プロ初得点が決勝点、それもホームスタジアムで――。最高のシチュエーションで生まれたゴール。得点者の名は山本大貴。新星の活躍で松本が絶好調の福岡に土をつけ、今季初となる逆転勝ちを飾った。

キックオフ直後から、試合は両チームともにセットプレーに得点の匂いが漂った。先手を掴んだのは４連勝中と勢いのあるアウェイの福岡。開始４分に右CKの好機を得ると、武田英二郎のキックに合わせたのは１９３センチのイ グァンソン。これは枠を外れたものの、さっそく空中戦の強さを見せる。対する松本もショートカウンターから素早く前線に運び、８分には練習中の負傷で出場が危ぶまれていた岩上祐三がロングスローで健在ぶりをアピール。その４分後にCKのチャンスを得ると、福岡にマークを絞らせない動きで得点を狙う。

一進一退で迎えた３５分、ボールを受けた酒井宣福がPA外で倒されて福岡がFKの好機を得る。キッカーは巧みな左足を持つ武田。松本が全員が戻ってゴール前に壁を築くが、武田は壁の間にいた堤俊輔にボールを出すと、そのまま堤がタイミングよく飛び出して冷静に流し込む。狙い通りのプレーで福岡が先制に成功。思わず０−１で敗れた第18節・北九州戦が頭を過ぎる。
しかし松本もそのままでは終わらない。４１分にゴール前の混戦から左サイドに流れたボールを喜山康平が中央に上げると、待ち構えていたのはサビア。ヘディングシュートは一度は神山竜一に弾かれたものの、そのこぼれ球を詰めていた犬飼智也が決めた。前半の早いうちで試合を振り出しに戻したことで、その後の展開は全く読めなくなった。

１−１の同点のまま、試合は後半へ突入。ハーフタイムに「しっかりと繋いでいこう」と発破をかけたマリヤン プシュニク監督は金森健志に替えて石津大介を投入して前線を活性化。対する反町康治監督は前線を2トップの並びに変更し、「切り替えの早さがゲームを左右する」と“松本らしいサッカー”の貫徹を指示した。両監督の言葉通り、松本は切り替え早くボールを奪い、ディフェンスラインの裏へシンプルに通す。対する福岡は完全に攻撃モードへとシフト。５９分に平井将生、さらにその８分後には坂田大輔を投入。フォーメーションもパク ゴンをアンカーに配置、城後寿を右サイドバックに下げた４−３−３に変更する。しかし、まだ試合は動かない。

状況を打破すべく反町監督がカードを切った。足の止まり始めたサビアに替えて、山本を投入。その4分後、投入されたばかりの山本が大仕事をする。岩上のロングボールに反応した船山貴之が持ち込みシュート。神山がはじいたボールを頭で押し込んだ。完全に福岡ディフェンスラインの隙を突いた船山と逆サイドのスペースにしっかり走り込んだ山本、2人の好プレーから生まれた値千金の逆転弾だった。

攻撃面の殊勲者が山本ならば、守備面の殊勲者は反町監督が言うように村山智彦だろう。残り時間、追いつくべく福岡が石津・坂田・平井を中心に攻勢に打って出るが、村山智彦がゴール前にまさに仁王立ち。好セーブ連発でゴールに施錠した松本がそのまま逃げ切り、後半戦に弾みをつける勝利を飾った。

以上

2014.07.06 Reported by 多岐太宿