愛媛が3得点で快勝。その全てのゴールに絡んだ21歳の堀米勇輝は「シーズン半分で5点取れたので(通算で)2ケタを取りたい。それを取れれば自信になると思う」とはにかんだ。愛媛はチームのJ2昇格後100勝目も達成。前半戦を締めくくるにふさわしい攻守の連動も見せ、チームの成長が感じられる試合となった。
立ち上がりからゲームを優位に運んだ愛媛。試合の流れを北九州に渡すことなく90分を戦い抜いた。立役者は堀米だ。最初の見せ場は開始早々の4分。右サイド高い位置での藤直也からのスルーパスにタイミング良く抜け出すと、堀米は北九州の守備陣に囲まれながらもボールをキープ。そのままペナルティエリアの白線をなめるようにフェイントを入れながらペナルティアーク付近までドリブルすると、DFのプレッシャーが弱くなった隙を突いて左足で矢を射るように鋭いシュートを放った。ボールは反応したGK大谷幸輝(北九州)のさらに先を行きゴール左隅へ。「自分の得意な形を出せた」という堀米のゴールで愛媛が早い時間に先制する。
愛媛はポゼッションサッカーをブレずに続けているチームのひとつ。今節でもボールホルダーがいくつかの選択肢を持ちながらポゼッションを続け、守備側からすれば取りどころの見出しにくい状態だった。北九州が試合前から警戒していた『3人目の動き出し』も、セカンドボールに対する反応でも、愛媛は高いパフォーマンスを維持。北九州は原一樹がロングスローを入れてチャンスを作る場面はいくつかあったが、流れを引き込むまでには至らなかった。
後半に入っても得点を重ねたのは愛媛。52分、右サイドを突いた堀米のクロスに河原和寿がタイミング良く右足を合わせてネットを揺らすと、86分にもカウンターから途中出場の原川力が中央突破。強烈なシュートのこぼれ球をここでも堀米が拾うと、落ち着いて左足で流し込み試合を決定づけた。リードを徐々に広げながらも守備陣も集中は途切れず、想定外であっただろう原のロングスローにも冷静に対応。危ない場面をほとんど作られることなく試合終了のホイッスルを迎えた。「うまく守備側もゼロで抑えたのは今後に繋がっていくんじゃないか」。石丸清隆監督も確かな手応えを感じていた。
ポゼッションにも堅い守備にも発揮された愛媛らしさ。引っ張ったのは1アシスト2ゴールの若きエース、堀米だった。特徴を出したゲームでチームとしてのJ2通算100勝目を挙げ、指揮官は「次の200勝にも早くたどりつけるように、できれば勝ちが(負け数よりも)多いように持っていけるようにしていきたいなと思います」と笑顔を浮かべた。九州勢3連戦ではあわせて9得点。チームは自信を持って次戦の天皇杯に臨むことになる。
北九州は3点差を付けられての大敗。集中がより求められる立ち上がりとゲーム最終盤で失点したことを含め、チームの現状に警鐘を鳴らすには十分な、理由のある3失点だった。「結局は1点目だった」と話すのは星原健太。「ああいうシュートを余裕を持って打たれたのは戦術とかではなく1対1のところ」と省み、個の部分での意識向上を促す。それはDFが掴まえきれずに自由にプレーされた2失点目にも言えることだろう。また3失点目に関しては前のめりになったがゆえの失点だと片付けられなくもないが、人数は足りており防ぐ手だてはあった。当たり前のことを繰り返すことになるが、集中するべきところはしっかりと集中しなくては同じようにやられてしまうし、マークの受け渡しや前線からのチェイシング、奪いどころの意識統一などもう一度やらなければならないことをチームとして確認したい。
攻撃面でも細かく見ていけばいいプレーも、アグレッシブな部分も見えてくるが、全体として何を繰り出していくかが見えてこないゲームだった。セカンドボールを拾えなかったり、パスコースがなく最終ラインやGKまでボールを戻したり。そういうもたつきの中で相手の守備が堅く構築され、ますますゴールが遠のいてしまった。
愛媛とは対照的に「北九州らしさ」を欠いたこのゲーム。早い時間の失点でリズムを崩したという面は多分にあるだろう。そういうときにピッチを俯瞰するような視野の広さを11人が持つことができれば、再び落ち着いてゲームを始められる。時間を長く、ピッチを広く使うしたたかさを付けていくことも時に必要だ。「ホームで大差で負けてしまいサポーターに申し訳ない。ここで引きずらないようにやっていきたい」。キャプテンの前田和哉は引き締めた表情を緩めることなく、強い眼差しを向けた。前田にも、星原にも、このイレブンの誰にも白い歯を見せる選手はいなかった。滲む悔しさは次への原動力になる。シーズンは半分が終わったばかり。「もっと」や「まだまだ」の言葉を向上心に変えて、後半戦も戦い続けたい。
以上
2014.07.06 Reported by 上田真之介
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