６月最後の週末に開催されるこの第20節。北海道札幌市にある札幌厚別公園競技場では現在勝点24で14位につける札幌が、同22で16位の岐阜をホームで迎え撃つ。昨シーズンの対戦成績は札幌の２勝というカードだ。

札幌は前節、ホームで富山と対戦して２−１のスコアで勝利。前半に荒野拓馬と砂川誠の得点で２点のリードを得ながらも、後半は相手にほぼ一方的に攻め込まれる展開に。PKで１点差に詰め寄られ、いつ同点にされても不思議ではない、そんな状況に追い込まれてしまったが、最後は守備的な布陣にチェンジして何とか逃げ切りに成功している。

最下位の相手に対しての辛勝。課題を見つけようと思えばいくらでも見つけることはできるのだろうが、選手たちは満足こそしていないながらも、一定の手応えを得ている様子でもある。「あの勝利を良い成功体験にしていきたい」とは都倉賢の弁である。

考えてみればその前節は横浜FCと対戦し、同じように２−１で試合終盤までリードを保ちながらも、「チームとしての意思統一ができていなかった」（宮澤裕樹）と、試合運びが不明瞭なままに時計を進めてしまい、最後の最後で同点ゴールを蹴り込まれてしまった。それがこの試合ではリードして迎えた終盤に河合竜二をバイタルエリアに置く布陣を敷き、逃げ切りに成功。「あのシステムにしたことで、やることがハッキリした」と小山内貴哉が言うように、指揮官の采配がチームのベクトルを整えた。今後の試合に向けてもいい成功例になったと評せるはずだ。この勝利によってプレーオフ進出圏内の６位との勝点差も６へと縮め、雰囲気も一気に向上したように感じる。

一方、敵地に乗り込む岐阜の前節はホームで長崎と対戦して１−１のドロー。３分にPKのこぼれを三都主アレサンドロが押し込んで先制する幸先の良い立ち上がりだったものの、前半中頃に同点とされると、その後は相手にペースを握られる時間帯がありながらも一進一退の攻防を演じ、最終的には勝点１を分け合っている。開始早々に得点を奪っただけにドローに終わった部分は非常に悔しくはあるだろうが、連敗を２で止め、さらに前節はホームで磐田に０−４で敗れていたことを考えると、流れが悪くなりそうなタイミングで得た勝点１の意味は決して小さくないはずである。

「練習していなかったのに、よく対応してくれた」
ホームで引き分けてしまった試合ではあったが、ラモス瑠偉監督はそうやって選手を讃えている。その理由としては長崎の３−４−３のシステムに対して前半は「（相手の）素早い展開を受けていた」（ラモス監督）が、そこで急遽、４バックから３バックへと変更して流れを変えてみせたのである。監督のひらめきに対し、選手たちが見事に応えた格好である。

そうした臨機応変な指揮官の要求にチームが応えられるのは、やはり要所に経験豊富な選手がいるからに他ならないはず。GK川口能活、三都主といったワールドカップ出場経験のある選手だけでなく、「彼はサッカーをよく知っている」と指揮官が評する太田圭輔や、高地系治といった百戦錬磨とも言える選手が要所にいるのが岐阜の強みだろう。自分達でゲームをコントロールできるのはもちろん、指揮官の意図も迅速かつ的確に汲み取れる選手がピッチ上に何人もいる。

ここまでなかなか思うように白星を重ねられずにいる現状ではあるが、そうしたベテランたちの存在が着実にチームの土台を固めていることは間違いない。そこに若手選手らの躍動感が加われば、夏場から一気に勢いを増していきそうな気配が十分に漂っているように感じる。

さて、そんなチーム同士の対戦であるが、前述したように札幌は６位との勝点差が６。岐阜は８。ここで勝点３を積めば、プレーオフ進出圏であるとはいえ、「Ｊ１」という部分にかなり現実的に迫ることができる場面。ここで勝点を取れるかどうかで、今後への勢いも大きく変わってくるだろうから、両チームともに何としても勝点３を奪いにいくはず。その意味では、互いに攻撃的なサッカーを目指すチームではありながらも、ひとまずは相手の出方をうかがいながら現実的な戦いを採り入れてくると予見していい。互いに探り合いながら、どこかのタイミングでどちらかがテンポアップする。そうした、互いの隙を探り合う、ジリジリとした緊張感溢れる試合が展開されることだろう。

以上

2014.06.27 Reported by 斉藤宏則