終わってみれば清水が5-0の大勝で3回戦進出。実力通りの結果に終わったように見えるが、80分まではどちらに転ぶかまったく予断を許さない試合展開を、滋賀県代表の大学生たちが見せてくれた。

前半は、清水がボールを支配しながら攻めきれない展開が続いた。清水としては、杉山浩太をセンターバックにして、中盤を本田拓也の1ボランチ、六平光成と石毛秀樹のトップ下2枚にした新布陣のチェックをする意味で大事な試合だったが、その成果も今ひとつ。守備のときには4-1-4-1のような形になって、より前からボールを奪いにいく狙いがあったが、それが思うようにはまらず、逆に裏に蹴られて、スピードのあるびわこ成蹊大の選手に飛び出される場面が多くなった。セカンドボールに対する出足もびわこ成蹊大のほうが早く、球際でも頑張りを見せたため、清水としては思うようにボールを奪いきれない展開が続いた。
攻撃の際にも、コンパクトなブロックを作って守るびわこ成蹊大に対して、後方ではボールを回せるものの、前の5人に良い形で縦パスが入る場面は少なく、イージーなパスミスも多く、攻めのリズムが出てこない。その意味でも、清水は新布陣の効果を感じ取ることができなかった。
もちろん、そうした中でもチャンスは何度かあったが、フィニッシュの精度や切れを欠き、枠を捉えたシュートはびわこ成蹊大の2年生GK・宮崎正明が鋭い反応でセーブ。びわこ成蹊大としては狙い通り、0-0のまま後半に折り返した。

後半に入ると、清水は中盤を本田と六平の2ボランチにし、ノヴァコヴィッチをトップ下に下げて石毛をセンターフォワードにするという形に変更。それでも立ち上がりはびわこ成蹊大の勢いが勝り、後半11分には左MFの曽根田穣がゴール前に抜け出して決定機を迎えるが、ここは清水のGK・相澤貴志がプロの力を見せつけてストップ。清水が流れをつかみきれない状況が続いたが、そこで流れを変えたのはリスタートからのワンチャンスだった。

後半13分、高木俊幸の左CKからゴール前の密集で杉山浩太が競り勝ってヘディングシュートを決め、ついに清水が先制。セットプレーは、まさに地力の差が表われた部分だった。
この1点で、びわこ成蹊大の選手たちも気落ちするかと思われたが、さにあらず。外から見ても「まだいける、必ず点は取れる」という気持ちが伝わってくる生気に満ちた動きで、足を止めることなく清水ゴールに迫っていく。そして後半23分にも曽根田が再びGKと1対1のビッグチャンスを迎えたが、ここも相澤が身体を大きく見せながら間合いを詰めて阻止。びわこ成蹊大としては、チャンスを決めきれなかったことが、この試合でもっとも残念な部分だったが、もし先制点を取れていれば、あるいは1-1に追いつけていれば、清水の焦りを誘い、もっともっと試合をもつれさせることができただろう。

だが後半36分、「自分としては2ボランチのほうが前にボールを奪いに行きやすい」と語る六平が、鋭い出足から高い位置でボールを奪い、そこから一気にショートカウンター。六平が右の村田和哉（後半29分〜出場）に出し、そこからのマイナスの折り返しを大前元紀がフリーで押し込んで2点目をゲット。その2分後にも、大前のペナルティエリア内での頑張りでPKを得て、それをノヴァコヴィッチが決めて3点目。
これでびわこ成蹊大の集中力もついに途切れてしまい、自分たちのパスミスから後半43分に高木俊幸、アディショナルタイムに高木善朗（後半39分〜出場）と清水では初めての兄弟ゴールを決められ計5失点。ラスト10分の4失点を除けば、びわこ成蹊大の選手たちは自分たちの力を存分に発揮し、試合後に清水サポーターからも温かい激励を受けた。この試合で得た数々の貴重な経験は、学生リーグの後期の戦いにも必ず生かされるだろう。

一方、新布陣の手応えはつかめなかった清水だが、大きな収穫は、決めるべき人がゴールを決めたこと。再開後初の公式戦で3トップの全員が点を取り、高木善も兄のアシストでようやく清水での初ゴールをゲット。新婚ゴールを決めたがっていた村田和哉がアディショナルタイムの決定機を逃したのは残念だったが、学生相手とはいえ、攻撃陣がゴール感覚をつかむという意味では価値ある一戦となった。

以上

2014.07.13 Reported by 前島芳雄