どの時間帯にどちらが先制点を取るのか。それが勝敗の行方を大きく左右すると思われた一戦は、開始早々の先制点を皮切りに点を取り合うシーソーゲームとなった。

千葉は関塚隆監督の初采配だが、４−２で勝った７月５日のＪ２リーグ第21節と同じスタメン＆布陣。長野は千葉対策として本来の３−４−３から３−５−２へシステムを変更し、７月６日の天皇杯１回戦のスタメンからＧＫ、ＭＦ、ＦＷを１人ずつ入れ替えた。千葉が変えなかったこと、そして長野が変えたことはそれぞれ効果を発揮した。

千葉はＪ２リーグ第21節で見せたように相手の背後を突いてサイドを起点に攻め、先制点はその形から。10分、兵働昭弘が右サイドのスペースへパスを出すと田中佑昌がそのボールに追いつき、オーバーラップしてきた右サイドバックの大岩一貴へ少し下げるパス。大岩のクロスに森本貴幸がヘディングで合わせ、Ｊ２リーグ第21節と同様に右サイドのクロスから森本の先制ゴールとなった。これで千葉が落ち着いて試合を進めるかと思った矢先の11分、長野はパスを回す千葉のセンターバックとボランチへのプレッシャーを強め、勝又が引っ掛けてこぼれたボールを拾った佐藤悠希が思い切りよくシュート。あっという間に長野が同点とした。その後は攻め合う展開で、36分、パスカットから中央でパスをつないだ千葉はケンペスの強烈なミドルシュートが田中の好守で阻まれて追加点を奪えないでいると、その３分後、長野は向慎一のＦＫを松原優吉が頭で触り、こぼれたボールを宇野沢祐次がヒールで押し込んで逆転。３年連続のジャイアントキリングの可能性を高めた。
長野の美濃部直彦監督のハーフタイムコメントに「追加点を狙いにいかないと、この試合は勝てない」とあったが、まさにその通りの展開となった。47分、勝又の強烈なロングシュートが千葉のＧＫ岡本昌弘にセーブされて長野が追加点を奪えないでいると、その４分後、千葉は中村太亮のスローインのボールを受けた大塚翔平がクロスを上げ、ケンペスがヘディングシュートを決めて同点。このゴールの直前に千葉は山口智が左足首を負傷し、一度はピッチに戻りながらも交代を余儀なくされるが、関塚監督はセンターバックの選手を入れるのではなく攻撃的ＭＦの井出遥也を入れ、田中を右サイドバックに、大岩をセンターバックにポジションチェンジして対応。攻撃力を高めて勝ちきる策をとり、69分、ケンペスのパスを受けた森本がドリブルで仕掛け、ミドルシュートを決めて勝ち越した。

ハーフタイムの指示通りに味方を追い越す動きを増やし、カウンター攻撃も仕掛けて逆転勝ちをした千葉だが、「失点はミスから。映像で確認して、反省してしっかり修正したい」（大岩）。また、前線からの守備が機能せずに中央を破られる場面もあり、大岩は「相手の３バックにもう少しプレッシャーをかけていこうという監督の指示があった。自分は相手のウイングバックにプレッシャーをかけて、途中からはもう少し前に出ようと言われたんですけど、それはできたと思う。前からの守備でもう少し相手の動きを限定できるといいと思います」と振り返った。選手が自ら修正できるようになると戦いは楽になるはずだ。

ドリブルを交えての連動したパス回しで千葉のプレスをかわす場面もあった長野だが、ラストパスやシュートの精度不足で千葉に止めを刺せなかった。攻守にキレのある動きを見せた勝又は「先制点を取られてこっちが点を取れないでズルズルいくと、絶対に勝てないと思っていた」と１−１に追いついた場面を語り、「ウチのいい時間帯に逆転できたけど、オープンな展開になった後半は相手の２トップが強力だったのが敗因。千葉はクロスなど攻撃の精度が高い印象で地力の差が出た。Ｊ３では今日のような隙を与えないで気を引き締めてやりたい」と話した。この一戦を糧に長野はＪ３優勝でのＪ２昇格を目指す。

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2014.07.14 Reported by 赤沼圭子