「豊田選手をジャン・ヨンフン(徳山大学)とマークしていたが、その間を22番の選手(池田圭)が入ってきたり、他の選手が来たりと・・・(しばらく沈黙した後に)上手かったです」
敗れた徳山大学のDF河村一宏は答えてくれた。
彼とMFジャン・ヨンフン(徳山大学)は、中村重治監督の想定した戦術を忠実にこなそうと身体を張ってプレーを試みた。
高さのあるFW豊田陽平を抑えることで、サガン鳥栖の攻撃力を弱め少ないチャンスの中から得点を狙う作戦だった。
175cmのDF河村でも、競り勝つことはできなくても185cmの豊田の自由を奪う、もしくは自由にさせないプレーはできるはず。これに186cmのジャンと連携してマークすれば、リーグ戦7得点の豊田と言えども簡単にプレーはできるはずがないと読んだに違いない。
確かにこの読みは、豊田の近くで彼ら2人がプレーしていた時にはある程度は当たっていた。しかし、豊田との距離が離れてしまうと抑えることは難しかった。
11分と41分に注意していたはずの豊田にヘディングで決められてしまった。しかも、ノーマークの状態で。
そして、河村がもう一つ指摘した「22番の選手(池田圭)が入ってきたり、他の選手が来たりと・・・」との所は、中村監督の想定外のところだったのかもしれない。
前半途中から、CBの河村とボランチでプレーしていたジャンのポジションを入れ替えた。豊田の作ったスペースに容赦なく入れ替わりに飛び込んでくる池田圭や金民友、早坂良太らを抑えるために豊田のマークを明確にし、河村がスペースを消そうとしていた。
しかし、その池田に16分に2点目を決められてしまった。
天皇杯でプロと戦うことが初めての選手に、サガン鳥栖の選手の動きや戦術を理解し対策を立てるのはあまりにも情報が少なすぎるし酷だろう。
「想定していたことはある程度できていた」と評価した中村重治監督の言葉には、天皇杯を戦う難しさやレベルの差などが含まれていた。
そして、相手の情報が少ないのはサガン鳥栖とて同じこと。同じJリーグの相手なら、試合の中で課題の修正や相手の弱点を突くことはできるだろうが、それができない時の戦い方は非常に難しくなる。
余談ではあるが、天皇杯でジャイアントキリングが生まれる理由の一つでもある。
「前に行けてしまったから・・・」試合後の岡本知剛の言葉である。
前に行けて悪い事はない。ただ、前への行き方と行ってしまった時のプレーが、サガン鳥栖のプレーらしくなかったと言っているのである。
リーグ戦では、簡単に前へ行かせてはくれない。しかし、そこに行けてしまうのだから、選手間の距離やパスタイミングが微妙にずれてシュートで終わることができなかったのである。
4得点(前半3点、後半1点)を挙げることができたサガン鳥栖のシュートは、前後半に6本ずつしか放てなかった。ここにも、やり難さを観ることができる。
「(攻撃を)やり直したいところがたくさんあった」とは、前述の言葉に続く岡本の試合評である。
徳山大学の選手たちは口々に「良い経験を積ませてもらった」と語っていた。
しかし、サガン鳥栖の選手たちも語らずとも良い経験をしたのではないだろうか。
90分間を通しての集中力の持たせ方、シュートで終われなかった時の攻撃の組み立て直し、ボールを奪われた時のカウンターに対する備え・・・、この試合からでも今後の試合のための課題と修正点は見つけることができたはず。
天皇杯3回戦、次節のリーグ戦で修正された姿を見せることこそ、徳山大学の選手たちへ伝えることができるプロフェッショナルの姿ではないだろうか。そして、彼らの目標となり得ることだろう。
CBからボランチ、後半には3バックのサイドとサガン鳥栖の攻撃の芽を摘むべく奮闘した河村の言葉を最後に紹介する。
「プロになりたい。サガン鳥栖でプレーしたい・・・」
スタンドでは感じ得ない感動とプレーがピッチの中ではあったようだ。
作戦通りにプレーできれば敗れることはない。
ミスがなければ失点することもない。
しかし、想定通りに試合を運べることはごくわずか。
起きた現象に瞬時に対応する判断とプレーを求められるのがサッカー。
観ている側からも予想ができないのがサッカー。
サッカーに想定通りはない。
以上
2014.07.14 Reported by サカクラゲン
J’s GOALニュース
一覧へ【第94回天皇杯 2回戦 鳥栖 vs 徳山大】レポート:「想定していたことはできた」と中村重治監督(徳山大学)は語った。しかし、想定以上のところにプロフェッショナルの世界があり、そこに実力差があった。(14.07.14)
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