22.1度と涼し目の気温にも関わらず、安英学が「湿気が凄くて体力をかなり消耗した」と振り返るように、77%という湿度の中で行われたゲームでは、いつもよりも多く給水を行う選手が多く見られたゲーム。試合終了後には、疲労困憊な様子も見られたが、前半は横浜FC、後半は水戸が主導権を握る形で、お互いに激しいプレーを出し合ったゲームだった。
「今日で折り返し。後半戦に向けて自分たちはどういう戦いをしていくかというのを今日見せよう」と山口素弘監督に送り出された横浜FCの選手は、前半からこれまでにダイナミックな攻撃を展開する。黒津勝が広く動き、空いたスペースを様々な選手が使う流動的な動きをピッチ上に見せた。この日、メンバー変更と戦術的な理由で3バックに変更した水戸の守備が安定する前に、3バックの弱点であるサイドのスペースを何度も利用して攻撃を仕掛けた。特に、左サイドでは内田智也と小野瀬康介、右サイドでは松下年宏と市村篤司のコンビネーションが冴え、何度となく決定機を作り出す。しかしこの決定機も、急遽スターティングメンバーを言い渡された笠原昂史が好セーブを連発。横浜FCの攻勢を食い止めていく。
そして、試合は前半終了間際に激しく動く。44分に、横浜FCがCKのクリアボールをドウグラスがボレーでゴールに叩き込み先制。このゴールまでの一連の流れは、前半の攻勢を象徴しているもので、ここまでできなかった「自分たちの時間にゴールを奪う」が実現したものだった。ニッパツ三ツ沢球技場の雰囲気も最高となる。しかし、この直後、このゴールの喜びに集中を欠いたのか、水戸がキックオフしたボールに対するチェックが甘くなり、サイドチェンジを許して最後は馬場賢治が冷静に南雄太の股の間を通してゴールゲット。山口監督が「お前ら調子に乗るな、浮かれるなという注意」と振り返り、松下年宏も「もったいなさ過ぎる」と悔やむが、苦労して得たリードを、得点直後に手放すミスで、前半を同点で終える。
そして、後半になると水戸は前からのプレッシングを強めて、横浜FCのパスワークの分断を図っていく。特に柱谷哲二監督の「対角線のボールを入れていこう!」というハーフタイムコメントを実践。徐々に、横浜FCから主導権を奪っていく。そして、冒頭に記載した気象条件が横浜FCにのしかかる。先発メンバーの平均年齢26.55歳の水戸に対して29.45歳の横浜FCの運動量が次第に落ちてくると、前半見せていた裏への飛び出しや流動性がなくなり、パスコースの選択肢が狭まるとともに選手間の距離感も広がり、ミスからのカウンターを受け続ける状況となる。後半にバランスの良い守備から効果的なカウンター攻撃を見せていたのは水戸の方で、最終的にネットを揺らすことはできなかったが、躍動感あふれるプレーを見せた。最後は、両チームとも交代選手にゴールを託すが、パク ソンホのヘディングも笠原がはじき出して試合終了。ともに勝点3が必要なゲームだったが、勝点1を分け合う結果となった。
横浜FCは、前半戦終了しての勝点20は大誤算。特にホームゲームで1勝しか挙げられなかったことは、今シーズンに限らず大きな課題と言えるだろう。試合後の記者会見で、山口監督はクラブ全体として現状を打開するべく気持ちがこもった覚悟のコメントを残した。試合後の選手から「この試合の前半を最低限のプレーでやらないといけない」という言葉が聞かれたように手応えをつかむ一方で、もったいない失点で勝点を失う負の面も見せた。今後、ピッチ上だけでなく、サポーターを含むクラブ全体で様々な場面に見えている「良い面」をつなげていく努力ができるかどうかが、後半戦の浮上の鍵だ。この試合の前半のサッカーは間違いなく上位進出の原動力となり得るもの。それを、クラブ全体で全力で育てていく覚悟が求められる。
対する水戸は、柱谷監督が「勝ちに等しい勝点1」と振り返ったように、本間選手の体調不良やけが人による急造の体制ながら、時間を追うごとに集中力を高めていけたことは大きな収穫だ。もともと持っているハードワークに加えて、後半にかけて攻守のやり方を冷静に修正する柔軟さも見せた。柱谷監督が狙った前半戦の五分の星は実現できなかったが、水戸にとっても後半戦のベースにできる試合だった。
この試合は、勝利という醍醐味は味わえなかったかもしれないが、勝点3に向けた姿勢は十分に見せられた試合だったのではないだろうか。少なくとも、両チームにとって後半戦の上昇の可能性を感じさせる内容だったと言える。
以上
2014.07.06 Reported by 松尾真一郎
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