J1リーグ18位の徳島ヴォルティスとJFL2位の鹿児島ユナイテッドFCが対戦した天皇杯2回戦は、共にリーグ戦後半に向けての現在地を推し測る重要な一戦。会場の鳴門・大塚スポーツパークポカリスエットスタジアムにしては珍しく無風であることが一層蒸し暑さを感じさせる中、試合は開始された。
立ち上がりから優勢に進めたのは徳島。MFに入ったテクニシャン花井聖が積極的にボールへ絡み、トップのドウグラスも高さと強さを前面に出してパスを呼び込んだ。しかし、ディテールへ目を向けると、課題にも挙げた「連動」というテーマに関してはやや精度を欠いていた印象は否めない。特に攻撃面ではボールを保持しながらも出し手と受け手による二人称のプレーが多く、3人目が絡んでいくコンビネーションはなかなか見られなかった。効果的な縦パスがトップの足元へ入らなかったのも原因のひとつなのかもしれない。試合を通して作り出した数回の決定的チャンスの多くも、やはり個人の力に頼るものだった。
一方、我慢する鹿児島は守備に自信を持つチーム。JFLでの失点数は全チームの中で最少。大久保毅監督が「J1チームに対しても我々の守備はある程度通用したと思っている」とコメントした通り、全員が体を張り懸命に走って徳島の攻撃を食い止めた。また、この日のシステムは4-4-2と発表されたものの、4バックに加えて左サイドハーフのキャプテン田上裕が自陣深くまで戻る実質5枚に、ボランチを3枚配置した特別な陣形。人数をかけて危険なバイタルエリアを消すことで、徳島に攻撃の起点を作らせなかった。ただ、その鹿児島も、攻撃面では自分たちの意図を思うように表現させてもらえなかったようだ。「鹿児島は、パスを入れてサポート、そして飛び出すといったグループでの動きにテンポがあった」と徳島の小林伸二監督も称えたが、そこでは逆に徳島の守備が上回った。コースを限定する前線のファーストディフェンス、そして中盤からのプレスバックで囲い込む厳しい守りは何度もインターセプトに成功。中断後のトレーニングと沖縄キャンプで培ったことがピッチで体現でき始めていることは明るい材料だろう。
そのように、両チームが守備で良いところを見せる膠着した試合の決着は、スコアレスのまま終盤にもつれ込んだ。やや足の止まり始めた鹿児島に対し、徳島は74分、左サイドハーフのアレックスを1段高い位置へ上げ、そこへは那須川将大を投入し左サイドで一層の活性化を図る。その交代はまさに効果的で、那須川の攻撃的なプレーは左サイドを攻略し続け、迎えた88分、ゴール前へ送り込まれた那須川必殺のクロスをドウグラスが打点の高いヘッドで見事ゴールに沈め待望の先制。その後のアディショナルタイムで鹿児島に決定機を作られたものの、至近距離からのシュートはGK長谷川徹が見事な反応でビッグセーブ。徳島は虎の子の1点を守り抜いた。
ただ、ある意味順当に勝利し3回戦へ進む徳島だが、冒頭にも触れた通り、来週から再開するリーグ戦に向けての課題は残したままになった。連携、特に攻撃面での連携についてはまだまだもの足りない。そうは言っても一朝一夕で成しえられるものではないだけに、地道に高める作業を繰り返すしかないだろう。守備が落ち着き始めているだけに、攻撃面の成長が待たれる現状だ。
また、敗れた鹿児島だが、チーム名の由来通り一枚岩で戦う姿でJFL上位の実力を十分に示した。技術的にも上手い選手が揃うだけに、「サイドからの幅広い攻撃」というテーマに取り組み続けることで、今後攻守共にそつのないチームへと成長していくことが期待できる。
それぞれの掲げる課題やその達成度は、今日の試合を通してチームや選手たち自身が一番感じていることに違いない。勝敗は決したが、この試合が互いにとって次につながる一戦であったことを願って止まない。
以上
2014.07.13 Reported by 松下英樹
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