天皇杯は、この2回戦からJ1・J2グラブが登場する。期せずして、ワールドカップは決勝トーナメントの熱戦が繰り広げられているが、天皇杯にはリーグ戦にはない、トーナメント戦の醍醐味がある。ワールドカップでも、予選リーグで数多くのゴールが生まれたのとは対照的に、決勝トーナメントでは、貴重な1点、そしてPK戦を含めたギリギリの攻防が繰り広げられている。J2では、なかなか勝利を挙げられていない横浜FCと富山だけに、勝点という概念がない、勝利だけが求められるこの天皇杯は、タイトルに向けた第一歩であるとともに、チームに火をつける大きな舞台となる。

横浜FCは、J2のリーグ戦では5月31日の群馬戦以来勝利がなく、ホームスタジアムでもありこの試合が行われるニッパツ三ツ沢球技場では3月22日の山形戦以来3ヶ月以上勝利がない。一方で、この4試合は引き分けが続いているものの、ボールサイドへの守備を厳しくすることで、攻撃に直結する守備ができようになっている。そして、ゴールに結びつけるという点では物足りないものの、ゴールにつながるプレーが増えていることで、選手が勝利への執念をピッチ上に見せる場面が多くなっている。その執念をこの天皇杯のピッチでも表現したい。

「天皇杯もワールドカップと同じで一発勝負で勝たなければいけないというメンタリティを持たないといけない。これからのリーグ戦も負けたら終わりというぐらいのところまできている。そういうミーティングをチームでやったし、どれだけ選手がその意識で試合に臨んでいけるかで今後が決まる」と松下裕樹が語るように、大きな意味を持った試合となる。

横浜FCがニッパツ三ツ沢球技場で天皇杯を戦うのは、第88回大会（2008年10月12日 対沖縄かりゆしFC戦）でこの時は2-1で勝利を収めている。ただ、その前に三ツ沢球技場で試合をしている第86回大会では、第3回戦（2006年10月8日）でバンディオンセ神戸に0-1で敗れている。ニッパツ三ツ沢球技場では勝てていないこともあり、今回の試合では必勝を期したい。

対する富山は、J2のリーグ戦では最下位に低迷している。だからこそ、この天皇杯そのものに賭ける気持ちは強いはず。さらに、このJ2対決に勝利することで後半戦への勢いをつけたいという気持ちは、横浜FCと同じだろう。6月28日に行われた長崎戦では、アディショナルタイムとなる90+4分に、ミスターカターレ朝日大輔の決勝ゴールで連敗を9で止めた。7月5日の栃木戦は惜しくも破れたが、長崎戦で見せた執念は天皇杯のようなトーナメント戦を勝ち上がるには不可欠なもの。この天皇杯第2回戦で、カターレ魂を見せたい。今シーズンの富山の泣き所は失点数（21試合40失点）。今回のワールドカップでも象徴的だが、トーナメントでは失点に対する最大限のケアが勝負を分ける場面もある。富山の売りである積極的な守備とリスクマネジメント、そして機を見てゴールを陥れる執念を見せていきたい。

今シーズンのJ2でのリーグ戦の最初の対戦は第3節（3/16＠富山）。この試合では、立ち上がりに勢いを持った富山が、中島翔哉と苔口卓也のコンビネーションで横浜FCを凌駕し、9分に苔口卓也のゴールで先制する。しかし追加点が取れなかったことが響き30分に野上結貴のゴールで同点に追いつく。そして、67分の秋本倫孝の退場を機に横浜FCに流れが傾き、76分のドウグラスのゴールで勝利を果たした。山口素弘監督は「ともにファイトしていいプレーをした」と試合後の記者会見で振り返ったが、両チームともに初勝利を目指したゲームだった。今回の天皇杯での激突では、それ以上の執念を期待したい。天皇杯の対戦という点では、第90回大会の第2回戦（2011年9月5日＠富山）で対戦しており、この時は2-1で横浜FCが勝利している。今回はどちらに軍配が上がるか。

横浜FCと富山が所属するJ2リーグは、丁度42試合中21試合が経過して折り返し地点。ワールドカップも決勝トーナメントが進み、この試合は決勝戦の10時間前にキックオフされる。いろいろと節目となる試合。天皇杯のトーナメント戦は、ワールドカップの決勝トーナメントで感じた熱を日本に持ち込むいい舞台だ。ぜひ、ニッパツ三ツ沢球技場に足を運んで、両チームを応援していただきたい。

以上

2014.07.12 Reported by 松尾真一郎