前節、札幌はアディッショナルタイムにドラマが待っていた。87分に出場した丁成勳が決勝ゴールをあげ、今季チーム初となる連勝をあげた。一方の長崎はアディッショナルタイムで涙を呑んでいる。0−0で終るかと思われたが富山のレジェンド朝日大輔にラストプレーでミドルシュートを決められ、最下位の富山に敗れてしまった。終了間際にドラマがあったことに加えて、勝点でも並ぶ両チームだが、札幌と長崎の勢いの差は明らかだ。
6分、長崎は左サイドの野田紘史のクロスを佐藤洸一がダイレクトボレーであわせ、幸先の良いスタートになるかと思われたが、前半の大きなチャンスはこれだけだった。長崎はボールを持ってもパスがほとんど繋がらず、札幌が高い位置からショートカウンターを仕掛けるという試合展開が続いた。14分、ペナルティエリア正面で奥埜博亮が不用意なドリブルを仕掛けると、3試合連続ゴール中の荒野拓馬がカット。宮澤裕樹、砂川誠とダイレクトパスを繋いで、取れば負けないと言われている先制点をあげた。その直後にも小山内貴哉のクロスを砂川がダイレクトボレー。バーをかすめた。明らかに長崎は失点によって動揺していた。
奥埜が「バラバラだった。失点をしたくないという気持ちで裏をカバーしたりとバラバラだった。行くとき行くというチーム全員でやらないとスペースが空いてしまう」と話すように、長崎は試合の中でやることが統一できていなかった。札幌は中盤にできたスペースを使い、ショートパスで長崎を翻弄。財前恵一監督に「前半はプラン通り、もう一点取れれば最高という試合だった」と言わしめる理想の試合展開を見せる。
後半、長崎はこれまで練習でもやったことのないスクランブルなシステム「3−3−3−1」で反撃を試みる。高木琢也監督は「追いつくためには選手を代えないとアクションできないというのが私の判断でした。後半はアクションを起こすぞと。それは何かというと前からプレスをかける。それで3−3−3−1を選択して、立ち上がりの15分で点を取る」ことを目指した。
点を取るために全員が積極的なプレーをすると意思統一した長崎に勢いが生まれ、前線では神崎大輔や深井正樹が前線から猛然とプレスをかけて札幌にサッカーをさせず、残り15分はロングボールで札幌を圧倒した。しかし決定的なチャンスは築くことができずにタイムアップ。2連敗で前期を折り返すこととなった。
高杉亮太はこの試合の後半を振り返り、「(変則的なシステムは)中盤に人を多くしてという意図があった。それで秘策ではないが、ああいう形を取らざるを得なかった。いけないからどうしようという結果、そういうことを監督にさせてししまった前半の内容が悔しい。そうなってやっても意味がない」と唇を噛みしめ、深井正樹は「ここ2試合に関しては自分たちのやろうとしているサッカーが全然やれていないというのが正直な気持ちです。トレーニングでいいのが作られても出せない、その辺のやるという勇気というか、そこが足りないと思います」と消極的なプレーをするチームに喝を入れた。長崎は後半戦に向けてもう一度チームを立て直す必要がありそうだ。ただし、6位福岡との勝点差は5。今季も混戦。まだ半分と捉えるかもう半分と捉えるか、だ。
一方、札幌はアウェイで無失点で勝利し、3連勝。9位まで順位を上げた。最高の形で前半戦を締めくくった。
以上
2014.07.06 Reported by 植木修平
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