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【J2:第19節 北九州 vs 千葉】レポート:少ないチャンスをモノにした北九州。井上の今季初ゴールで2連勝。千葉は主導権握るも崩しきれず。(14.06.22)

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「強い相手」に勝つためのサッカーに徹した北九州が、ケンペスを擁し個の力や経験値で上回る千葉を下し4位をキープした。試合を決めるゴールを挙げたのは6月12日に第一子が誕生したばかりの井上翔太。ゆりかごダンスの輪に包まれたパパは「子どものためにも点を取ることができた」と胸を張った。

相手にボールを持たれることは覚悟の上で戦略的に引いて守ることを選んだ北九州。千葉の時間が長く続こうともフィニッシュまでは持ち込ませないことに重点を置いた。圧倒的な個の力を持つケンペスに対してセンターバックの渡邉将基が徹底的にマーク。一方で前田和哉やボランチの八角剛史はケンペスに引きつけられることで生まれるスペースをピッチ上で修正。ケンペスに近い位置でプレーしていた大塚翔平の自由度も下げることにも成功した。

千葉は前半だけで9本ものシュートを放つが、こうした組織的なディフェンスを前に枠を捉えきれなかった。クロスをケンペスが収めるという似たような攻撃パターンが続いたことで、押し込んでいるにもかかわらず北九州の守備陣に余裕を持たせてしまった。「サイドに人数を掛けすぎて中にケンペス1枚だけという場面はバランスが悪かった」と話す兵働昭弘(千葉)の言葉が的を射る。20分にコーナーキックを起点としたクロスから一度はゴールネットを揺らすも、ケンペスと渡邉の競り合いにファールがあって幻のゴールになるなど、運も引き寄せきれなかった。

後半に入って次第にリズムを掴んでいったのは北九州。「千葉は後半に運動量が落ち、少し動きが落ちてくるという特徴があったので、なんとかそこまで持っていければ勝点3は取れるんじゃないか」(柱谷幸一監督)という読みが冴え、残り20分頃から相次いで前線に渡大生と大島秀夫を投入。足の止まりかけた千葉は両選手を捉えきれなくなった。
試合を決したゴールは75分。投入されたばかりの大島のクロスをボックスの中から渡がヘディングシュート。これは右のポストを叩くが、「跳ね返ってくるなら自分のところに来ると思っていた」と振り返る井上が冷静にこぼれ球を収めて貴重な先制点を奪った。北九州は80分にも渡がカウンターから抜け出してGKと1対1の場面を作り出したり、大島がボールをしっかりと保持して時間を作るなど最終盤で巧みにゲームを運び、勝点3を手にした。

守備から入り、少ないチャンスを得点に繋げる。プラン通りに運んだゲームだった。
とはいえ90分のうち70分ほどは我慢の時間が続いたことは事実。何らかのタイミングで千葉が先制していたならば展開は大きく異なっただろう。サッカーの魅力を高めるという観点からも、贅沢を言えばもう少し早く攻撃のスイッチを入れたり、フィニッシュまで行けなくともボールを保持する時間を増やしたりする作業も行いたい。戻る時間も長くなった池元友樹は「結果的に勝てたことは良かったが、チームが良くなるためにはもっと変えていかなければいけないこと、積み重ねなければならないことは、まだまだたくさんあるのかなと思う」と振り返る。勝ち続けるために、もっと上を目指すために、北九州の選手たちは白星にも浮かれず足元を見つめている。次節の対戦相手は首位・湘南。試合のたびに出てくる自省と確かな自信を胸に、金星を目指す。

千葉は引いた相手を崩すアイデアを欠き、ポゼッションで圧倒的に上回りながらあと一歩、あと二歩くらいの押し込みが足りなかった。鈴木淳監督は「厳しいところになかなかボールを入れることができず、入ってもそこで振り向いたりシュートに持って行くところまではいけなかった」と話し、選手たちも一様に崩しの質の部分を言及する。主導権を握っていてもアイデアと精度を欠けば勝ち星は呼び込めず、今日のように流れを渡してしまうこともある。雨と暑さも重なる時期となるだけにそういった部分を突き詰めていきたい。またラフプレーも目立ち、相手に20本のフリーキックを与えたことも課題点と言えるだろう。千葉も試合で出てくるひとつひとつの課題から修正を重ね、上位への足がかりとしていきたい。

時折強い雨が降り注ぐ中で行われた「イエローダービー」。荒天のため入場者数も1462人と芳しくはなかったが、スタジアムを訪れた人はよりリアルに、ボールポゼッションと結果が必ずしもリンクしないサッカーの不思議を感じられたことだろう。それはいままさに繰り広げられているワールドカップの試合にも通じるものだ。J2のゲームは中断することなく続く。サッカーの魅力、醍醐味、そういったものを肌で感じに、ぜひ次のゲームも身近なスタジアムに足を運んで欲しいと願う。

以上

2014.06.22 Reported by 上田真之介
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