岡山の今週のトレーニングスタートは7月1日(火)。午前と午後の2部があり、午後のトレーニングが始まる前、夏模様の練習用コートに影山雅永監督の声が響いた。「サッカーでも人生でも本当に面白いところは、自分で決めてやるところ。リスクもあるが、やりきるところに醍醐味がある」。切れ切れに聞こえてくる話をメモしただけだから、聞き落とした部分はあるかもしれないが、話の締めくくりはこうだった。「今週末の讃岐戦、絶対勝つから」。
岡山の強い気合いの入り方にはいくつもの理由がある。まず今年、讃岐がJ2に加入し、海を挟んで向かい合う香川県と岡山県のJリーグチームの対戦が叶ったこと。それを両県を結ぶ橋にちなんで、「瀬戸大橋ダービー」と名付けたこと。初戦である今節は、岡山のホームで「1万人で讃岐を迎え撃て!」をキャッチフレーズに様々なイベント等を企画していること。さらにチームとしてもっとも気になるのは、讃岐とは一昨年まで何度も練習試合を行なってきたが、「いい試合が出来たという試合がまったくなく、やられた試合しか覚えてない」(田所諒)こと。
讃岐の北野誠監督は、チームを率いて今年5年目。影山監督と同じ年数、ひとつのチームのマネージメントに専心してきた。同い年の2人は、JFAのA級ライセンスを取る時も一緒だったそうだ。讃岐の基本フォーメーションは4-4-2で、対戦相手やチーム状況に合わせて3-4-3も採用する。トップには帝京高校の後輩で、北野監督が指揮を執っていた09年熊本でチームトップスコアラーだった木島良輔のほか、愛媛FCから完全移籍となった高橋泰、ポストプレーでタメを作れる西野泰正、元日本代表の我那覇和樹が並ぶ。木島は怪我のため第17節・札幌戦が今季初出場となったが、以降は得点アップに貢献すべく連続出場中だ。力のあるFWの選手にお膳立てをするのが、香川県出身で栃木、岐阜でプレーしていた高木和正や、長崎から昨年加入した山本翔平らJリーグ経験豊富な選手。また岡山の田所諒とセレッソ大阪の下部組織で、妹尾隆佑と大阪学院大学でともにプレーした岡村和哉は、ボランチや右SHのポジションを任され、初勝利(第15節・富山戦)の決勝点を挙げるなど勝負強さを見せている。
「一昨年、(松本で)一緒にやった木島さんは怖い選手。しっかり押さえたい」と話すのは、岡山の最終ライン右を守る久木田紳吾。前節・京都戦でJ2得点ランキング首位を走る大黒将志をほぼ押さえていた久木田は、持ち前の機動力を生かした守備がいい。早めのポジショニングを意識し、DFというポジションでも成長したいと話す。また前節、29分に先制点を決めた最終ライン左の田所は、「フリーの三村真に出して、いい形で上がって行けた。シュートしか考えてなかった。こういうことをしていかないと、自分がいる意味はない」と話す。この時間帯にさらりと上がって行く最終ラインの選手は嫌な存在だろう。
6月の岡山は引き分けた試合が多く、勝ちきれなかった、とも捉えられるが、ボランチを起点とした攻撃やワイドの突破から始まる攻撃、さらに田所の上がりなどのオプションと、様々な攻撃の形を発揮出来ている。前節55分に投入された久保裕一は、「一発で裏に抜けられればチャンスになるので、そこは狙っている」とゴールまであと一歩の雰囲気がある。また86分に交代出場した染矢一樹は、練習でもやっていないシャドーで、「とりあえずDF全部追ってやろうと思って」追い込み、カウンターのチャンスも引き寄せた。さらに押谷祐樹など、もう爆発を待つだけという臨場感があり、このチームのどこを起因に、どこから得点が生まれるか、と一瞬たりとも見逃せない展開さえ期待できる。
経験豊富な讃岐のFW陣を押さえ、今回は引き分けないためにも、「個人的にはがちんと、ボールを奪うところを激しく。僕らが先頭になって潰したり、たくさんボールを受けたり、余裕と自信を見せることで、チーム内にも余裕が生まれてくるのかなと思う」と千明聖典。「瀬戸大橋ダービー」という歴史のスタートにふさわしい好ゲームが期待される。
以上
2014.07.04 Reported by 尾原千明
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