スコアも、内容も今季ワースト。前節愛媛戦、熊本は後半キックオフ直後に昨シーズン同じユニフォームを着てプレーした堀米勇輝に先制点を許すと、そこからあっという間に失点を重ね、19節京都戦に続く4失点で今季2度目の連敗を喫した。
「システムのミスマッチから起きることが起きていて、それでも前半は、試合中の処置としてラインを下げることで対応できていた。後半はそこを修正しようと話をしていたのに、うまく対応できなかった」と、前節が今季初先発となった藤本主税。ボランチの橋本拳人も「ゲームを通して、思い通りのプレッシャーをかけられなかった」と振り返る。
熊本に帰って来た選手達は、30日の練習前にミーティングを行って守備について意見を出し合ったという。今週のトレーニングで小野剛監督が強調していたのも、ボールに対する寄せをもっと厳しくするということだった。
「京都戦を受けて、失点したことをあまり意識させないようにしたけれど、ゴールを守るという意識が強くなってしまった。もちろん、待ち構えるディフェンスが得意なチームもありますが、我々は前からプレッシャーをかけていく、それがいい方に出た時は、いいサッカーができている。選手達が伸び伸びと、生き生きとしたサッカーをするには、リスクを負ってもボールに対していくこと、そうやって強気のプレーを呼び起こさないといけない」。
新しく何か別の手を打つのではなく、今までやってきたことをさらに徹底する。それがこの連敗を受けて出した熊本の答えだ。
再び原点に帰って臨む21節、リーグ戦前半の最後の試合に迎えるのは、2008年にともにJ2に加わった岐阜。過去の戦績では熊本がやや優位ではあるものの、今シーズンは「今までとはまったく違うチームになった」(小野監督)。現在18位だが、その顔ぶれを見れば今の順位が力通りのものではないことは明らかだろう。前節も札幌に敗れはしたが、0−2の状態から益山司、遠藤純輝という若い2人が得点を挙げて一時は追いつき、最後の最後まで札幌を追い込んでいる。代表経験を持つGK川口能活、DF三都主アレサンドロはもとより、木谷公亮や難波宏明など、鳥栖や横浜FCといった過去の所属チームでも熊本を苦しめた選手、また難波と並んでここまで7得点を挙げているナザリトら、キャラクターの際立つ選手も揃う。
前節の札幌戦で途中交代した高地系治はじめ、若干ケガ人が出ていること、またラモス瑠偉監督の前節の試合後のコメント等を汲み取ると、今節は若い選手を起用してくることも考えられる。しかし前節だけでなく19節の長崎戦でも試合中にシステムを変えて見事に流れを引き戻しており、たとえ先発に変化があったとしてもスムーズに順応できると見た方がいいだろう。4戦勝ちなしという状況も、岐阜にとってはモチベーションを高める小さくない要素の1つになる。
ただ、小野監督は言う。
「相手のシステムがどうであろうと、我々のコンセプト、原則に従えば、それは関係ないと思っています」。
ポイントは2つ。まずは前述した通り、ボールに対してしっかりとプレッシャーをかけること。この数試合の熊本の失点の仕方もふまえ、岐阜は早い段階でクロスを入れてくる可能性がある。ここを自由にさせるとバイタルエリアでのセカンドボール争いになるが、そうなると京都戦で大黒将志に決められたような予測のつかないリフレクションも起こりうる。できるだけ、その前のポイントで起点を潰すべく、「今までよりも出足を早くして」(篠原弘次郎)間合いを詰めたい。その際、気をつけなければいけないのが、全体で意識とタイミングを共有すること。練習でも小野監督が何度も口にしていたが、奪いどころを逃さず、取りに行ったなら取りきらなくてはならない。サイドに限らず、中央の縦パスの出どころに対しても、ただコースを切るだけでなくしっかり寄せること、また仮にそこで取りきれなかった場合にも、ポジションを修正しながらしつこく2度追い、3度追いすることが求められる。
そして2つめは、そうした連動性を持たせるためにピッチ上でのコミュニケーションを密に行うことだ。「プレッシャーがハマってないのに行ってもいなされるし、ビビって下がってしまったらハメに行けなくなる。早めに指示し合って、共通意識をもってやらないといけない」と篠原は言う。特に前節に関しては「近いポジションの距離感とか声で解決できることもあった」と矢野大輔も話しているように、運動量が落ちてくる後半のきつい時間帯を乗り切るうえでも、細かく声をかけ合ってコレクティブな守備を表現したい。
ここまで20節を終えての数字は5勝9分6敗。戦績を五分に戻して後半に臨むためにも、この一戦は大きな節目となる。
以上
2014.07.04 Reported by 井芹貴志
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