嗣やDF陣の踏ん張りで最後を凌ぎ、厳しい戦いを制したのだった。
「最後まで走り、戦う姿を見せてくれた」琉球の薩川了洋監督は選手たちを称え、続けた。
「あれだけやった以上、勝たせてあげたかった。でもこれが上で戦うチームとの差。この差はすごく大きいものなので、少しずつ埋められるように、また来週からリーグ戦をしっかりやっていきたい」
一方、湘南は天皇杯特有の雰囲気のなかで縦への推進力や躍動感など本来のらしさを序盤から発揮することはできなかった。曹貴裁監督はときに名前を出しながら厳しく振り返り、そして言った。
「今日の1日を通じて選手がそれぞれ反省し、矢印を自分に向けることができれば、僕も含めてですが、3回戦に進めるということも含めて次に繋がる試合だったと思います」
土俵に立ったら相手をしっかり押し込み、押し出すチームにならなければいけない――指揮官の語った「自分たち」をこれからも追求していく。ピッチに立った者、立たなかった者の別なく共有すべき一戦は、個人としてもチームとしても、きっと次への糧となる。
以上
2014.07.14 Reported by 隈元大吾
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