中断期のこの2ヶ月ほどの間、川崎Ｆサポーターも日本代表の当事者の一人として大いに楽しめたはず。昨季のJ1得点王で、今季もゴールランキング暫定2位につける大久保嘉人がサプライズ招集され、ごく短期間の間にザッケローニ監督からの信頼を得るという離れ業を見せてくれた。ブラジルワールドカップ本大会では結果的にノーゴールに終わってしまったが、クラブの公式戦が中断していた間も川崎Ｆのサポーターは、地球の反対側から送られてくる映像を楽しめたはず。Jリーグで活躍してフル代表入りする。JとJFA（公益財団法人 日本サッカー協会）とのあるべき関係がそこにあったと思う。

そんなわけで、川崎Ｆの公式戦が再開する。中断前の21連戦が濃密だっただけに、シーズン再開を待ち焦がれていたサポーターも多いと思うが、ACLに出場していた関係で順延されていた12節が7月15日に代替開催されるため、7月には5連戦となる。その連戦の第一弾として川崎Ｆは天皇杯2回戦を戦う事となる。この7月の連戦について風間八宏監督は「前半戦の（21連戦の）経験はいろんな意味で貯金になっていると思うので、みんなで思い切ってやる」と意気込みを口にする。中断期に行われた北海道合宿では、先発組、控え組の区別なく全体を一度リセットして練習しており、チーム全体のレベルは上がっている。そうした前提を踏まえ風間監督は「5連戦なので、そういう意味ではチーム全員で戦わないといけないと思います」と述べ、多少のメンバーの入れ替えを示唆している。21連戦中は練習試合も思うように組めなかった程の過密日程だったこともあり、いわゆる控え組の選手たちは試合勘が失われがちだったという事実がある。だからこそ、この天皇杯に出場する選手にとっては成長を見せるいい機会となり、また今後のリーグ戦に向けてのアピールの場ともなる。

そんな川崎Ｆが対戦するのは、神奈川県予選を勝ち上がり、1回戦で広島県代表のSRC広島を3−1で下したY.S.C.C.横浜だ。

YS横浜とは今季2度ほど練習試合を行っており、お互いにある程度手の内を理解した相手だと言える。例えばYS横浜のキャプテンである吉田明生は、SRC広島戦後「川崎とは練習試合をさせてもらっているので、その時の感覚と、今積み上げてきたものがどう違うのか。自分たちが今まで積み上げきたものをどこまで出せるのかを確認したいと思います」と述べている。

この吉田の視点である自分たちの実力を測るという考え方は、YS横浜を率いる有馬賢二監督も同じで「（天皇杯は）一つ一つ目の前の試合を戦う大会ですし、自分たちの本当の今の力を測る上では最高の相手だと思います。やるからには、どこまでやれるのかチャレンジしたいと思います」と意気込んでいた。

チャレンジャーとしてパワーを掛けて挑んでくるはずのYS横浜を迎え撃つ川崎Ｆの選手に油断はない。例えば出場が有力視される金久保順は、練習試合での対戦を踏まえ「YSCCとは練習試合をやっているので、舐めてかかることはないですし、難しい試合になると思います。学生の時に出場した天皇杯の時もそうでしたが、（ディビジョンが上のチームとの対戦では、ジャイアントキリングを狙って）普段以上の力が出ると思いますし、こっちもチャレンジして戦いたい」と気を緩ませる様子はない。

また出場すればプロデビュー戦となる可児壮隆は、その金久保に2列目からパスを出す側としてパスの種類を使い分けたいと話す。

「足元ばかりでは崩せない。状況を見て、（ショートパスとロングパスとを）使い分けたい。どっちかにとらわれずにやりたい。（金久保）順くんとの連携で、ディフェンスに引っかからないようにしつつGKにも取られないボールを出したい。そこに入ればチャンスになるので」。

川崎ユース出身選手として、等々力ではサテライトリーグやユース年代での公式戦出場経験もある可児にとって、待ち望んでいたトップチームの一員としての試合出場機会を与えてもらえるかどうか、楽しみである。そしてこの可児に限らず、チャンスをもらった選手のプレーぶりとともに、チームとして川崎Ｆが結果を出せるのかどうかにも注目したい一戦である。

以上

2014.07.11 Reported by 江藤高志